「伝える→伝わり合う広報プロジェクト」#2
たったひとりのために広報する!?
掲載日:2022年11月4日

 

あらまし

  • 私たち東京都社会福祉協議会では現在、「伝える→伝わり合う広報プロジェクト」として東社協の広報をより良くするための検討を行っています。
  • (詳しくは、「#1伝える→伝わり合う広報プロジェクト始動のはなし」をご覧ください!)
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  • 広報の知識ゼロの担当者が、七転び八起きしながら気づいたこと、学んだこと、失敗談を共有し、社協で広報を担当する方、施設・事業所で広報を担当する方、同じような境遇にいる方とつながるきっかけになればと思い、投稿しています。
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  • #1「伝える→伝わり合う広報プロジェクト」始動のはなし

 

 

こんにちは。「伝える→伝わり合う広報プロジェクト」の担当者イシイです。

めっきり冷えこむ日が続き、冬の入り口が見えはじめた今日この頃。東社協が入っているビルは暖房が入っていないにも関わらず暑く、ときどき排煙窓を開けて新鮮な空気を取り込む作業を行うほどです。「窓は窓でも排煙窓を開けるのか!」と田舎者の私は都会のビルのつくりに衝撃を受けたことを覚えています。

 

さて、各部署からのメンバー13人、広報のプロ吉田知津子さん、そして統括主任と私の16人で動き始めた「伝える→伝わり合う広報プロジェクト」。これまで、それぞれの事業の状況に合わせて職員各自で広報に取り組んできたという背景もあり、東社協メンバーは全員広報初心者です。そのため、まずは「広報とは何なのか」を学ぼうと、吉田さんに広報のキホンのキを教えてもらいました。

 

 

広報はラブレター

 

 

たったひとりのために!?

いま、この連載を読んでくださっているあなたは、広報をするとなったときの対象者をどのように設定したり、想定したりしていますか? 私が担当する広報誌「福祉広報」は「福祉現場で働く職員」「自治体の職員」「教育関係者」「個人」などさまざまな人に届けていて、「福祉に関心のある皆さん」が対象かな、というのが何となくの感覚でした。

 

そんな私(たち)に、吉田さんが教えてくれたのは「広報は、たったひとりの人のためにつくる」ということでした。まさに青天の霹靂です。これまで、何の疑いもなく、くまなく、隅々まで、そして目にした人みんなに誤解なく伝わることが良いと思っていたからです。せっかく作るのだから一人でも多くの人に見てもらいたい。そんな思いとは、真逆の考え方でした。

 

吉田さんは、広報とはラブレターであり、「どうか読んでください」という気持ちで差し出すものなのだといいます。そのように創るからこそ、こちらの思いが伝わり、さらには人の心を動かすこともできるそうです。「福祉に関心のある皆さん」宛て、「地域の皆さん」宛てでは、届け先がふわっとしてしまって受け取る人も自分宛てのラブレターとは認識しづらいのです。「あの人に届けるんだ!」という明確な「あの人」を想像しながら創るからこそ心を動かす広報ができるという話に、「確かに!」と、私の広報マインドは芽が出た感覚でした。

 

実は、この連載でも「たったひとりの人に届ける」ということを考えています。

 

この連載では「たったひとりの人」を、「社協で広報を担当していて、漠然とした課題感を持っているけど、どこから手をつけたらよいか分からないと悩んでいる人」に設定しました。「せっかくやるプロジェクトだから東社協だけじゃなく、外部の団体にも役立ててもらえるようなこともできたらいいね」とアドバイスをもらい、担当者の私と同じような状況にいる人に伝えようと思ったことがきっかけです。

 

早速、吉田さんに伝えると「その人は、男の人? 女の人?」「どんな仕事をしてるの?」「帰ったらどんなテレビを見ると思う?」と予想していなかった質問にフリーズすることに。「なんで帰った後のテレビのことまで考えるんだろう…」とその質問の意味が分からず、とはいえ既に何回も電話をして広報のイロハを教えてもらっている手前、「改めて聴いていいことなのだろうか」と、もごもご歯切れの悪い返事をしていると、察した吉田さんが「その人がどんな人なのか、その人を知らない私が想像できるように教えて」と助け船をだしてくれました。

 

そこでようやく、「『その人』は、どんな生活をしているか、どんなタイミングでこの連載を読むか、どんなことに悩んでいるのか、徹底的に考えるんだ」ということに気づいたのです。改めて、「これまでやってみたことがないことも面白がれるような人」「何回か部署異動を経験していて社協の業務は一定の理解がある人」など、より具体的に想定しました。広報の知識ゼロだった私は、ここまで徹底してその一人に寄り添っていることを知って以来「広報ってすごい……」と、CMや駅のポスター、お菓子の袋など、日頃何気なく目にしていた「広報」の見方も変わりました。

 

共に伝える人を増やしていけたら…

次に教えてもらったのは「伝える先には3層の対象者がいる」ということです。私たちが伝えたいというテーマに対し、「既に関心を持って、知りたい!と強く思っている層」「なんとなく気になるかも?という層」「全然興味がない層」の3つの層があるといいます。確かに、どの層の人に届けたいか、ということを考えると、その伝え方、伝える内容も少しずつ変わってきます。これまで、全ての人に同じように伝えようとしていましたが、「人によってモチベーションもさまざまなのだから、同じように伝わるはずはないし、興味を持ってもらえるポイントも当然異なるじゃないか!」と、ようやく間違った方向をめざして一生懸命走っていたことに気付いたのです。

 

また、人に伝わるときには、必ずしも創り手が発信した広報を「たったひとりの人」が受け取るだけではなく、広報を受取った人が「ねぇねぇ、これ見た?」と身近な人に伝えてくれることで、広がっていくこともあるといいます。そうなることで「全然興味がない層」にも届く可能性があるのです。「全然興味がない層」にとっては、身近な人からの情報が、「あの人がいうならちょっと見てみるか」とモチベーションになるからです。

 

広報が「たったひとりの人」に届き、その心を動かすことができたら、波紋のように、またはビリヤードの球のように、その「たったひとりの人」も私たちと共に伝える人となって、共に広報をすることができてしまうのです。それってとてもすごいことで、地域の人と共に地域を創っていきたいと思っている社協にとってはなくてはならない動きなのではないか、とひとり大発見をしたような気持ちになりました。

 

知れば知るほど、「もっと早く知りたかった!」と思うと同時に、吉田さんがいなかったら、また明後日の方向に一生懸命走りだしていたかもしれない、と忙しい合間を縫ってチームに入ってくれている吉田さんに感謝の気持ちが積もります。

 

 

次回は、つい、根っこを忘れて実や花から考えてしまったエピソードをお伝えします。今後もぜひのぞきに来てください。

取材先
名称
「伝える→伝わり合う広報プロジェクト」#2
概要
東京都社会福祉協議会 総務部 企画担当

ご意見、ご感想お待ちしております。
https://forms.gle/wmoWe1SytvQ22pRX6
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