
国立市社協が運営するカフェ
国立市社会福祉協議会(以下、社協)内にある「喫茶わかば」は、1992年から続く地域住民の憩いの場です。2021年には内装を一新し、挽きたてコーヒーやパティシエが手掛けたお菓子、軽食などメニューも充実させ、リニューアルしました。
「喫茶わかば」を運営する国立市社協地域福祉課職員の飯田公也さんは「当初の利用者は、社協があるくにたち福祉会館に来たお客さんだけという限定的なカフェだったのですが、もっとたくさんの人たちに利用してほしいという思いからリニューアルを決めました」と背景を話します。リニューアルにあたり、営業をしながらその合間にさまざまなワークショップを行い、スタッフと地域の人たちが協力して作り上げていきました。たとえば、現在使われているお店のカウンターは地域の木工職人が、コーヒーカップのソーサーは陶芸家がそれぞれワークショップの一環でスタッフと地域の人たちと一緒に手がけたもの。壁一面に並んだ飾りは、近隣の福祉関連施設に通う方たちと一緒にアレンジしました。

「喫茶わかば」は働きづらさを抱えた人たちを実習生として受け入れる職場体験の場でもあります。市内に住んでいる人か、市内の施設を利用していれば、障害者手帳の有無や年齢に限らず広く受け入れています。現在、7名の実習生が働いています。
リニューアルを機に「喫茶わかば」の担当職員になったパティシエの黒田千遥さんは「さまざまな事情や背景がある方が働いていますが、ここでは一従業員として、常にフラットな関係性を心がけています。実習生にも職員にも『一緒に働く仲間だから、助け合おう』と言いながらみんなでカフェを運営しています」と話します。
実習生はそれぞれできることや役割が異なりますが、スタッフが細かく指示をするのではなく、なるべく一人でできるような環境づくりに注力しています。現在、提供しているお菓子は焼き上げから仕上げまでを実習生がほぼ一人で行っていますが、実習生が一連の流れで作ることができるよう、黒田さんがレシピに工夫を加えたそうです。
一緒に働いているからこそ実感する変化
黒田さんは「ある実習生は、初めは全くといっていいほど言葉が出ませんでした。接客よりキッチンのお仕事がいいかなと思ってお菓子作りに誘ってみたら、『楽しい』と言って取り組んでくれて。そこから自分がつくったお菓子がカフェに並ぶことにやりがいを感じ、自分から接客もやりたいと願い出てくれて、今ではお客様との会話も自然とできるようになりました」と、実習生の変化について話します。たとえば、実習生がていねいに仕上げたお菓子類は毎日完売するほど人気で、予約をして買い求める人もいるのだとか。

カフェの仕事は、洗い物やオーダーとり、食事作り、お客様とのコミュニケーションなど多種多様です。さまざまな人が行き交うカフェはまさに社会の縮図。その中で自分のペースで少しずつでもチャレンジできる環境と、一人ひとりのペースを受け入れる柔軟な体制はここならでは。「実習生がこの先どういう道に進んでも、ここでの経験はきっと活きてくる。そう実感しています」と黒田さんは言います。
地域の拠り所のような場所になりたい
喫茶わかばでは、飲み物 1杯から“名もなき誰か”に寄附できるサスペンデッドコーヒー(※)のしくみを取り入れています。黒田さんは「チケット1枚でコーヒー1杯を寄附できるしくみで、チケットを買ったら入口横のボードに掛けておくんです。目を留めてくださった方が利用したり、あるいは『自分も』と寄附をしてくれたり。そういう善意を分かち合うことで、ここを訪れた人たちの心がちょっとでも温かくなれたら」と話します。
※イタリア・ナポリで生まれた、1杯のコーヒーを見知らぬ誰かのために前払いするという、助け合いの伝統的な習慣

最後に飯田さんは「誰でも受け入れる温かな雰囲気だからか、会話の中で日々の困りごとをこぼす方も。自分がCSW をしていたからこそ、そういう何気ない会話の中から日常的な困り事や悩み事をポロっと話せる環境って貴重だなと感じます。地域の人たちの拠り所となるよう、これからも続けていきたい」と話します。黒田さんは「ここでいろいろな方が交わり、集うことに価値がある。もっとたくさんの人に知ってもらえるように発信していきたいです」と語ります。
「喫茶わかば」はこれからも、地域の人たちの“止まり木”として、訪れた人たちを温かく迎え入れます。
喫茶わかば
- 場所: 国立市富士見台2-38-5
営業時間:11時30分~16時(ラストオーダー15時30分) まで(火・土・日曜、祝日定休)
https://www.kunitachi-csw.tokyo/cafe_wakaba/








