あらまし
- 東村山市社協では、部署を横断した「社協総合相談チーム(以下、チーム)」を編成し、どの窓口にも当てはまらない相談の対応にあたっています。チームリーダーの稲森さん、メンバーの田中さんにお話を伺いました。
◆チームの発足
チームが発足した背景には、事業化により相談窓口が専門分化していくとともに、本来社協が備えていた「どの窓口にも当てはまらないニーズの受け皿」の機能が希薄になってしまうという危惧があります。そんな行き場のない相談にあらためて対応する体制づくりとして、第五次社協発展・強化計画に明記され、チームが発足しました。
メンバーは東村山市社協にある6係のうち5つの係(法人運営係、まちづくり支援係、基幹相談支援センター、地域包括支援センター、権利擁護係)から1名ずつ選出されています。集まったメンバーは若手職員が多く、各係の業務を知ることから活動が始まりました。
◆係を横断した対応や、職場内研修を実施
月に一度行うチーム会議では、各担当者が受けた相談について共有を行っています。対応が完了しているケースは報告のみですが、対応に悩むものはチームで対応を検討します。既定路線のない支援となることが少なくないため、個人の見解のみで対応するのではなく、組織的に方針を立てて対応することを心がけています。
50代のセルフネグレクト状態の方について相談を受けた際は、まず高齢分野・障害分野両方の担当者が一緒に訪問し、食事の配達をすることから関わり始めました。まちづくり支援係と協力しながら定期訪問を続け、最終的には公的サービスへつなげることができました。
また、チームでは職員向けの相談員研修も実施しています。それは職員の誰もが相談を受けることができる社協を目指しているためです。主な従事内容が事務の係もありますが、社協職員である以上、相談を受ける可能性は全員にあると考え、正規・嘱託職員の全員を対象としています。
◆まちづくり支援係との連携
東村山市社協のまちづくり支援係11名(ボランティアセンター担当含む)では、13ある町に2名ずつ「まち担当」を配置しています。それぞれ各町の「福祉協力員」と呼ばれる地域住民と共に、「一人ぼっちのいないまち」を目指してまちづくりをすすめています。(全町で約550名)
地域住民の声を聞く機会の多いまち担当だからこそ、自分たちだけでは解決できない地域のニーズを相談されることがあります。そんなときも、チームが協力することで対応できることがあります。
チームにとっても、まち担当に訪問同行してもらうことで、地域の状況を踏まえた伴奏支援が可能になります。お互いにとって課題解決の可能性が広がるため、今後もチームとまちづくり支援係では連携を強めたいと考えています。
◆東村山市内法人連絡会との連携
チームは東村山市内社会福祉法人連絡会が取り組んでいる「暮らしの相談ステーション※」の一つとしての機能も果たしています。さらに、他法人の「暮らしの相談ステーション」に届いた相談のうち、対応が難しいと連絡のあったものはチームが対応しています。個人情報提供の同意欄がある共通のシートを使用しているため、スムーズに引き継ぐことができています。
また、法人連絡会で行う相談員交流会にはチームメンバーも参加。さらに、先述した職場内研修に他法人の暮らしの相談ステーション担当者も参加を呼びかけ、市内全体の相談スキル向上を図っています。
◆チームによる効果
高齢でもなく、障害があるわけでもなく、住居もあり、お金に困っているわけでもない、そんな人が自ら社協につながる機会はあまりありませんが、近隣住民が「最近見かけないな……」と心配していることがあります。そんなときの近隣住民からの相談先としてチームは機能しています。
チームが編成されるまでは、どの窓口にも当てはまらない相談の記録には統一ルールがありませんでした。チームによる対応が始まったことで記録が残るようになり、繰り返し相談されているケースに気づき、組織として継続した対応ができるようになりました。
また、チームが係の間をつなぐハブの役割を果たすようになり、普段の業務でも連携がしやすくなりました。特に、地域の情報に詳しいまち担当と、ケースワークを行う係とが情報共有を行うことでアプローチの幅が広がりました。社協内連携のきっかけという意味でも、チームは大きな役割を果たしています。
「色んな係と連携すればもっとできることが広がると思う。だからこそ、他の職員にも同じ視点に立ってもらえるようになりたい」と話していた稲森さんと田中さん。
今後の展望を語るお二人の目には、社協が一丸となって課題解決に取組む未来が映っているように感じました。
※暮らしの相談ステーション…東村山市内社会福祉法人連絡会が行う、地域住民の相談を受け付ける事業。現在29法人で実施しています。
(取材日:令和6年12月3日)