「思いつき」から生まれたテーマをスナックイベントに
赤坂見附にある「スナックひきだし」(以下、「ひきだし」)は、昼間から、見知らぬ人同士が気軽につながれて、飲み物片手に会話が楽しめる場です。
「オープン時は45歳以上の中高年の方に元気になってもらうため、心のモヤモヤを吐き出せる場というコンセプトでオープンしました」とオーナーの紫乃ママこと木下紫乃さんは話します。今では世代の枠にとらわれず、だれもが気軽にモヤモヤを吐き出せる場になっています。
「ひきだし」では、通常のスナック営業以外にも、ママ・マスターたちのさまざまな「思いつき」から生まれたイベントも開催しています。紫乃ママは、2年前に社会福祉士の資格を取得されました。勉強を通して特に関心を抱いた分野が「刑事司法と福祉」でした。「刑務所から出た人が、スマートフォンや銀行口座、身分証明書も持っていないのに、社会復帰しろと言われてもどうやって更生をしていけばよいのか」。そんな疑問から、更生保護(*) に詳しい方をマスターに迎え、こうしたテーマをゆるく話してもらうイベントを数か月に1度開催したり、あるいは毎年夏には「夏休み子どもノンアルスナック」を開催し、子どもたちにママ・マスター体験としてカウンターに立ってもらっています。
「子どもたちの発想はとてもユニークで率直なんです。いろいろ体裁を気にしたり、自分の気持ちに蓋をしてしまっている大人たちの悩みに、子どもたちの真っ直ぐな意見で活を入れてもらおうと、思い立ち、子どもらが大人の悩みを聞くというスナックを思いつきました」と木下さん。子どもを連れてこられる保護者の方たちのコミュニケーションの場にもなっているとのことです。
福祉関係のママ・マスターが悩みを聞く
「ひきだし」では、さまざまな経歴を持つ約30人のママ・マスターがいます。その中には介護職や看護師、臨床心理士の経歴を持った方がカウンターに立ってお話を聞くこともあります。「病院や福祉の相談窓口に行くほどではないと思っていても日々の暮らしのなかで健康や生活のことでの不安や、親の介護、子どもの障害等のことで小さな悩みを抱えている方は大勢います。支援する人と支援される人という関係ではなく、気軽にモヤモヤを吐き出せるようになったら」と紫乃ママは話します。ママ・マスターを務める専門職にとっても普段の仕事では聞けないリアルな悩みを聞くことができる機会となっています。
スナックを飛び出し福祉施設にも
今後さらに広げていきたいと考えているのが「出張スナック」です。これまでにも就労継続支援B型事業所や企業などで出張スナックを実施してきました。「今からスナック開店です!」と言えば、その時間だけは、飲み物を片手に利用者さんや職員さん、上司も部下もフラットに、ともに会話を楽しむ時間が生まれます。「B型事業所で開催したスナックでは、いつもは利用者さんの課題を解決する立場の支援員さんが、ご自身が抱える悩みをボソッと吐き出したり、利用者さんが日本酒の銘柄にとても詳しくて、それを他の方に教えてくださったりと、普段の“支援する人” “支援される人” という立場を超えて、フラットな人と人との付き合いの場が生まれたりしています。利用者さんも施設の中で支援される人として淡々と生活しているだけでは、つまらないじゃないですか。たまには、利用者の方、施設職員が垣根を外してともに楽しんで話ができるような、きっかけづくりのお手伝いをやっていきたいです」と紫乃ママは言います。
「ひきだし」の取組みは店のカウンターを越えてさまざまな形で広がっています。
*更生保護: 犯罪や非行をした人が社会に復帰し、改善更生することを助けることにより、安全安心な地域社会をつくることをめざす活動
https://hikidashi.co.jp/snack-hikidashi/










