公益社団法人 東京社会福祉士会
ソーシャルワークの専門職として社会課題に取り組む
掲載日:2025年8月22日
令和7~11(2025~2029)年度東社協中期計画P39~43

今後の成年後見のあり方を見据えた社協等への期待

本会のセンター活動の一つに、成年後見制度の利用や申立てに関する相談や、成年後見人等候補者の紹介などを行う「権利擁護センターぱあとなあ東京」があります。「成年後見制度利用促進法(成年後見制度の利用の促進に関する法律)」では、成年後見人の大きな2つの役割である「財産管理」と「身上保護」のうち、「身上保護」の比重が高く表現されています。成年後見制度は2000年にスタートし、その前身である禁治産・準禁治産制度では法律家が担い手の中心でしたが、権利擁護の専門職として社会福祉士会が組織を挙げて参入し、長い年月をかけて対象者の生活と権利を護ってきたという自負を持っています。また、元来、権利擁護支援を専門性として実践していた社会福祉士が成年後見制度に関わることで、“権利擁護支援”という考えを特別なことではなく暮らしの場面に意識づけられたのではないかと思っています。2020年10月に、厚生労働省から「意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン」が出されましたが、こうした「意思決定支援」にかかる検討においても、学識者の方に加え、(公社)日本社会福祉士会の担った役割は大きいと考えています。
 
現在、成年後見制度利用促進法のもと、成年後見制度利用促進基本計画により、市区町村には権利擁護支援の地域連携ネットワークとして「中核機関」等の設置が求められています。東京都では、これより以前の2005年度から、東京都独自の施策として「東京都成年後見活用あんしん生活創造事業」が実施され、「成年後見制度推進機関(以下、「推進機関」)」が、社会福祉協議会等(以下、「社協等」)に設置されていました。推進機関では、地域での権利擁護に関する研修を行うなど、「中核機関」の役割の一部を担っており、各地域において社会福祉士も専門職の一職種として、弁護士や司法書士らと同様、研修の講師や運営委員会の委員、後見人連絡会や受任調整会議などの場面で関わっています。現場の第一線での取組みをすすめているのは社協等の職員であり、その方たちが声を上げて、事実上、その地域の権利擁護の底上げをしていく役割を担っています。そのため、本会もソーシャルワークの専門職である職能団体として、成年後見制度の利用支援に留まらず、社協等と一緒に地域づくりの一環として地域における権利擁護支援のしくみづくりをすすめていくことがとても重要だと考えています。
  

現在、厚生労働省では、2026年の民法改正を視野に、成年後見制度の改正に向け動き出しています。現在の成年後見制度は終身利用を想定したしくみですが、今後、成年後見制度が、他の支援による対応の可能性もふまえ、本人にとって適切な時機に必要な範囲・期間で利用できるなどの“有期”になった場合には、制度利用の動機となった課題(多くは遺産相続などの財産管理)が終了した後、本人の支援を地域にどうやって移行・戻していけるかが課題です。その際の担い手となる人材が地域の中にいるのか、また、地域の社協等がそうした支援のしくみをつくっていけるのか、本会を始め、全国の各社会福祉士会としても、これまで以上にさまざまな面でサポートし、日本全国どこでも同じ権利擁護支援を利用できるようにしていく必要があると考えています。
 
社協等で実施している「地域福祉権利擁護事業(東京における事業名称/国では「日常生活自立支援事業」)」についても、東京都では体制上の問題もあり、利用者が飽和状況になっていて、新たな相談に迅速に対応することが難しい面があります。また、相続が発生した時や緊急的なアプローチが必要な時など、一時的に成年後見制度が使えて、被後見人の課題が落ち着いてきたら、専門職が後見人という立場で支援し続けなくてもよいと思う事案が実際にあります。そういった事案に対して、さまざまな選択肢を地域の中でいかに準備していけるのかということではないかと考えます。

 

