
社会福祉法人足立区社会福祉協議会地域福祉部
あいあいサービスセンター課長 髙橋 祐治さん
山本 あずささん
成田 晃子さん
日常生活の延長にある「あいあいサポート」
足立区社協が運営するあいあいサービスセンターでは、有償の家事支援事業「あいあいサポート」を実施しています。日常生活に支障のある65歳以上の方、障がいのある方、一時的に怪我や病気をされている方を対象に、掃除や買い物などの日常生活における困りごとを、地域住民同士が支え合う活動です。この活動を支えているのは、地域で活動する協力会員のみなさん(活動者のことを指す)と、その中から経験や人柄をもとに推薦された「世話人」の存在です。世話人は、ご自身も活動経験を重ねてきた立場から、地域の中での見守りや声かけ、お手伝いを通して、“つながり” と “安心” を広げています。2024 年度の延べ利用件数4,043件の多くは高齢者からの依頼です。足立区の高齢者人口の状況(高齢化率24.03%/2025年4月1日時点)を考えると今後さらにニーズが高まることが予測され、事業を継続していくためには、担い手をどう確保していくかが大きな課題でした。そこで、ひきこもりがちな方や障害のある方も含め、多様な方が地域と関わりながら参加できる事業へ変えていきたいと考えるようになりました。
その人の特性を踏まえながら活動を探す
ひきこもり経験のある 20 代の男性には、依頼者の洗濯物をコインランドリーで洗濯し、畳んで届けるという活動をお願いしました。人と接することがあまり得意ではないと伺っていたため、自分のペースで、一人ですすめられる活動内容が合うのではないかと職員間で話し合いました。本人がどれだけ安心して活動できるかを大切にするため、初回の活動だったこともあり職員数名が同行しました。顔なじみの職員が一緒に行くことで不安が和らぎ、また活動中に困ったことがあった場合も、すぐに相談できる体制が心理的な安心感につながったのではないでしょうか。その後の活動にはまだつながっていませんが、達成感を得ている表情が印象的でした(後述する清掃サンタのようなイベントには参加しており、関係性が続いています)。
この例に限らず気を付けているのは、活動に参加するかどうかの最終的な判断は本人に委ねるということ。「無理しなくていい」「嫌だったら嫌って言っていい」「できるときにできることをしよう」と伝えるようにしています。そうした関係性のもと活動するなかで、表情が柔らかくなったり、言葉数が増えたりといった変化が見られることもあります。私たちは、そうした姿を通して、「地域で人とつながりながら本人が安心していられる居場所が少しずつ増えていくのではないか」と感じています。
柔らかな頭で地域とつながるきっかけを創る
活動の依頼が入ると、「今回はこの人にお願いしようか」と活動者の調整を行いますが、振り返ると “違う人にお願いすると時間がかかるかな” とか “この人は依頼内容に応じられないかな” など、職員側が無意識に判断してしまっていたことの多さに気づかされました。地域住民同士の支え合い活動であり、多くの方に関わってもらいたいという事業の原点に立ち返り、実例を通して自分たちの意識を少しずつ変えていきました。さらに、支援を受ける立場にあった方も、裁縫が得意、話し相手ならできるといったそれぞれの強みを活かし、活動者として関われるという視点も職員間で大切にしています。この冬は、「清掃サンタ」と題して、サンタの衣装を着て公園清掃を行いました。あいあいサポート事業に関心はあるものの、一人での活動に不安がある方に向けて、実際に体験してもらうことで広く事業を知ってもらうことが目的です。参加にあたっては、職員から直接声をかけることで参加のハードルが下がり、終了後には、「自分でもできると感じた」という声も聞かれました。

“この事業はこういうものだ” と思うと、せっかく事業に関心のある方が持つ力を発揮してもらえる機会を逃してしまうことになります。今後も、こうしたイベントを通して、あいあいサポート事業の認知度を高めていくとともに、参加の間口を広げていきたいと考えています。2025 年度に足立区社協は70周年を迎えました。“支援する側、受ける側の垣根を越えていく” といったキーワードを掲げ、その具現化に向けた実践をすすめることができたと思っています。
地域のあたたかさをつくるために
ひきこもりがちな方や障害のある方に活動してもらう取組みは、1 人、2人と、少しずつ積み重ねていくことで、自然と受け入れ側の地域の包容力も広がってくると思います。どんな人にも強みはあります。あとはそれを受け入れる地域の寛容性を整えていくことが共生社会の一歩だと思っています。「やってみたい」という気持ちがあれば、誰でも関われる地域になってほしいと考えています。そのため、まず職員が同じ方向を向いて取り組むことが重要です。毎月の職員間の会議では、単純に依頼者の困りごとを解決するだけでなく、依頼者自身のいきがいや尊厳の回復といった視点(*)にも重きをおいて話し合いを行っています。
こうした視点を持った関わりは依頼者だけではなく活動者に対しても大切で、その姿勢が徐々に相手の心を開き、気持ちが前を向く。それが結果として社会や人とのつながりが広がっていく。そんな考えを職員全員で共有し、特に最初の関わりや距離感を大切に取り組んでいます。あいあいサポート事業での活動を通して課題を抱えている人との接点を持ち、誰もが「誰かの役に立てた」と思えることと同時に、依頼者も誰かの活躍の場をつくれたと思えるような関係性が広がることを願っています。
*ビジネスモデルキャンバスを活用し整理されたそうです。
KEY ESSENCE by interviewer
- 1. 職員の固定観念からの脱却
- 2. 多様な人を受け入れる地域の力
- 3. 社会参加への多様な入口づくり









