
特定非営利活動法人キーアセット 東京国分寺事務所
写真(左から) 里親リクルーター 加藤 薫さん
前自立支援相談員 久保 志保さん
区市町村連携コーディネーター 木島 広明さん
あらまし
- 「身寄り」とは、家族や血縁の有無によるものだけではありません。困ったときに気に掛けてくれる人、安心して戻れる場所、いつでも相談できると思える関係も、その人にとっての「身寄り」になります。今回は、フォスタリング機関(*1)である特定非営利活動法人キーアセットに、里親家庭からの措置解除後に若者が直面する孤立の実態や、若者を支えるために地域や社会に期待される役割について、お話を伺いました。
「誰かを頼る」が苦手な若者たち
里親家庭からの措置解除後、多くの若者は進学や就職を機に一人暮らしを始めます。しかし、その中には「一人で夜を過ごすことに耐えられない」など戸惑う若者が少なくないそうです。生活に困窮すれば公的なセーフティネットにつながることはできます。しかし、制度だけでは埋められない「寂しさ」や「孤立感」が残るケースは少なくありません。「身寄りがあるかないかというより、彼らには『人を頼ることが苦手』という傾向があると感じている」と前自立支援相談員の久保志保さんは話します。また、幼い頃から里親家庭で育った場合と、高校生など高年齢で委託された場合とでは、「元里親への頼り方」にも差が出てくるといいます。幼い頃から里親家庭で生活した子どもは、里帰りをするような感覚で里親家庭を訪ねることができます。一方、高年齢で委託された子どもの場合、そのように頼ることができず、一人で抱え込んでしまうことがあります。
キーアセットでは、学校の学生支援センターやアフターケア事業所、障害を持っている方の場合は、障害福祉サービスなど、地域のさまざまな社会資源につないでいます。「若者たちには、“信頼できる大人=地域の応援団を一人でも増やしてほしい”と伝えている」と久保さんはいいます。
また、本人との適切な距離感も一人ひとり異なります。「少し心配な子には、ややしつこいくらい連絡することもある。返信がなくても、『あなたのことを気に掛けている人がいる』というメッセージになるため」と話します。一方で、本人がフォスタリング機関からの支援や関わりを望まないこともあります。そのような場合でも、里親や関係機関と連携しながら、いつでもつながれる関係を維持できるよう意識しています。
若者を支える「地域の応援団」を増やす
措置解除後の若者は、経験不足ゆえに生きづらさを感じるケースもあります。キーアセットでは、こども家庭センターや社協、企業、商業施設など、地域のさまざまな人や団体とつながりながら、その地域の社会資源を生かした支援の形を模索しています。里親リクルーターの加藤薫さんは「例えば、商業施設で販売体験を行ったり、子ども食堂でボランティア活動をするなど、若者が地域の人とつながる機会を創出している。そうした経験の積み重ねが社会とのつながりを育み、“自分も誰かの役に立てる”という自信になる」と話します。
一方で、支援の場があっても、そこにつながること自体が難しいこともあります。例えば、フードバンクから「取りに来てくれれば提供できる」と言われても、外に出ること自体が難しい場合もあります。そのため、支援につなぐだけではなく、その若者がどのような背景を抱えているのかを地域の人にも知ってもらい、受け止めてもらえる関係を少しずつ築いていくことが大切だといいます。
フォスタリング機関で関わることができるアフターケアはおおむね10年までといわれています。その間にめざしているのは、支援機関だけに頼るのではなく、地域の中に「困ったら相談できる人」や「気に掛けてくれる人」を増やしていくことです。久保さんは、「頼ることも一つの力です。その練習を重ねながら、自分の応援団を少しずつ増やしていってほしい」と話します。
「身寄り」を地域の中で育むために
里親家庭で育った若者がめざしてほしいのは、「自分一人で生きていくこと」ではなく、困ったときに誰かを頼れるようになることです。そのためには、福祉や行政だけでなく、学校や企業、地域住民など、一人ひとりが少しだけ他者に関心を寄せることが大切です。そうしたつながりを一つひとつ育んでいくことが、若者が孤立しない地域や社会につながっていくのではないでしょうか。
*1 フォスタリング機関:東京都から委託を受け、里親制度の普及・啓発や里親登録前の相談・研修、子どもと里親のマッチング、委託中の支援、措置解除後のアフターケアまで、子どもと里親を継続的に支援する機関
東京国分寺事務所
https://kodairafostering-kiiasetto.jp/














