添田洋美さん
「聞こえるけど、聞き取れない」を、まずは知ってほしい
掲載日:2025年1月23日
2025年1月号 くらし・今・ひと

LiD/APD当事者会imua(イムア)
代表 添田洋美さん
LiD/APD当事者として、東京を拠点とした当事者団体の代表を務めている。
趣味はフラダンスで、団体名の「イムア」もハワイ語から。

 

あらまし

  • LiD/APD(エルアイディー/エーピーディー)と呼ばれる、「音は聞こえるけど聞き取れない」といった困難を抱える一人として、当事者会イムアの活動をはじめ、LiD/APDの社会的な認知度向上に向けて取り組む添田洋美さんにご自身の経験や活動への思いをお伺いしました。

 

“ 聞き取れない”と向き合うまで

聞こえているのに、聞き取れない。音声を言葉として聞き取るのが困難な症状(LiD/APD)が、私自身に当てはまるとわかったのは大人になってから。思い起こせば小中学生の時も聞きづらさを覚えることはありましたが、教科書ベースの授業ではそこまで困ることもなく、「ほかの子もそうだろう」と周囲との違いを考えることもありませんでした。ただ高校生になると、複数人での会話についていけないことや電話を受けても聞き取れないこと、授業が聞き取れないことで学業に支障が出るなど違和感は大きくなる一方、聴力検査では異常が見つからず、そのままやり過ごしてきました。

 

そんな違和感がトラブルとして表出したのは、美容師として働き始めた時。流水音やドライヤーなどの生活音が溢れる中で、お客さんとの会話がうまくいかないことや、指示が聞き取れないことなどがありました。仕事を変えても同様なことが続き、そこで初めてやり過ごしてきた自分の聞き取りづらさと向き合うことになります。思い当たる症状をネットで検索すると「LiD/APD」に行き着き、それから啓発などにも取り組む耳鼻科医と出会い、自分がLiD/APD当事者であることが分かりました。それが2021年、まだ3年前のことになります。

 

悩みや困難をともにしながら、前にすすむ

当事者会に参加するようになり、その経験から東京を拠点とする「LiD/APD当事者会imua」を2022年に始めました。定期的な交流会や日常的なオープンチャットの場などを通じ、参加者の悩みや困りごとを共有しながら、これからについて考える場をめざしています。私と同じように、大人になってからそれまで感じてきた生きづらさがLiD/APDによるものと気がつく人が多く、授業を理解できずに行き詰まり、退学を選択した参加者もいます。交流会には都外から足を運んでくれる人もいて、この場に参加した人が笑顔になって帰ってもらえることを大切にしています。

 

一人ひとりが知ることから、変わっていく

LiD/APDの診断基準が設けられるなど国内での研究はすすんでいますが、社会の認知度は低く、誤った情報もネット社会には流れています。とりわけ、教育現場の認知は重要で、子どもたちの周囲にいる大人が気づき、必要な配慮や支援を講じていかなければなりません。取組みの地域差は大きく、子どものSOSをキャッチした保護者が教育現場や自治体へ声を上げているのが現状です。

 

「聞いていない」「集中していない」、そうした“知らない”ことによる誤認や対応は、当事者やその家族の疎外感や孤立につながっていきます。一人でも多くの人がLiD/APDを知り、そして周囲の理解と配慮の中で、当事者がLiD/APDとともに生きていけるように。まずは知ってほしい、ただそれだけです。

 

LiD/APD(エルアイディー/エーピーディー)とは?

  • 「聞こえているのに、聞き取ることが困難である状態」について、日本では聴覚情報処理障害(APD:Auditory Processing Disorder)として長く認知されてきた一方、海外では「聞き取り困難症」(Listening difficulties)という言葉が使用されてきました。こうした経緯から、現在、国内ではLiD/APDと表現されています。
取材先
名称
添田洋美さん
概要
LiD/APD当事者会imua
https://lit.link/alohialoalo
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