いどばた焚き火代表 阿部華奈絵さん
社会的養護の当事者として「ゆでたまご」の活動を始めたが、
近年は「地域」や「環境」が活動のテーマ。
三重テラスのコミュニティーマネージャーとして東京と三重をつなげる等の活動もしている。
あらまし
- その場、その時に生まれるものを大切に、地域で取り組まれてきた阿部華奈絵さん。
取組みの背景や大切にされていることをお伺いしました。
与えられた選択肢ではなく、自分らしく生きていきたい
子ども時代、家と学校のどちらも安心できる場所ではなく、近くの川で時間を過ごすことが多かったです。その時から私の居場所は、「自然」にあったのだと思います。高校からは児童養護施設で暮らすことになるのですが、自分が変わるきっかけがほしくて、東京都の代表として、高校3年間インターハイの運営に携わりました。広報活動で各地に足を運んだ経験などは、現在の活動につながる原体験といえます。
卒業後は進学を希望していたのですが、経済的な理由で施設職員に反対され、就職を選びました。奨学金等もあったと思うのですが、当時の私は目の前にある選択肢以外を選ぶことができなくて。
高校からの紹介で働き始めた先は劣悪な労働環境で散々な目に遭い、そんな時に「与えられた選択肢を選ぶのはやめて、自分の道は自分で決めて、自分らしく生きていこう」と強く感じました。会社を辞めてからは、任意団体「ゆでたまご」を設立。施設や里親家庭を離れる時にそれぞれが自分の人生を考える上での選択肢や必要な情報を知るきっかけになればとガイドブックの作成を中心に取り組みました。それからはヘルパーをやったり、三鷹で焚き火の活動を始めてみたり。いずれもその場、その時に生まれるものを大切に歩んできました。世間的にみればリスクの高い生き方を選んだのかもしれないけれど、いろいろな人に出会い、それぞれの生き方を知り、自分の生活基盤も地域のつながりによって整っていきました。
便利になった現代だから、大切にしていきたいこと
5年前から続けている三鷹での「いどばた焚き火」。子ども時代に「ほしかった居場所」をつくりたい、社会的養護の当事者という枠でくくられることなく、自分らしく生きていきたいとの思いで始めました。焚き火の好きなところは、火を起こすことから皆で取り組めること。始めて50回になりますが、大人だけで語る回もあれば、子どもたちが水鉄砲大会を始める回も(笑)。便利になった反面、社会的な孤立が生まれやすい現代だからこそ、多様な世代や層がつどい、お互いの「あたりまえ」を交差させて、そのギャップを面白がるような空間が地域の中にあることが大切だと考えています。
4月のいどばた焚き火の一コマ。
急な大雨でも楽しむ子どもたちの姿から、
自然と生きていることを大人が学んだ瞬間も。
多様な人とのつながりが、社会課題を解決していく
現在は、焚き火の活動を中心に、縁あって三重をはじめとした地方の取組みにも関わったりしています。そうした活動の背景には、次世代がいろいろな選択肢を知り、人生の幅を広げてもらうことにつながればという思いがあります。高校時代の私もそうであったように、知らないことは選択肢に入らない。だったら、知る機会を生み出していきたいと…。
人とのつながりが社会課題を解決すると私は思っていて、多様な取組みを通じて一人ひとりの関係人口が増え、そして地域のたすけあいが根づく社会をつくっていきたいです。そのためには、私自身が楽しく、幸せであることを前提に。今という瞬間を何より大切に、一日一日を生きていきたいです。
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