
市川 一宏先生
ルーテル学院大学名誉教授
東社協総合企画委員会委員長※
※ 総合企画委員会…東社協会長が諮問機関として政策提言・
広報等の機能を総合的に発揮するために設置
あらまし
- “ 身寄り”の問題は、今や高齢期に限らない大きな問題となっています。今号からの連載では“ 身寄り”の有無にかかわらず、自分らしく安心して暮らせる地域社会を共につくるために、「身寄りのない人」の現状・背景と課題、そして今後必要とされる取り組みについて考えます。 東社協総合企画委員会では昨年度、身寄りの問題をテーマに提案を行いました。その内容について今号では、 東社協総合企画委員会の市川一宏委員長に寄稿いただきます。
総合企画委員会からの“ 協働” による取組みの提案『“ 身寄り” 問題への取組み』(令和7 年11 月26 日)が目指したいことを申し上げたいと思います。
1.どうして、今、身寄り問題なのでしょうか。
2040年には65歳以上世帯に占める単独世帯は半数を超え、以降増加することが予想され、高齢により、生活する能力は次第に衰えていく一方、家族の扶養能力が低下しています。また、厚生労働省の調査によると、2023 年度に身寄りがなく自治体が火葬などを行った引き取り手のないご遺体は、全国で約4万2,000 人に上り、単身世帯の増加にともない増えていくことが予想されています。
老いることは、誰もが直面することで、自分らしく生きたいと葛藤し、人間としての誇りを生きる糧とし、安心できる心の拠り所をもって、老いの坂を一歩一歩登っていくことは、それぞれに与えられた権利です。そのため、家族がいない場合においては、日常生活支援、身元保証、死後事務というサービスが必要となります。
なお、高齢者の問題について述べましたが、身寄り問題は高齢期だけのものではありません。
2.そもそも“ 身寄り”問題とは何ですか?
本提案は、“ 身寄り” 問題を、高齢期だけの問題でなく、知的障害のある方の親亡き後の問題や、虐待等により親を頼ることができない子ども・若者の問題、家族による暴力から逃れている単身女性の問題と考えています。すなわち生まれてから一生を終えるまでの人生の各段階で起こった生活を揺るがすような困難に直面しても、孤立することなく問題を解決できる社会、“身寄り” の有無を問わない社会づくりをめざします。言葉をかえれば、子どもが生まれて「おめでとう」と言われ、そして自分が亡くなる時に世話になった方々へ「ありがとう」と言う人生をおくることができる社会を目指したいのです。
3.“ 身寄り” 問題への取組みとは?
このような状況に対応し、厚生労働省社会保障審議会・福祉部会は、頼れる身寄りがいない高齢者等への対応、成年後見制度の見直しへの対応について検討し、新たな事業の創設を報告書にまとめ、これを受けて社会福祉法等の一部を改正する法律案が国会に提出されています。
また、東京都では、区市町村を実施主体とした単身高齢者等の総合相談支援事業が開始されています。
そもそも、 東社協は、区市町村社協、高齢者福祉施設協議会、身体障害者福祉部会、知的発達障害部会、保育部会、児童部会等の19の業種別部会、東京都民生委員児童委員連合会等の幅広い関係者で構成されており、本提案の発表後、複数の部会や委員会で課題共有がなされ、取組が検討されています。今までに実績を含め、討議されていることを、多くの部会等の関係者が委員となっている 東社協総合企画委員会のテーブルに挙げて検討され、合意がなされ、協働した支援となることを願っています。
4.私が期待していること
東京都内には、62 の区市町村があり、人口も世田谷区の約950,000 人から、1,000 人未満の村まで多様です。また借家に住む住民の割合も高く、住民の流動性が高いことから、地縁に基づく人と人のつながりが薄く、コミュニティ形成が難しいと指摘されています。他方、大学、企業、医療機関、社会福祉施設、ボランティア、NPO 等の数は多く、今回の“ 身寄り”問題に関わる法律の専門家、成年後見を担当する社会福祉士等の人材の数が区部で多いという現状もあります。
ですので、今後の取組で留意することは、第一にサービスの利用支援の強化、第二に多様な関係者や地域とのネットワークの中で、地域の実状に応じた取組の創出、第三に“ 身寄り”問題に対する共通認識の醸成、第四に住民の多様性の認識と排除しない社会づくりという目標と達成方法の明確化、第五に地域にある「人材」、施設、機関、サービス等の「もの」という資源間の役割を確認し、協働していくこと、を望みます。
一本の木を植えなければ、砂漠の緑化はできないのであって、一つひとつの実践を尊重していきましょう。
『“身寄り”問題へ取組み』詳細はこちらから








