(左から)(社福)大三島育徳会 地域公益活動室長 坂井 祐さん
副理事長/統括副本部長兼特別養護老人ホーム博水の郷施設長 田中 美佐さん
法人事務部 副部長 中田 真子さん
あらまし
- 2021年9月に東京都内の社会福祉法人として2番目に居住支援法人の認定を受けた大三島育徳会。認定から約4年、コロナ禍もあり当初思い描いたようにはすすまないこともありながら、それでも居住支援を続ける矜持を伺いました。
地域公益活動から見えた住まい支援の必要性
(社福)大三島育徳会が居住支援を開始したきっかけは、約10年前から取り組んできた地域公益活動でした。法人の統括本部内に設けられた『地域公益活動室』が中心となって取組みを推進しています。「私たちの法人は『地域に根ざした社会福祉の実践』を理念に掲げ、中間的就労をはじめ要保護児童の居場所づくりや食支援などさまざまな支援に取り組んできました。活動を積み重ねる中で、支援をすすめるにはまず『住まいを確保することが欠かせない』と感じました。世田谷区は空き物件の数も多く、その物件を活用して住まいの支援を行いたいと思いました」と坂井祐さんは話します。また、世田谷区社会福祉法人地域公益活動協議会の取組みとして住まいの支援を行うことを参加法人で話し合い、大三島育徳会が居住支援法人の認定を受けることとなりました。
相談を受ける中で把握した現状とは
大三島育徳会では法人が物件を借り上げ、借主にサブリースするしくみをとっています。これにより貸主にはきちんと家賃が支払われ、借主は法人による見守り等の支援を受けられ、安定した住まい支援につながると考えました。しかし、実際に住み替えまで至るケースは限られます。その背景にある現状として、田中美佐さんは次のように語ります。「実際に住むのは住宅確保要配慮者であることから、それを理由に不動産事業者やオーナーに断られることもあります。一方、借主側も立地や金額面が希望に沿わないなどの理由で断ることもあります。また、もともと空き物件を活用できないかという思いで始めた居住支援ですが、実は入居者を募集している空き物件はそれほど多くなく、生活保護制度の住宅扶助の金額内で借りられる物件が少ないことなども一因として考えられます」。大三島育徳会では住み替え後も見守りや支援を続けるために、居住支援を担う法人本部がある「特別養護老人ホーム博水の郷」周辺の、世田谷区砧(きぬた)・玉川地域にある物件を対象としています。長年暮らした場所への愛着がある方、環境が変わることが負担になる方にとっては、慣れ親しんだ地域からの住み替えを躊躇されるのかもしれません。
国や東京都による広報の効果もあり、専用の電話から相談を受けるほか、地域包括支援センターから相談が寄せられるなど問合せは年々増えているそう。「生活が困窮し家賃の支払いが滞っている、建物の建て替えにより退去を迫られているので住み替えたいという相談があります。しかし最終的に住み替えに至らなかった相談者とはつながり続けることは難しく、どうしたのかなと気になっています」と話す皆さんの言葉からは、住まいの支援と福祉的な支援が不可分であることが伺えます。住み替えに至らなくても、相談者が抱える悩みや困りごとに寄り添い、解決につなげるしくみが必要とされています。
社会福祉法人としての居住支援のこれから
実際に借り上げ物件に住み替えをされた方とは定期的に連絡をとり、食料品支援も行うなどきめ細やかなかかわりを続けています。相談者や入居者への対応には多くの労力がかかりますが、「やはり住まいは、あらゆる支援を続けるためのセーフティネットです。住まい支援から関わり始め、相談者のさまざまなニーズに気づき、必要な福祉サービスにつなげていくことで、その人らしい生活のための切れ目のない支援ができると考えています。併せて、近隣の社会福祉法人と協力することで相談者が住み替えた後の生活支援の体制づくりもすすめていきたいと思っています」と坂井さんは話します。
これからも住民が地域で暮らしていくために居住支援に取り組むこと。そういった支援が地域からの信頼につながってほしいという思いで、大三島育徳会の居住支援は続いていきます。
https://www.oomishima.jp/