KAZUKIさん
あらまし
- 音楽を通してろう者と聴者をつなげたいという思いで、歌詞を手話に変えたパフォーマンスや映画、舞台、講演活動など他方面で活躍するKAZUKIさんにお話を伺いました。
障害関係なく多くの人に勇気と希望を届けられる人になりたい
耳が聞こえないと診断されたのは3歳の時です。中学校までは普通学校に通い、口の動きを読み取り、自分が伝えたいことを声に出す口話でコミュニケーションを取っていました。聴者との会話のずれから人の輪に入ることができなかったり、耳が聞こえないという理由だけでいじめにあったり、辛い時期もありました。
高校からはろう学校に通い、友達の助けもあり手話を習得。それまでは口話教育を受けてきたため、初めは馴染めずにいましたが、目を見てコミュニケーションが取れる手話は覚えてしまうと耳で聞くよりずっと充実感がありました。視覚・聴覚障害者などが通う大学を卒業後は、サラリーマンとして働いていたのですが、目に見えないコミュニケーションの壁にぶつかり、精神的に生きることが苦痛になっていきました。そんな時、人生から這い上がるきっかけとなったのが、中学生から15年以上続けてきたダンスを通して、身近に感じていた「音楽」でした。
「音楽を通して聴者とろう者をつなげたい、手話に興味を持ってほしい」という思いから、6年間勤めた会社を辞め、音楽の歌詞を手話に変えてパフォーマンスを行う「サインパフォーマー」という仕事を始めました。自分がやりたいことやアイデンティティに迷った時期もありましたが、今はろう者としての自分に誇りを持っています。
Mi-Mi-Biとの出会いから学んだこと
社会にろう者というロールモデルを増やすこと、ろう者でもいろいろな仕事ができることを聴者やろう者の人たちに知ってもらいたいと思いサインパフォーマンスのほか手話歌の動画配信や俳優、モデルなど活動を広げ、2021年には東京パラリンピック開会式に出演。多くの人と出会いました。その時、共演者から誘われて聴覚や視覚、身体にさまざまな特徴を持つメンバーで構成されるダンスカンパニー『Mi-Mi-Bi』に入りました。
『旅する身体』の公演に向けた稽古では、移動や会話のサポート、体力面の違いがあるので、集まってすぐにダンスを揃えるのではなく、お互いを知ることから始まりました。演技をしている時は、振動以外どんな曲が流れているか全く聞こえないので、周りの人と呼吸や動きを合わせて踊ります。練習後は毎回疲れ切っていましたが、学ぶことが多く、とても充実した時間でもあります。
Mi-Mi-Biを一言で表すと「爆発」。これまで生きてきた中で、経験してきた差別や苦労、悲しいこと、辛かったことをメンバーは全身で表現しています。私は、メンバー全員が社会を変えられる力を持っていると思っています。「障害者は踊れない」と思われがちですが、〝未だ見たことのない美しさ〟の頭文字をとって、Mi-Mi-Biのユニット名になったように、Mi-Mi-Biの世界観に触れて芸術的な美しさに出会い〝障害者〟のイメージが少しでも変わったらいいなと思います。
障害があっても夢をあきらめない世の中にするために
これまでさまざまな分野で活動してきた私が今できることは何かと考えたとき、若いろう者のロールモデルになりたいと思い、22年1月には全員ろう者の手話パフォーマンスのダンスチームVAchement(ヴァッシュモン)を立ち上げました。関西と関東出身者合わせて6人、小学生から社会人までが参加し、対面や動画で練習をしています。ろう者はどうしても、聴者との日々のコミュニケーションの中で孤独を感じることがあります。このような場所があることで、障害があってもあきらめず他の世界でも頑張れるのではないかと思います。頑張っているろう者の心の居場所となり「自分らしく生きていくことは悪いことじゃない。みんな違って大丈夫!」と伝えていきたいです。
日ごろから大切にしていることは、思いやりの気持ち。みんなが思いやりを持つことで、自然に障害を持った人のサポートができたり、手話に興味を持ったり、理解し合える世の中になるんじゃないかなと思います。私の経験が誰かにとって良い影響になるのであれば、それを伝え、できる限りサポートしていきたいです。
舞台でのパフォーマンスの様子
映画『旅する身体~ダンスカンパニー Mi-Mi-Bi~』
- デビュー公演までの“軌跡”に密着したドキュメンタリー映画がTBSドキュメンタリー映画祭にて上映!
- 2024年3月15日(金)より全国6都市にて順次上映
https://peraichi.com/landing_pages/view/kazukisignperformer
TBSドキュメンタリー映画祭2024
https://www.tbs.co.jp/TBSDOCS_eigasai/