権利擁護や意思決定の裾野を広げるという意味合いで、国の専門家会議では「持続可能な権利擁護支援モデル事業」についての検討がすすんでいます。その1つに、「簡易な金銭管理等を通じ、地域生活における意思決定を支援するしくみ」があります。日常的な金銭管理を介護保険サービス事業者や障害福祉サービス事業者等が担い、それを市民後見人等養成研修の修了者や当事者団体の人等による意思決定サポーターが見守り、意思決定を支援し、更にそれらを専門職団体や福祉関係団体が監督するというスキームです。他にも2つのモデル事業が実施されていましたが、これらと併せて第二期計画の中間年度である2024年度に検証が行われています。いずれこのようなしくみが形になって、各地域に降りてくると思いますが、社会福祉士会もそういった地域のしくみを支える中で専門性を活かし、協力していくべきだと考えています。

 

身寄りのない方の支援や身元保証等の課題

身元保証や葬儀等の死後に生じる事務手続きを代行するサービスの中には、不安な運用の民間サービスも見受けられ、これまで監督省庁がなかったことは大きな問題でした。2024年6月に内閣官房・内閣府ほか関連省庁の連名で「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」が出されるなど、身元保証等をめぐる動きが出て来ていて、東京都でも「単身高齢者等の総合相談支援事業」が予算化されました。

 

都内では、地域福祉権利擁護事業とセットで、身元保証に近い事業を実施している社協もあります。利用者や関係者からは「社協がやってくれたらいいのに」という声が1番大きいのではないかと思われますが、社協で実施する場合には、どうしても利用条件を絞らざるをえないこともあるため、条件に合わない人も多くなると考えます。そのため、身元保証を利用する際の選択肢として、民間サービスの利用を考える方には、情報を見定めるための情報提供やサポートをする必要があると考えます。例えば、有料老人ホームの選び方についてのガイドブック(「あんしん なっとく 有料老人ホームの選び方」)を東京都が発行していますが、どのようなホームがあるかなどはあまり知られていません。高齢者施設にはどのような選択肢があるのかという講座を開くと受講される方も多く、そういった情報提供は今後も必要だと考えます。また、法定後見制度だけでなく、任意後見制度にも課題は多いため、制度全体をブラッシュアップしていく必要があります。特に単身者の多い東京では、さまざまな選択肢の中で、身元保証や死後事務の課題を解決できる、安全に安心して利用できるしくみが必要だと考えます。

 

日本では、アメリカなどの諸外国のように、ライフステージを通じて、個人や家庭を担当するホームロイヤーやフィナンシャルプランナー、ソーシャルワーカーと契約をすることはなく、必要になった時にしか頼まないという文化です。これは、日本では“老いた時には子どもに頼む”という空気感が残っているからだと思います。サポートが必要になった時に、地域や社会に依頼できるようなしくみがあると良いと思いますし、そうしたしくみづくりの一端を地域の社協等が担っているのではないかと考えます。そういう意味でも、社協等に関しては、専門性のレベルを高く保つことをお願いしたいと思いますし、本会も協力したいと考えています。特に権利擁護や成年後見制度など、周辺の法律も含む業務については、難しく誤解も生じやすい部分であることから、社協等の職員が一定の知識や専門性を保てるような人材育成のしくみも大事だと思います。

 

先ほど、成年後見制度が“有期”での利用になるという方向性についてお話ししましたが、課題が落ち着いて、後見人等が外れた方を地域に戻していく時に、地域には支えてくれるプロがいて、そのバックアップがあるんだという、安心して支援に取り組めることが必要だと考えます。どうやったらそのしくみを地域の中につくれるのか、発想を転換して考えていく必要があります。本会の中長期的な展望として、こうした取組みのベースに、地域共生社会の実現が念頭にあります。また、支援はカットイン・カットアウトではなくて、フェードイン・フェードアウト。いつか切れるのではなくて、ちょっとはつながっていて、必要な時には関わりを厚くし、そうでない時には薄くなるような、つかず離れずの伴走型の支援が求められていると考えます。

 

取材先
名称
公益社団法人 東京社会福祉士会
概要
公益社団法人 東京社会福祉士会
https://www.tokyo-csw.org/
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