府中市社会福祉協議会 地域活動推進課 まちづくり推進係 田上さん
あらまし
- 府中市社会福祉協議会(以下、府中市社協)では、市からの委託を受け2022年4月より「住宅セーフティネット住まい相談」を実施しています。社会福祉協議会が住まいに関する相談を担う意義とは何でしょうか。担当する地域活動推進課まちづくり推進係の田上さんに府中市社協の取組みを伺いました。
住まい相談の窓口を社協に一本化
「住宅セーフティネット住まい相談」は、住宅セーフティネット法による住宅確保要配慮者の民間賃貸住宅への円滑な入居を促進するための支援策の一つとして設けられた、住まい相談の窓口です。府中市居住支援協議会が2020年7月に立ち上がり、事務局を担う府中市都市整備部が同年8月からこの窓口を開設しました。開設当初、府中市では、市福祉保健部が所管する高齢者対象の住居の住み替え支援や、府中市社協が行う民間住宅の斡旋事業といった住まい相談の窓口もありました。その後、福祉的な相談も一体的に引き受けることをねらいとして、2022年4月に窓口を一本化し府中市社協でその相談を受けています。
住まい相談をきっかけにかかわりをもち、地域で安心して暮らせるための見守りを継続していきます。
具体的に住み替えが必要な場合は、協力店として登録している不動産事業者に照会をかけ物件を探します。実際に住み替えに至るケースもありますが、相談をきっかけとして住まいに限らない課題が見えてくることもあります。一緒に相談内容を解きほぐしていき、必要に応じて同じ部署の地域福祉コーディネーター(以下、地域福祉CO)や各関係機関につなぐこともあります。複合的な課題を抱えた世帯の場合は、関係機関と役割分担を行いながら支援することもあります。
地域づくりを基盤とした居住支援
田上さんは、2022年度まではまちづくり推進係で地域福祉COを担当し、2023年度からは住まい相談の担当になりました。「相談者に対して複合的な視点を持ち、相談内容として顕在化していること以外の困りごとはないかを考えたり、制度を紹介したりすることは共通する役割だなと思います。一方で、例えば福祉用具の利用などによりいかに希望に近い暮らしができるかという視点は、住まい相談の担当ならではだと感じます」と言います。また、府中市社協が住まい相談の窓口を担うことの効果のひとつとして、地域福祉COとの連携があります。「ある単身高齢者のケースでは、担当の地域福祉COと住み替え前から情報共有を行いました。住み替え後は地域福祉COが紹介したサロンや、地域住民が行うボランティア活動に参加されています。このほか、地域福祉COが新規に受けた相談に応じるなかで住まい相談にもつながったり、継続して関わるなかで引っ越しのタイミングで住まい相談につながることもあります」。
『住宅確保要配慮者に対する居住支援機能等のあり方に関する検討会』の中間とりまとめにおいても、地域における居場所づくりまで含めた取組みの推進が求められています。地域住民が生きがいをもって暮らしていくための活動につながる例だといえます。
社会の変化に伴うこれからの居住支援
このように社協ならではの住まい相談が定着していく中で、田上さんは難しさも感じており、「そもそも相談者に紹介できる物件が少なく、不動産事業者から『ここでもよければ』と提案されたところも金銭面・生活面で条件が合わないことも少なくありません。加えて、理解あるオーナーが高齢となり物件を売却したりするなどの変化もあり、受け入れ可能な物件が少なくなってきているなと思います」と話します。借りる側、貸す側双方に意向があるのは当然で、いかにすり合わせていけるか日々悩みながら対応しているそうです。
一方で空き物件の利活用の促進や社会全体においても居住支援の必要性が認識されてきた状況を鑑みると、これからできることもあると考えているとのこと。例えば社協が入居後の支援をすすめる中でオーナーや不動産事業者に「社協が見守っているから安心して貸せる」と思ってもらえるよう、オーナーとの情報交換ができればいいなと考えているそうです。
こうした住まい相談をひとつの入口として、府中市社協は社協だからこそできる支援の仕方、かかわり方を模索し続けます。
https://www.city.fuchu.tokyo.jp/kurashi/machi/kyojusien/sumai-soudan.html