東京都地域公益活動推進協議会
「福祉施設をひらく」から見えた地域公益活動の可能性
NEW 掲載日:2026年6月8日
2026年6月号 NOW

あらまし

  • 東京都地域公益活動推進協議会(以下、協議会)は、設立から今年で10 周年を迎えます。これまで各社会福祉法人がそれぞれの使命と役割を発揮し、連携・協働することで地域の課題に取り組んできました。今号では「滞在ツアー」への実施協力から見えた新しい地域公益活動の広がりについて考えます。

 

「滞在ツアー」への期待

東京都社会福祉協議会(以下、 東社協) の総務部企画担当では、2024年度、2025年度「福祉施設に滞在するBeing Thinking Tour」(以下、滞在ツアー) を行いました。高校生に福祉を身近に感じてもらいたいという思いからはじまったこの取組みは、福祉施設で“ただ、そこにいる” という滞在の時間を過ごし、またコーディネーターとともに同世代の参加者との対話を通して自己と向き合い、その過程で自分以外の他者や福祉について見つめなおす機会になっています(詳細は以下から福祉広報の記事や特設サイトをご覧ください)。

 

福祉広報2025年4月号「福祉施設に滞在するBeing Thinking Tour」の記事はこちら
滞在ツアーに関する特設サイトはこちら

 

今、地域の中では人と人とのつながりの希薄化や、孤立・孤独の問題が大きな課題となっています。東京都内でも、これらの課題に対する地域公益活動の一環として、「居場所」づくりや、参加支援の取組みが広がっており、協議会としては、引き続きその活動を推進していくことをめざしています。一方で、若い世代との接点や、多様な主体との連携や協働といった活動の広がりに課題を抱えていました。施設単独の取組みだけではない、幅広い主体を巻き込んだ実践が求められています。

 

昨年度、協議会の幹事会にて滞在ツアーの報告を受ける機会がありました。幹事委員より「福祉施設をひらく手法として新たな視点であり、接点を持ちづらい高校生が福祉に触れるきっかけになるのでは」という期待が寄せられました。そこで、協議会としてもこの取組みをともにすすめることとしました。

 

幹事委員が所属する施設を中心に、昨年12 月には東久留米市の高齢者施設「シャローム東久留米(特別養護老人ホーム)/シャローム南沢(デイサービスセンター)」、1月には日野市の地域ネットワークとして障害者施設3施設(「工房夢ふうせん/工房夢ふうせんアネックス」(知的)、「多摩療護園」(身体)、「光の家栄光園/光の家新生園」(身体))で滞在ツアーを実施。計10名の高校生が参加しました。

 

また、3月には、協議会主催のテーマ別研修会を開催し、滞在ツアーの報告を行いました。福祉施設や社協職員に限らず広く参加を呼びかけ、当日は教育関係者やアート・デザイン関係者らが集いました。写真展示を見たり滞在ツアーに関わった方々からの実践報告を受け、参加者は“滞在” をキーワードに福祉施設をひらいていくことの面白さや、その効果について多くの気づきを得ました。さらにグループワークでは「ただ、そこにいる」について思考を巡らせるとともに、普段の業務や福祉観を省みる時間を過ごしました。参加者からは「福祉が特別な場所ではなく、地域の日常の一部になり、施設が地域の居場所になる可能性を感じることができた」といった声も挙がり、本研修会を通じて、福祉施設をひらいていくことの意義を共有できる貴重な時間となりました。協議会としては、滞在ツアー関係者や研修会の参加者と一緒にこの経験を共有できたことを、地域公益活動の広がりの大きな一歩だととらえています。

 

東久留米での一コマ

 

日野でのふりかえり

 

