(社福)大田区社会福祉法人協議会
「子ども民生委員」の体験を通じて、地域の中で“生きる力”を育んでほしい
NEW 掲載日:2025年12月8日
2025年12月号 連載【これからを生きる次世代へ】第3回

〈今回取組みをお聞きした方〉
(社福)大洋社 理事長 齋藤 弘美さん、常務理事 近藤 真弓さん
大森東地区民生委員児童委員協議会 会長 比戸 二郎さん
(社福)大田区社会福祉協議会 総務課 根本 恵津子さん、

地域福祉推進課 山口 忠行さん、後藤 恵美子さん、細尾 侑加さん

 

あらまし

  • しんどい時に打ち明けられる存在があること、他者や地域を気にかけられる人でいること。そうした“生きる力”を子どもたちに身につけてもらいたいと、大田区の社会福祉法人で構成される大田区社会福祉法人協議会(以下、法人協)では「子ども民生委員」の取組みをすすめています。今回は「子ども民生委員」の取組みから、地域だからこそ生み出せる次世代への取組みを考えていきます。


地域における身近な相談相手として、住民や地域のニーズに寄り添う民生児童委員。大田区では民生児童委員の活動を子どもたちが体験する「子ども民生委員」の取組みが2018年からすすめられています。もともと、ひとり親家庭の小中高生を対象に「さまざまな経験を通じて『生きる力』を育んでもらいたい」という思いで動き出した法人協(法人協の中の4つの協力法人)による体験型の学習支援「れいんぼう(※)」の一環。大人との関わりや体験機会が限られている子どもたちに、地域に頼れる存在がいることや、地域の支え合いの中で生活していることを自然に感じられる経験を生み出せればと子ども民生委員の取組みにつながっていきました。福祉施設、民生児童委員、社会福祉協議会の三者が協働しながら取り組むことで、活動の幅や関係性が広がっているといいます。区内の大森エリアと久が原エリアを中心に、今年度からはコロナ禍の時に規模縮小していた募集も再開しました。

 

※4つの社会福祉法人(大洋社、池上長寿園、大田幸陽会、大田区社会福祉協議会)の地域における公益的な取組みとして実施。「学ぶ」「食べる」「動く」「体験」の4つの切り口から多様なプログラムを展開。

 

多様な他者、地域と出会う

小学1~6年生が中心の子ども民生委員の任期は1年で、2025年度は19名の子ども民生委員が誕生。委嘱式で民生児童委員や福祉について学んだら、その後は地域のお祭りや街頭募金の活動に参加していきます。10月に開かれた自治会連合会主催の「いつつのわふれあい祭り」では、お祭りを訪れる人たちにパンフレット配布やクイズを通じて民生児童委員の啓発活動に取り組みました。臆せずに一人で話しかけにいく子もいれば、誰かと一緒におそるおそる声をかけてみる子も。民生児童委員等の見守ってくれる大人の存在があることで、子どもたちは安心して活動ができるといいます。また、事前に子どもたちには活動の趣旨や考えてもらいたいことを伝えたり、関係する大人が積極的に声掛けを行ったりするなど、一人ひとりにとって大切な機会になることをめざしています。


取組み当初から関わる(社福)大洋社の近藤真弓さんは「恥ずかしがっていた子も一歩踏み出してみたら気づきや変化が生まれて、この活動が子どもたちの大きな自信につながっていることを実感します。地域の大人たちがこうした機会を生み出していく姿勢が大切では」と振り返ります。4月から担当になった大田区社協の細尾侑加さんも「地域とのつながりが生まれたり、相手の立場になって考える経験をしたり、成長につながる素敵な活動」と見守る一人として思いを明かします。

 

 

自分を、そして他者や地域を大切にする一人に

コロナ禍も止まることなく、今年で7年目となる子ども民生委員の取組み。立上げ当時を担当した大田区社協の根本恵津子さんは「参加した子が年を重ねていき、街中で活動を目にした時に何か感じられることがあるのではと思います。続いているからこそ、より自分にとっての経験になる」と継続する意義に触れます。また、取組みの継続と、今後は体験の幅や関わる人、そして地域を広げていくことについて皆さんは言及します。


一つの団体ではなく、地域で取り組むからこそ次世代に伝えられるもの。それは自分を見守る存在だったり、多様な人や団体が支え合いながら生きる地域だったり。長く関わる民生児童委員の比戸二郎さんは「道行く知らない人に話しかけること、募金を呼び掛けること、子どもたちにとって一つひとつが成長のきっかけ。安心できる存在に見守られながら、地域の多様な人と交流してもらいたい」と話します。(社福)大洋社の齋藤弘美さんは「子どもたちが大切にされていることを実感しながら、自分自身を大切にする、好きになる経験をしてもらいたい。そして、誰かが用意する未来ではなく、自分たちの将来として地域のことを考えていく一人になってもらえたら」と思いを明かします。手をひかれて参加していた子が、いつのまにか誰かを後押しする存在に。子どもたちが“生きる力”を育んでいくために、地域の多様な人が協働しながら取り組み続けます。

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(社福)大田区社会福祉法人協議会
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