住民同士が交流する場をつくりたい
町田市の東部に位置する成瀬台。町田市の中でも一、二を争うほど高齢化がすすむこの地域に、「みんなの居場所 陽だまりカフェ」があります。ここを運営するのは安達毅さんと聡子さん夫婦です。聡子さんは「私がケアマネとして働いていた頃、孤立した高齢者が多く、コミュニティが希薄化したこの地域の課題を感じるようになり、2016年から自宅で月1回、認知症カフェを始めました。そのうちに多世代が集える常設の場所が必要だと思い、一念発起してカフェ立ち上げを決めました」と、きっかけを話します。毅さんは「ちょうど、かかりつけ医が閉院したことを知り、院長に相談をもちかけたところ、私たちの想いに共感していただき土地を売ってもらえることになりました。そして、これまで住んでいた自宅を売り、この医院の跡地を購入し1階をカフェ、2階を自宅として新築しました。私たちにとって無謀ともいえる挑戦でしたが、成瀬台の未来を考えた時、今行動するしかないと思いました」と話します。
カフェ運営のため地域のボランティアを募る
カフェ立ち上げを決めた当初は、二人とも仕事をしていたこともあり、説明会を実施して一緒に運営してくれるボランティアを募りました。聡子さんは「説明会には『地域で何かしたい、地域に関わりたい』という住民の方々がたくさん来てくれました。みんな何かしら地域に貢献したいという気持ちを持っていて、さまざまな意見やアイデアをいただきました」と話します。集まったボランティアを“陽だまりさん”と名付け、店番と見守り役を任せることにして、2022年に陽だまりカフェをオープンしました。
コーヒーや軽食が楽しめるカフェと、和菓子教室や映画観賞会、子ども会の集会など、地域のさまざまな人たちが交流できるイベントも毎日のように開催されています。安達さん夫婦から発信されるイベントもありますが、陽だまりさんの特技やつながりからイベントに結びついたものも多数あり、ここの特徴のひとつになっています。毅さんは、「毎日、歩行器を押して来てくれる高齢者や、コーヒーを飲んで話して帰る方、イベントを楽しみに来てくれる方など、皆さん思い思いに過ごされています。来てくださる方に『ここを作ってくれてありがとう』とよく言われるのですが、私たち自身が楽しんでやっていることに感謝していただけるなんて、こんな嬉しいことはないですね」と話します。
多世代がつながる場からまちづくりへ
陽だまりカフェでは、たくさんの人が利用できるようにカフェとイベントのスペースを仕切らないオープンな空間にしています。イベントは毎回予約で埋まっているほど大盛況で、イベントの参加者だけでなく主催する地域の方にとっても、ここでの活動が生きがいになっているといいます。陽だまりカフェで和菓子カフェや和菓子教室を開く富所奈保子さんは「もともと陽だまりさんとしてボランティアで関わっていましたが、和菓子づくりの面白さを伝えたいと思い、ここでカフェや教室を開いています。参加者からの『おいしい』という言葉に元気をもらっていますし、この場所と人に出会って、私自身の人生が変わりました」と嬉しそうに話してくれました。聡子さんは「地域には、街のために何かしたいと思っている人、スキルや活かせる経験がある人など、たくさんの人材が眠っているんだと感じました。イベントを通じて、地域の可能性を掘り起こして一緒に盛り上げていきたいです」と話します。
地域の人たちとつくりあげてきた陽だまりカフェもオープンから3年が経ちました。聡子さんは、陽だまりカフェの運営で培ったノウハウを広く伝えていきたいといいます。「“住み開き”という言葉があり、ここのようなコミュニティカフェも増えてきました。住宅地ならではのコミュニティづくりについて、私たちが経験したことを話せる機会を設けられたらと思っています」と今後の展望を話します。
多世代が生き生きと暮らし続けられる街のために、さまざまな人がつながる“仕掛け”と、交流の“きっかけ”を、これからも発信していきます。
みんなの居場所 陽だまりカフェ
- 場所:町田市成瀬台3-8-1
- 問合せ先:☎080-6406-8929
https://narusedai1234.com/