あらまし
- 八王子市の荒れた里山を開拓し、児童養護施設の子ども達に自然の中での遊びや学びの場を提供している東京里山開拓団の堀崎茂さんにお話をうかがいました。
趣味はアウトドア。そんな週末を過ごしていたサラリーマンの私は、ある時から「木を切るのもダメ」「通る道も決められている」という山では満足しなくなっていました。
お酒を楽しめる展望台を
遠い親類が八王子に山を持っていることを知り、行ってみると、放置され荒れた里山は木々が生い茂り、入っていくのも困難でした。最初は、まるで秘密基地をつくるような気持ちで、「桜の季節に花見酒を楽しめるような展望台をつくりたい」と思い、山の開拓をはじめました。ある程度整ってから、当時2歳になった娘をおんぶして連れて行ったり、友人を誘ってみたり、皆が喜ぶ姿をみて、皆の笑顔が私の楽しみになっていました。しかし、私たちが山に行くのは、せいぜい月に1度程度、自分たちだけで楽しむにはもったいないと思うようになりました。
体験を味わって欲しい
学生のとき、児童養護施設で学習ボランティアをしていたことを思い出し、必要としている子どもたちに里山での素晴らしい体験を味わって欲しいと思うようになりました。そして「東京里山開拓団」を立ち上げました。忘れもしない2012年の1月15日に、第1回目の参加者である子ども達、小学生7名と施設職員1名が里山に来てくれました。はじめはこちらも身構えてしまって、子どもに何かあったら大変とか、責任を感じていましたが1年半経った今は気楽にやっています。
小学生の焚き火職人
里山での山遊びをとおして、確実に子ども達がたくましくなっています。例えば、焚き火職人と呼んでも良いぐらい、焚き火をつくるのが上手な子は、「さつま芋・アルミホイル・マッチ」さえあれば、杉の葉を集め、火事にならないように気をつけながら燃やし、小枝や太い枝をくべていきます。そして、30分後には甘い蜜の固まりのような絶品の焼き芋をつくります。他にも、穴掘り、木登り、花を育てるのが得意な子、さまざまです。本人も知らなかった関心、生まれ持った感性は、自然の中で発揮されていきます。
当初、子ども達を迎えるにあたって、安全な階段を作らなくてはと意気込んでいましたが、帰り道を歩く子ども達はちょっと危険な降り方を好んで、シューっと滑って降りていました。過保護は不要だと気づかされました。
里山は残されたフロンティア
里山に出入りしていると、子どもも大人も日常の都会の世界が全てではなく、自然の中では小さな点のようなものだと気がつきます。都会という大人がつくった世界の仕組みの中で、自分自身の良さを見失ってしまう。それは悲しいことです。里山が、自分を発見し自信を持てる場となることを願っています。現在の林業の衰退状況は、実は都会の人が里山を活用するチャンスであり、都会に残された数少ないフロンティアとも言えます。今後はより活用できる里山を拡げていけたらと思っています。
ボランティアと自然の力
以前私は、福祉というものは専門家の仕事だと思っていました。しかし、この活動での経験を通じて、福祉の領域も、もっと「ボランティア(そこに居る人)」と「自然」の力で支え合うことができると思うようになりました。
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