
社会福祉法人愛隣会 養護老人ホーム白寿荘
主任支援員 有磯 知夏さん
白寿荘と喫茶「やすらぎ」
(社福)愛隣会が運営する白寿荘は、生活環境の問題や経済上の理由などにより、家庭で養護を受けることが困難となった65 歳以上の方を対象とした、老人福祉法に基づく養護老人ホームです。白寿荘では以前から“喫茶やすらぎ”(以下、カフェ)と銘打って、施設の利用者のみを対象にケーキやコーヒーを販売する喫茶コーナーを、利用者主体の自治会により運営していました。コロナ禍を経て利用者から希望の声があがっていたこともあり、2025 年7月から再開しています。
せっかくならと、利用者のみを対象とするのではなく地域の方も参加できるようカフェを地域にひらくことにしました。さらに、利用者が季節を感じられ、かつさまざまな年代の方が交流できる場づくりをねらいとして、東京都地域公益活動推進協議会における「地域課題に取り組むための助成事業」の助成金も活用しています。地域の方が外に出る機会になるし、何より地域に出ていく利用者のこと、そして白寿荘のことを知ってもらうきっかけにもなってもらえたらという思いがあります。

自分の“得意” が喫茶をつくる
カフェは利用者ボランティアと地域のボランティアが一緒に運営しています。最初はお互いぎこちなさがありましたが、回数を重ねるにつれて利用者ボランティアから地域のボランティアに声をかけたり、仕事をうまく分担したり、お互い協力し合ういい関係ができているのかなと思っています。私たち職員は全体を見つつ、利用者ボランティアの性格や特性によってそれぞれにお願いすることを決めています。視野が広くて人と接するのが好きな方にはウェイトレスを、一つのことに集中して取り組める方には洗い場の担当をという感じですかね。例えば今回コーヒーを淹れている方は90 歳なのですが、利用者や地域の方とお話するのが好きだし、てきぱき動き回るのが好きな方なんです。もちろん、本人の意向を聞いたうえで職員としてより適切な役割分担を考えており、それぞれの得意を活かすことができているのではと思います。
今回のカフェでは、初めて区内の婦人会で編み物教室をされている方々に来ていただき、作品を販売していただきました。利用者にはこれまでも編み物教室があることをお知らせしていたのですが、活動者と話したり作品を手に取ることで「こういうことをやっているんだ、一緒にできるんだ」と思えたりしたのではないでしょうか。活動者のみなさん自身も高齢化で集まりに行けなかったり作品を披露する場がなかったりする。今回、カフェで販売したり利用者と話したりすることで、活動者のみなさんも元気になるというか。お互いがいい刺激を与える関係が自然発生していましたね。コミュニケーションをとるだけで、生きがいというか、その人らしさが十分にじみ出るなと思いました。

白寿荘は比較的自立した生活を送る方もいれば、ADL が低下した方もいらっしゃいます。普段から助け合って暮らしているので、相手を思いやる気持ちがカフェでも表れていて、利用者だけではなく地域の方にもさりげなく手を差し伸べている姿を見ます。それを、職員から「こんなふうにしてください」とお願いするのではなく、自然とできているのがいいなと思っています。
Pick up
- 以前入所されていた90 歳の男性が、自身の得意を活かして“似顔絵コーナー” を展開。地域にひらかれた場であるからこそ、施設を離れてもゆるやかにつながりながら、その人らしく過ごすきっかけが生まれます。

何よりも、暮らしの場であること
先ほど話したとおり、普段から利用者同士で助け合う関係性があちこちで見られます。そうした行動や気持ちに対して、白寿荘を支える仲間として一つ一つに感謝を伝えることを大切にしています。とはいえ、他の利用者の車椅子を押してしまったりとか善意が危険につながったりすることもあるので、一定のところで介入して線引きをするように気を付けています。利用者と職員がお互い助け合える対等な関係である一方で、職員としての責任は忘れないようにしなければなりません。サービスマナーを当然に大切にしたうえで、職員会議や多職種会議で日々の自分の行動を省みる機会をつくるようにしています。
私はあまり“施設だ” とは思っていなくて、利用者の生活の場、利用者がここで暮らしているだけだ、と捉えています。なので、施設ではあるけど自分の家のように思ってほしいし、入所前にやっていたこと・できていたことは変わらず続けられるよう応援したい。できない部分は職員がサポートするけど、できる部分は変わらずやっていただくということが大切だと思います。利用者と相談しながら必要な支援をしていく、同じ高齢者施設でも特別養護老人ホームと比べると自立支援の側面がより強いのかなと思います。
一人ひとりを受け止めてもらう地域をめざして
何においても白寿荘を知ってもらうことが大切です。利用者は外に出かけるときもあって、時にはお店に迷惑をかけることもあるんです。それでも「外に出さない」ではなく「こういう方がいるから、こういう対応をしてほしい」と地域に伝えていく。利用者が外に出ても大丈夫なように、周りに受け止めてもらえたらと思います。本人にもさまざまな人とつながってほしいのでそのための環境を整えていくし、それが本人の気持ちを大切にすることにもなる。併せて、白寿荘の課題や地域の課題を地域のみなさんと一緒に考えられる環境づくりもすすめる。こんなふうに、個別支援と地域づくりが循環していくといいのかな、と思います。
KEY ESSENCE by interviewer
- 1. その人の「得意」を「やりがい」につなげる
2. 対等な立場と、職員としての立場のバランスをとる
3. 地域に受け止めてもらえる環境をつくる








