(社福)村山苑 福祉事業センター
障害のある方の“主体的な働き方の選択”
NEW 掲載日:2026年8月21日
2026年8月号 NOW

あらまし

  • 障害者総合支援法の一部改正(2022年)に伴い、新たな障害福祉サービスとして「就労選択支援」が2025年10月から実施されています。この制度の概要をふまえた上で、都内の事例を通じて“障害のある人もない人もともに働く社会”の実現について考えます。

 

「就労選択支援」の創設まで

就労選択支援は、就労アセスメント*1 の手法を活用して障害者本人が就労先や働き方についてよりよい選択ができるよう支援するものです。就労選択支援の創設は、障害者雇用促進法の一部改正(2019 年) にかかる法案審議における附帯決議がきっかけでした。ここで“雇用施策と福祉施策の一体的展開”が盛り込まれ、2020年には「障害者雇用・福祉施策の連携強化に関する検討会」*2 が設置されました。検討会では、現状の課題として


● 就労系障害福祉サービスの利用希望者の就労能力や適性を評価し、具体的な支援に活用する手法等が確立されていないこと
● 就労継続支援の利用が始まると固定化されやすいこと
● 本人の立場に立ち、次のステップを促す支援者がいるかどうかで、職業生活、人生が大きく左右されること


などがあげられました。就労選択支援は、障害者本人が自身の働き方を考えるサポートをするとともに、就労継続支援の利用者へは、就労移行支援の利用や一般就労等への選択の機会を適切に提供することをめざしています。具体的には、本人への情報提供等をしながら、【①作業場面を活用した状況把握(アセスメント)→②多機関連携によるケース会議→③アセスメントシートの作成→④事業者等との連絡調整】というフローですすめる想定です(表参照/標準1か月)。

 

*1 就労系障害福祉サービスの事業所が行う、利用意向がある障害者との協同による就労ニーズの把握や能力・適性の評価および就労開始後の配慮事項等の整理
*2 「障害者雇用・福祉施策の連携強化に関する検討会報告書(所管:厚生労働省)」がまとめられています

 

 

表:厚生労働省「就労選択支援に関する案内用リーフレット」に基づき 東社協作成


福祉事業センターの取組み

(社福)村山苑の福祉事業センターは、2026年4月1日から指定就労選択支援事業所として利用者を受け入れています。センター長の臼田誠寿さんと就労移行支援のサービス管理責任者である日比野渉さんは、就労選択支援事業所の指定を受けるまでの経緯を次のように話します。「指定を受けるに至った理由は大きく2点あります。

 

1点目は、従来の就労アセスメントに対する課題意識です。東村山市所定のアセスメントシートは作業場面での様子を客観的かつ多角的に把握し、本人の強みや必要な配慮、希望する働き方を整理するうえでは有用でした。しかし、アセスメント結果を今後の選択肢の検討や支援方針に十分つなぎきれないこともありました。就労継続支援B型を希望する方に対しては、『本人が希望しているので』ということで、本人希望を最優先としたアセスメント結果を出すことが多く、就労継続支援B型以外の就労選択になることはまれでした」。従来の就労アセスメントが法令上明確に位置づけられていなかったこともあり、支援の中で継続的に活用されにくいという制度上の課題も感じていたそうです。

 

写真 アセスメントで利用するための訓練・作業室

 

2点目として、施設がある東村山市主導で就労選択支援に向けた動きがあったこともきっかけに。「就労支援における現状把握のため市内の就労移行支援事業所を対象にした連携会議が開催された以降、東村山市障害者自立支援協議会*3 の中の就労支援部会・相談支援部会等との連携が構築され、地域全体で就労選択支援の実施のため前向きにすすめていく機運が高まっていきました。法人としても、地域の障害福祉サービスを担うものとして取り組んでいこうと当初より話をしていました。こうした現状に後押しされ、市内初の就労選択支援事業所として運営を開始しました」と臼田さんはいいます。

 

なお、就労選択支援は特別支援学校等*4 のキャリア教育や進路指導においても有用であると考えられるため、在学者は1 年次から利用可能であり、在学中に複数回実施することも可能です。「従来はすでに進路が決まっていた高校3年生に対して、卒業前に“確認の手続き” として就労アセスメントを行っていた一面もありました。今後はどの時期に就労選択支援を実施するのかという点や、何よりも本人や家族の意向、そして学校や行政、障害福祉サービス事業所がそれぞれどう捉えて、この制度を有効活用していくのか、それぞれの立場は違えど目線や方向性をそろえていくことが大切だと思います」と今後の展開について日比野さんはいいます。

 


これからを見据えて

指定就労選択支援事業所として就労アセスメントを開始してはいますが、まだまだ福祉事業センターも関係機関も手探りとのこと。密に関わる計画相談支援事業所をはじめ、引き続き利用者に対しても、関係機関に対しても就労選択支援の説明や周知を続けていく必要性を2人は感じています。

 

最後に、今後の展望や期待、社会福祉法人としての考えを伺いました。「就労選択支援の目的は、本人と協同で強みや特性、可能性を把握し、納得して働き方を選べるよう伴走型で支援するということだと思います。そういった意味では、これまで活用法に課題のあった就労アセスメントが法令上明記されたことは一歩前進ですし、支援サービスの中でアセスメントを活用するという視点を持つことが重要です。また、利益優先の“囲い込み” が発生することがないよう、当施設としては地域とのつながりの中で適切な就労選択支援をする役割があると考えています。事業を継続するためにどう回していくかという視点は必要ですが、目の前の利益ではなく、社会福祉法人の責務として当施設や地域の資源を生かし、一人ひとりの強みを引き出し、可能性を広げる“真の自己実現” に尽力したいです」と、臼田さんと日比野さんは口をそろえていいます。

 

就労選択支援は一般就労の可否を判断するためでも、就労系障害福祉サービスの振り分けをするためでもありません。すべての段階で利用者本人の参加を重視し、本人との協同による就労先や働き方の意思決定を支援するサービスであるという就労選択支援の理念を理解した上で実施することで、本人の特性や意向等に応じた就労の選択を支援する制度に育っていくことが望まれます。

 

*3  協議会 障害者等への支援の体制の整備を図るために必要な事項について情報共有等を行う(障害者総合支援法第89 条の3)
*4  特別支援学校高等部、高等学校、中等教育学校の後期課程

 

就労選択支援実施マニュアル(厚生労働省)はこちら

 

 制度解説
 就労継続支援…一般企業等への就労が難しい人に働く場を提供するとともに、知識および能力の向

 上のために必要な訓練を行う(A 型=雇用型、B 型=非雇用型)。


 就労移行支援…一般企業等への就労を希望する人に、一定期間、就労に必要な知識および能力の向

 上のために必要な訓練を行う。

 

取材先
名称
(社福)村山苑 福祉事業センター
概要
(社福)村山苑
https://www.murayamaen.or.jp/
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