
(左)NPO法人Social Change Agency
社会保障ゲーム運営チーム 統括ファシリテーター 日下 竹彦さん
(右)東京都立青梅総合高等学校 定時制課程 教諭 田久保 宏征さん
あらまし
- 私たちが生きていく上で困難やピンチに陥った時、セーフティネットになるものが「社会保障制度」です。中高生が遊びながら社会保障を学べるカードゲームを開発したSocial Change Agency(ソーシャル チェンジ エージェンシー)と、授業でこのゲームを採用した東京都立青梅総合高等学校に取材しました。
社会保障制度をカードゲームで学ぶ
現在、社会保障制度やそれにまつわる相談窓口は400ほど存在するといわれています。しかし、必要な人たちに適切に届いていないことで、生活や生命が脅かされてしまう人たちも多く、社会的な課題のひとつになっています。この課題に対して、福祉と教育、ITによるアプローチで取り組んでいる団体がSocial Change Agency(以下、SCA)です。社会保障ゲームの運営チームに所属し、統括ファシリテーターを務める日下(くさか)竹彦さんは、その原因の一つに制度を利用することへの心理的障壁があると話します。日下さんは「恥ずかしい、誰かに知られたくないと思ってしまう“スティグマ”が働くことで、利用することを阻んでしまうのです。この現状を変えるためにも、中高生の早いうちから社会保障制度を知る機会をつくり、制度を利用することは“権利”であることを知ってもらう必要があると考えました」と話します。
そこで考案したのが「社会保障ゲーム」というカードゲームです。12人の架空のキャラクターに起きる困り事やピンチを想像し、その手助けとなる社会保障制度を考えることで実践的に社会保障が学べるというもの。2024年に試作版をリリースし、2025年6月から正式版がスタートしました。実施する中学校・高校にゲーム一式を貸し出し、SCAのファシリテーターがサポーターとして派遣され、ともにゲームをすすめていきます。現在までに全国で16校がゲームを授業で採用したといい、好評を得ています。

「社会保障ゲーム」の本体
グループワークで学ぶ社会保障~授業の現場から~
2025年11月に、東京都立青梅総合高等学校でこのゲームを使った授業が行われました。定時制課程教諭の田久保 宏征さんは、授業でこのゲームを用いた背景を次のように話します。「東京都の『都立高校生の社会的・職業的自立支援教育プログラム事業』でゲームの存在を知りました。生徒の中には、社会的なピンチをすでに経験している、またはサバイブしようとしている子もいます。そういった子たちにとって、社会保障制度を知ることはこれからの人生を生きる上での武器になると思いました」。自分で人生を切り拓く力だけではなく、制度や誰かを頼るスキルも自立のひとつであるということを、生徒に感じてもらいたいという想いを話します。
実際の授業では複数のグループに分かれ、架空のキャラクターを選び、そのキャラクターに起こりそうなピンチを付箋に書いていきます。さまざまな社会保障制度の内容が書いてあるカードをピンチに応じて選び、解決方法を考えていきます。ゲームに参加した生徒からは「社会保障を学ぶことで、自分だけではなく身近な人たちも助けられると思いました」という意見や「大人になって自分に何ができるのか考えるきっかけになりました」と話す生徒もいました。
生徒からさまざまな意見が
「知る」ことが「生きる力」になる
最後に、日下さんは「ある生徒さんから『こんなに助けてくれる制度があるなら、これからの人生なんとかなるかもしれませんね』という感想をもらった時は嬉しかったです。社会保障というと『高齢者』や『介護』というイメージが強く、若者からしてみればもっと後に利用するものと思いがちですが、性別や年齢、子どもや大人、国籍問わず、誰もが利用できるのが社会保障制度です。もしかしたら明日、利用するかもしれません。何か困ったことがあったら『そういえば授業で学んだな』と思い出してもらうことで、自分から行動するきっかけの一つになればいい」と想いを明かします。田久保先生もうなずきながら「これから社会に出て人生を前向きに生きていくために、ピンチに直面しても頼れるところはたくさんあるということを知ってもらいたい」と話します。
SCAでは、2026年度末までに5,000人に社会保障ゲームを届けることを目標に、オンラインでのゲーム開発もすすめながら参加者の拡大をめざしています。社会保障制度をより身近な存在にするために。さまざまなアプローチで種まきを続けていきます。
https://social-change-agency.com/








