また、単独の部署で把握している情報は限られるため、関係機関が持っている情報を集め、家族年表を作成するなど、情報の整理を行い、提示することで家族が地域の中で摩擦を生みながらも、頑張ってきた姿や軌跡が浮かびあがってくることがあります。社協・関係機関でつくられたネットワークと信頼関係は会議が終了しても新しい支援に開かれた連携・協働につながっています。
先行自治体への視察から、会議準備を厚くし、事例を提出した部署と会議で討議をしたい内容を事務局作成の準備シートで整理し、「把握している世帯像」「現在の取り組み状況」「どの支援機関に関わってもらいたいか」「他部署へお願いしたいこと」等討議内容を決定します。さらに庁内ファイル共有システムを使いながら関係部署に説明し、同様のシートで各部署の役割や課題観をつきあわせ、支援の方向性と支援内容・役割分担の概要を決定した上で会議を開催します。概ね1時間の会議終了後には記名式のアンケートを実施し、その後の支援会議の運営に反映させています。
(3)支援会議での検討状況
ご本人から個人情報の同意を得ることは容易ではないため、今のところは重層的支援会議の開催はありません。令和7年度は9月までで11の事例を支援会議として検討しています。支援会議に出席した庁内の部署は、高齢福祉課、障害福祉課、生活福祉課、保健サービスセンター、児童相談所、子ども家庭支援センター、教育センターなどです。
扱われる事例は、医療につながっていない精神疾患を疑う人の問題や、家族関係が良好ではない世帯の問題、生活困窮と住居喪失の問題、発達障害の人の問題、18歳を過ぎた子どもへの虐待の問題(マルトリートメント)など、それぞれ複合的に課題が重なっているケースがほとんどです。若者支援に関しては、区の支援体制として、どの部署が中心的に担当するかが決められていないことから、誰がイニシアチブをとってそのケースの支援をマネジメントしていくのか事例ごとに討議しながら、支援体制を構築しています。
(4)アウトリーチ等を通じた継続的支援事業
アウトリーチと参加支援については、そのケースに一番関りの深い支援機関が中心となって支援計画を立てる仕組みにしています。例えば保健所や教育センター、学校のスクールソーシャルワーカーなど、それぞれでアウトリーチができるという想定です。
地域包括支援センターや基幹相談支援センター、地域生活支援拠点など、相談支援の最前線の窓口の担当者に向けては、本当に困っている人は自力で相談窓口に来られないため、本人宅を訪問して顔を覚えてもらい、いかに不安なく会ってもらえるようにするかといった関係づくりの重要性や、本人が困ったときにどこにSOSを発することできるかを確認するなどの必要性も含めて伝えるようにしています。重層的支援会議に至らないようなケースこそ、アウトリーチが必要であると考えています。文京区では、支援会議であっても、情報共有にとどまらず、支援方針を立ててチームで役割分担をしながら協力して動くようにしています。
(5)参加支援事業
ひきこもり当事者の支援の取組みとして、多世代型の居場所でのパンの販売を短時間就労で企画した結果、ご本人が少しずつ自信をつけることができたというケースがありました。地域の中でどのような活動やプログラムが行われているのかについて把握し、事前に地域の支援者とお互いにコミュニケーションをとっておくことが大切です。
社協のCSWにとっては、これまでも地域活動の中で“支援の受け手から担い手へ”と役割が変化していく事例はこれまでも見られましたが、参加支援事業として考える場合、ご本人が「こういう場に参加してみたい」「このコミュニティなら行ってみたい」と具体的にイメージできることが重要であると考えています。また、問題解決につながったケースであっても、何が転機となったのかがすぐに明確にならない場合もありますが、集団の関係性の中でご本人が変化していく“場の力”があると捉えています。こうした観点から、今後も「サロンぷらす」のようなテーマ型の活動に継続して取り組んでいくことが必要です。
(6)地域づくりに向けた支援事業
既存の事業や取組みの中で、地域づくりに関わりが深そうな分野の事業に積極的に関わっていくことで、連携を強化し、多層的なネットワークの構築をめざしています。
社協としては、これまで地域住民とともに取り組んできた活動が行政からの信頼につながり、その結果として助成金等の形で支援に結び付いていると考えています。委託という関係性を超え、これまでの取組の意義を行政と社協が共有し、お互いに話し合える場を設けながら、一緒に検討を重ねて重層的支援体制整備事業を進めてきました。地域づくりには、地域住民が主体となる活動もあれば、行政の施策に基づく取組もあります。例えば、フレイル予防などの事業において地域の担い手を育成する際には、それを小地域へどのように広げ、参加を促していくかが課題となります。そのため、社協としても行政と協働し、マクロとミクロの両面から地域づくりを捉えながら、方向性をすり合わせていくことが重要です。
*重層事業に関する区民向けの周知・広報(区報ぶんきょう 令和7年10月10日号より)

<ヒアリング日:令和7年9月16日>








