あらまし
- 「令和7~11年度 東社協中期計画」で掲げる“協働”をキーワードに、(社福)豊島区民社会福祉協議会と東京都社会福祉協議会との共催により「単身化社会を考える地域フォーラム-ひとりを、みんなで支える」を開催しました。豊島区で活動するさまざまな分野の専門職を中心に80 名を超える参加者が集まり、“身寄り問題”へのアプローチを考える契機となりました。
厚生労働省は、“身寄りのない高齢者等への対応” を論点の一つとする「地域共生社会の在り方検討会議」の中間とりまとめを2025 年5月に公表しました。同年12月には社会保障審議会福祉部会報告書を公表し、「日常生活自立支援事業」の拡充・発展による新たな事業の創設が提起されました。高齢者等終身サポート事業者数も増え、同事業のガイドラインの整備がされるなど、国を挙げて“身寄り問題”に取り組む施策がすすめられています。
高齢者人口に占める単独世帯の割合が日本一の豊島区では、単身高齢者の暮らしを支えるさまざまな取組みが行われています。本フォーラムで“身寄り問題”をテーマに関係者が集まる場を設けることで、豊島区でどんな課題が生じていて、自分たちの取組みをどう展開できるか考える第一歩をめざしました。
第1部 基調講演
~私たちは「身寄り」をどうとらえるか―「身寄り力」への着目~

第1部は沢村 香苗さん(㈱日本総合研究所 シニアスペシャリスト)による基調講演でした。沢村さんは“身寄り問題”が注目されている現状を次のように分析します。「私たちの日常生活は、できないと困るけど、お金を払って専門職にお願いするほどでもない“ささいな用事”が大半です。そして、判断・意思決定するだけでなく、それを実行しなければなりません。例えば、光熱水費を払おうと思ってコンビニで振り込んだり、栄養を取るために料理したりというようなことです。そもそも、高齢期以降は支援が必要な場面が多々生じます。これまで家族や若い世代が自然とサポートしてきた役割を、誰が担うのか考えなければならない転換点に来ているのです」。国民生活基礎調査(2024年)によると、65歳以上の者のいる世帯の内訳として最も多いのが単独世帯(32.7%)、次いで夫婦のみの世帯(31.8%)です。一方で、複数人世帯であっても一人の変化により全員が困難に陥る可能性がある世帯もいます。このように考えると、“身寄り問題” はすべての人にかかわる問題だと考えられます。
こうした背景から、沢村さんは「身寄り力」という考え方を次のように提案します。「いまや、親族がいれば頼れるという時代ではありません。身寄りがある・ないではなく、どんな人が自分にとって必要なのかを具体的に考える必要があると思っています。例えば次の2つの視点①支援者の身寄り力-親族や友人が持つ「身寄り力」はどの程度なのか②個人の身寄り力-個人にとって「側にいる人」や「信用できる人」など、どの程度頼れる人がいるのかから、『この人の身寄り力はどのくらいか』と考えてみるのもいいと思います」と話します。
第2部 パネルディスカッション
~身寄りのない方への支援の現状と必要とされる連携とは~

榎本さん、冨永さん

小林さん、三上さん、黒澤さん、局さん
〈パネリスト〉
介護 榎本 秀治さん(豊島区介護支援専門員連絡会会長)
医療 局 勇輝さん((医) 日心会総合病院一心病院 医療連携室 主任)
民間 黒澤 史津乃さん((一社) 全国高齢者等終身サポート事業者協会 理事長)
法律 三上 早紀さん((弁) 東京パブリック法律事務所 副所長兼事務局長)
社協 小林 純子さん((社福) 豊島区民社会福祉協議会地域福祉課長)
榎本さんはケアマネジャーのシャドウワークに触れ、利用者の身寄りがないために本来業務を超えた対応をしており限界が来ていること、その人のキーパーソンを見つける社会システムの構築が求められていると話します。局さんからは、身寄りのない方の受診や入院を断らないとしながらも、特に意思決定支援が困難な方は本人の意思を推測して対応をせざるを得ない難しさがある現状、そのためにまだ元気なうちから今後の生き方を考えていけるきっかけをつくれたらという提案がありました。日々現場で“身寄り問題”に対峙する2名の発言をふまえ、黒澤さんからは自分たちのような事業者がいることで切れ目のない支援が可能になること、監督機能を整備し信頼してもらいながら関係者と役割分担をしていきたいという発言がありました。三上さんは弁護士の立場から、現在の成年後見制度の改正案*にも言及しながら支え続けられるつながりをどう地域でつくれるか、関係者とのネットワークが受け皿になれたらと話します。小林さんからは社協で実施する終活に関する事業の重要性と継続するための課題があること、さまざまな関係機関をつなげていくことも社協の役割のひとつと考えているという話がありました。最後に、「単身化社会における地域での取組みについて大事なポイントは?」という冨永さんからの投げかけに対し、次のようなキーワードが出されました(一部抜粋)。
*今後のことを当たり前に話せるように
*自分でもできることがあると気づく
*地域に暮らす人として互いに出番を
*医療・福祉に最後まで関われる地域を豊島で
パネリストからの報告を受けて、沢村さんからは「ルールや制度が整備されるまでは混沌とするでしょうが、いろいろな意見があるのは悪いことではないです。権利擁護や意思決定支援という視点を忘れずにしたいですね。行政や社協が音頭をとりつつ、地域とともにサポート体制を考えていけたら」とコメントがありました。最後に冨永さんから、「身寄りがあることが前提の社会のしくみを変えることが喫緊の課題です。今日をきっかけに“身寄り問題”を各地域で受け止め、自分たちの問題だと思えるよう取組みをすすめていきましょう」というまとめがありました。終了後は名刺交換の時間を設け、本フォーラムを受けて参加者同士が闊達に意見交換をする姿が見られました。
今回は“高齢者の身寄り問題” がメインテーマでしたが、沢村さんの講演にあるとおり誰しもに関わる問題です。 東社協では、各部室や種別部会等で2026年度に“身寄り問題”にどう取り組んでいけるか検討をすすめています。 東社協のネットワークを活かし、“身寄り”の有無にかかわらず、誰もが自分らしく安心して暮らせる地域社会を共に創り出していきたいと考えます。
*それぞれの立場や業務において、“身寄り”に関して今後取り組もう、地域で取り組んでいけたらということ(参加者アンケートより)*
◎ 一事業所・一個人ですべての個別ニーズに対応することは不可能、どうやってスムーズに支援をつなげていくか考えたい(区民後見人・生活支援員)
◎ 訪問看護の利用者に地域の資源を紹介したり、先を見据えた支援ができるよう情報提供をしたりしたい(医療関係者)
◎ 後見制度につながれない高齢者や障害者と制度をつなげられるよう、ケアマネジャー等の専門職との連携を深めたい(法律の専門職)
◎ 費用面でもさまざまな支援があると知ったので活用したい(介護・福祉関係者)
◎ 信託会社として、終活+信託でできることがあると感じる。社協と連携していきたい(金融機関)