* 研修会参加者の感想

・「ただいる」ということは難しくもあり、ついつい現場の職員は高校生に話しかけてしまうと感じた。第三者のコーディネーターの存在は高校生にとって大きかったと思うため、有意義なツアーだと感じた。
・ 職種を超えた対話を通じて、福祉の本質について大いに学ぶことができた。異なるバックグラウンドでも根幹は一緒であり、今日の対話こそが福祉の話だと強く共感した。
・ 高校生の感性の豊かさを引き出すこのような取組みは大変重要だと思う。社会的格差がすすむ中、地域で「ふくし」を考える礎につながると思う。
・ 高校生が自分の言葉で交流しあう、文字にして対面で語りあうパワーがあること、すごく感動した。「ただいる」って何だろう、を考えて共有するワークは自分の意見を見つめるにも、他の人の意見をきくにおいてもとっても大切な時間となった。

テーマ別研修会についてはこちら

 

研修会のようす

 

地域公益活動のひろがりへのヒント

“滞在” という切りで福祉施設をひらくことの効果を、地域公益活動の観点からとらえ直してみます。社会福祉法第24条第2項では、「日常生活又は社会生活上の支援を必要とする者に対して、無料又は低額な料金で、福祉サービスを積極的に提供するよう努めなければならない」と地域における公益的な取組みを実施する責務を規定しています。そして、2018年の厚生労働省通知により地域住民の参加や協働の場の創出を通じて間接的に社会福祉の向上に資する取組みで、地域に効果が及ぶものについても「地域における公益的な取組」に該当すると解釈されています。協議会では、閉鎖的だと感じられてしまう福祉施設を地域にひらき知ってもらうこと、高校生の「ただ、そこにいること」を受け入れること(高校生の居場所をつくること) も、地域公益活動の一環であると認識することができました。このことは、今後の地域公益活動だけでなく、住民参加や協働の在り方を考える上で、非常に重要な要素であると考えられます。この経験から、協議会として改めて地域公益活動を続けることの意義と、地域住民への対象拡大など新しいモデルや広がりづくりのヒントを得られました。

 

そして、福祉施設で“滞在” という時間を過ごした高校生を受け入れた職員は、「私たち福祉関係者が揺さぶられた」と話します。普段の自身の業務を振り返り、高校生の言葉にエンパワーされる職員もいました。「福祉って明るい、あったかい」、「障害を持つ人も自分たちと変わらない」、「職員の気遣いが感じられた」など高校生から出た言葉は、まさに彼・彼女らに伝えたいと思っていたことが、真に伝わった結果だといえるのではないでしょうか。

 

「施設をひらいていくこと」のこれから

協議会は1,000を超える社会福祉法人が参画し、オール東京による地域公益活動を推進しています。東京都内では99%の社会福祉法人が地域公益活動の実施報告*をしており、多様な取組みが広がっています。協議会の第2期中期計画(令和7年度~9年度) においては、「これまでの活動を土台とし、オール東京による地域公益活動がより充実している」ことをめざしています。地域公益活動の取組みがすすむことで、社会福祉法人の本来の事業の充実にもつなげていきたいと考えています。


福祉施設には、高校生をはじめ地域においてさまざまな方を受け入れることのできる土壌が備わっています。ひらかれた施設で、地域とともに活動したいことを「伝える」ためのプロセスを大切にすることが重要です。一方で、施設の特性によっては外部にひらくことが容易ではない場合もあります。そのため、単独の施設だけで完結するのではなく、地域全体で支え合いながらすすめていく視点が必要です。さらに、地域にどのようなニーズがあるのか、どのような人とのつながりが求められているのかを丁寧にとらえながら、それぞれの地域に合った形を考えていくことも求められています。

 

協議会としてはこの経験を大切に、孤立しがちな方に対する居場所づくりや、地域での活動を希望する方への参加支援を推進する取組みに力を注ぎたいと考えています。

 

* 都内社会福祉法人の地域における公益的な取組の実施報告状況(令和7年4月1日時点)/東京都福祉局

現在協議会では、「福祉施設滞在ツアー費用補助事業」を実施しています(7月22日締切)。

ともに取り組めることを楽しみにしています。

取材先
名称
東京都地域公益活動推進協議会
概要
東京都地域公益活動推進協議会
https://tokyo-koueki.jp/
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