(3)4つの圏域と地域住民の居場所活動への支援
区内は、「富坂地区」「大塚地区」「本富士地区」「駒込地区」という4つの日常生活圏域があり、民生・児童委員の活動圏域等とも重なりながら、基本的に圏域ごとに地域づくりを進めています。圏域ごとに特徴があり、文京区は特に坂の多い地形のため、同じ圏域内でも坂の上と下でそれぞれ別のコミュニティが形成されている場合があります。また、文京区は教育に関心の高い家庭が多く、学習の機会が多い地域である一方、就学援助を受けている世帯など経済的に厳しい状況にある家庭もあります。そのため、子ども食堂などの取組を進める際には、「コミュニティ食堂」という表現を用いて対象を限定せずにオープンにPRする一方、支援が必要な世帯が把握されている場合には対象者を絞って活動するなど、状況に応じた運営を行っています。また、困りごとがあっても自らSOSを発信しにくい方もいるため、地域住民による多機能な居場所に寄せられる情報の中に、CSWが支援に入るべき世帯の情報が含まれていないか、常にアンテナを高く張りながら地域づくりに取り組んでいます。
常設拠点の運営については、4つの地区に2拠点ずつ設置することを目指していますが、地域特性はそれぞれ異なります。町会を中心に活動している拠点もあれば、地域住民に加えて企業やNPOが関わる拠点もあり、活動方法や運営形態はさまざまです。いずれの拠点も、地域ごとに集まる情報やネットワークを生かしながら展開しています。
(4)地域で求められる居場所へのイメージを共有して可能性を広げる
多機能な居場所ができるようなったのは、空き家や空きスペースを活用して先駆的に居場所づくりを行っていた住民活動がきっかけでした。文京区は、いわゆる地区社協による活動がなく、地域住民が自主的に行っていた活動に対して、社協としてどのように関わっていくかを、CSWの配置を進める中で検討していった経緯があります。そうした地域の拠点を広げていきたいという思いがある一方、拠点を維持していくためには家賃や光熱水費などの課題がありました。これに対し、区から国の地域力強化推進事業の活用を提案されたことをきっかけに、各地区に常設の拠点を整備していく流れが生まれました。
現在8か所に設置されている、相談ができ多世代が交流できる多機能な常設の居場所を「つどい~の」と呼んでいます。居場所の運営は地域住民による協議体が担い、文京区社協は家賃や光熱水費、固定資産税等の費用を助成し、土台となる住民組織の立ち上げを支援しています。また、介護予防を目的とした「かよい~の」、孤立防止と仲間づくりを目的とした「ふれあいいきいきサロン」、外国にルーツのある子どもへの支援や不登校児童・家族のための居場所など、多様なテーマに対応する「サロンぷらす」や「子ども食堂」などの活動についても、活動経費の助成を行っています。こうした多様な居場所の活動は、新たに地域に関心を持つ人を増やすことにつながっていくというイメージを持って取り組んでいます。
居場所づくりを考えるとき、地域のキーパーソンから話を伺うことは非常に重要です。「私たちの住んでいる地域には、こういう居場所が必要ではないか」という地域の持つイメージは幅広く、そうした声を丁寧に拾い上げることで、地域づくりの可能性がさらに広がります。また、住民組織の活動は、立ち上げ期には活動場所の確保や運営に関わる人材面での支援が必要となりますが、活動が軌道に乗り10年を超える頃には、活動の継続や次世代への継承を支援する段階へ移行していきます。そのため、拠点の活動が組織化された後も、伴走的な支援を継続していくことが重要であると考えています。
Ⅱ 2年間の移行準備を経た重層的支援体制整備事業の実施状況
(1)区と社協が一緒に先行自治体を視察し、連携して移行準備をすすめる
文京区では、令和4年度から区の直営によるヤングケアラーの支援に取り組み始め、その取組をモデルとして、令和5年度からは支援会議の進め方や連携のあり方の整理を進めるとともに、重層的支援体制整備事業(以下、重層事業)の移行準備事業にも取り組んできました。
文京区は包括的相談支援事業について、総合相談として一か所でまとめて相談を受けるやり方ではなく、既存の相談支援の窓口をつないでいく「つながる相談窓口」という考え方をとっています。準備期間の中で、区の担当者と社協の担当者が先行して重層事業を実施している区部や市部の自治体を一緒に視察し、多機関協働や他の事業の運営について参考にしました。具体的には、支援会議や重層会議をいかに運営していくか、また既存の会議体では深めることができなかったことや、関係機関の連携が困難な点に関して、直接支援者ではない人間が入ることでどのようにマネジメントしていけるのかなどを学びました。事務職に加え、保健師や社会福祉士などのメンバーからなるチームを作って多機関協働をすすめ、現在に至っています。
ヤングケアラーの問題について、地域の実情や課題を聴くため、実際の支援にあたる子ども家庭部と重層事業の担当が一緒になって地域を回りました。そうした際も、社協がつなぎ役として調整を行い、子ども食堂などをはじめとする地域の拠点や地域支援者と区の間に入ることで、スムーズにコミュニケーションをとることができました。こうした部門を越えて一緒に行う取組みを通して、子どもをめぐる地域の課題に関しての共通理解を深め、重層事業の本格実施の際は、必要な事業を子ども家庭部が所管して実施する流れが生まれました。
(2)支援者のネットワークと支援会議開催前後の工夫
庁内での部門間の連携の難しさについて共通認識を得るために調査を行った結果、具体的な対象や問題が挙げられました。それを解決するために、それぞれの窓口をつなぎ、連携を促進できる考え方、連携をするために大事にしたいことなどについて、知恵を出し合い、文面化することからスタートしました。
実際のヤングケアラーのケースでは、精神疾患のある親を支えてきた子どもが18歳になる際に支援者の交代を見据え、家族を支える地域を含めた広い関係者を集め、支援体制をつくる必要が生じました。「親は子どもを育てる人」という役割重視の捉え方から「親であっても、疾患があっても、自分の人生を自律して生きていく人」としてどのように支援するか、家族一人ひとりを支援する視点をもって討議を重ねました。









