
認定NPO法人PIECES 代表理事/ソーシャルワーカー 斎 典道さん
大学在学中より国内外の社会的養護、
地域子育て支援の現場でフィールドワークを実施。
2012年には北欧の社会福祉を学ぶためデンマークに1年間滞在。
国民の日常に溢れる、文化としてのウェルビーイングの価値に深い感銘を受ける。
あらまし
- 小さな困りごとや心の傷が生まれた時に、身近に頼れる誰かがいる―。そんな子どもや若者が孤立せずに優しいつながりが溢れる社会をめざし、一人ひとりの“市民性(*)”を耕すことに取り組んできた認定NPO法人PIECES(ピーシーズ)。その取組みを通じて、私たち一人ひとりの関わりやあり方を考えていきます。
(*)肩書や立場をおろして、ひとりの人として他者や社会と関わり合おうとする姿勢
医療や福祉、教育などのフィールドで活動してきたメンバーが立ち上げた認定NPO法人PIECESは、「頼りたくても、頼ることができない子どもの孤立」に対するそれぞれの思いが重なり2016年に設立されました。子ども分野の専門職化や資格化がすすむなか、PIECESが取り組んできたのは社会に生きる一人ひとりが持っている“市民性”の醸成。専門職として子どもたちと向き合ってきた一人でもある代表理事の斎さんは次のように思いを話します。「虐待を受けた子どもたちの多くは家にも学校にも安心できるつながりがないんですよね。そんな環境にあった子どもたちの心の傷の深さに触れた時にその傷をしっかり手当てすることも大事だけど、傷が深くなる前に社会として支えられなかったのかということをすごく感じました。専門的なケアも大事だけれど、身近な人たちのケアによってその手前で子どもたちを支えられたりとか、日常にいる人たちのまなざしとか関わりがすごく大事じゃないかと。肩書きや枠組みのない“市民性”ゆえの難しさもありますが、その曖昧さが制度や専門性の隙間を埋めていくことができるのでは」。ちょうど子ども食堂を中心に子どものサードプレイスが地域に広がり始めていた頃でもあり、“市民性”に対して取り組む大切さをより強く感じたといいます。
あるがままの自分で子どもたちの隣にいること
PIECESが設立時から大切にしてきた「Citizenship for Children(以下、CforC)」の取組み。子どもたちが生きる地域に信頼できる大人を増やすことをめざし、“市民性”を起点に自分らしいあり方を参加者が探求・実践するプログラムです。参加者は市民活動や子ども支援に携わっている人だったり、何かやりたいと考えている人だったり。講座・対話・リフレクションの3つの要素を通じて、自分自身の“市民性”と向き合う時間を過ごしていきます。なかでも、日常での子どもとの関わりの一場面を持ち寄るリフレクションの場は肝となる時間だとか。斎さんは「多様な価値観や考え、願いが調和するのではなく、あえて不協和音のようにいろんな音が響き合う場になったら」と話します。その言葉どおり、時間をかけて参加者の願いや思い、子どもの言動の背景にある気持ち等を深堀りしていくなかで、他者の視点や解釈が入り、それぞれの見え方が変容していくといいます。
プログラムは定員10名程度で4か月にわたり、技術や知識の習得(Doing)ではなく、一人ひとりのまなざしやあり方(Being)を見つめることを大切にしています。そのことは参加者の「ネジを締め直すつもりが、むしろ“緩んでいく”体験」「特別なことではなく、普通の関わりだからこそ尊いと感じた」といった声からも伺えます。斎さんは「自分の思いや願いを立ち止まって見つめ直す時間は大切で、子どもへの眼差しの偏りに気づいたり、自分の願いを改めて確認したり。子どもへの見方の偏りに気づいたり、自分の願いを改めて確認したり。そこから生まれた小さな気づきによって、同じような場面でも景色が違って見えてくるんじゃないかな」と話します。今後は参加者同士をつなげたり、一人でも多くの人に取組みを届けたりすることを模索しています。

CforC修了生の取組み(+laugh多摩)
大人こそ自分という存在を大切に
専門性ではなく、“市民性”の醸成に取り組んできたPIECES。子どもの声や権利について問われるようになってきた今、私たち一人ひとりに大切なことを斎さんは次のように話します。「子どものことを考える前に、自分の存在を忘れちゃだめというか。自分自身が誰かに声を聞いてもらえていないと、誰かの声を聞くことは難しいんじゃないでしょうか。どうしても大人になると自分の願いや感情よりも、周りのこととか、正解を気にしてしまう。そういう意味で子どもたちはずっと“市民性”に溢れていて、自分の感情や感性とかをすごく大事にしている。子どもと一緒にいることで、自分の市民性に気づけることもあると思います。だから子どもに何かをしてあげるとかではなく、子どもとともにいるというあり方。その感覚がすごく今私たちには大事ではないでしょうか」。
小さな困りごとや傷つきが生まれたときに、頼れる存在が身近にいる。そんなまなざしや関わりに包まれることで、何より子どもたちは安心して生きられることにつながるのかもしれません。
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