特定非営利活動法人 地域精神保健福祉機構・コンボ 宇田川 健さん
いろんな人との出会いで 今の生活がある
掲載日:2017年11月29日
2013年10月号 くらし今ひと

 

あらまし

  • 学生時代に発症した統合失調症。海外での当事者団体との交流や、様々な人との出会いを通じて、現在は、当事者が主体となり活動する団体で共同代表を務める宇田川健さん(42歳)にお話をうかがいました。

 

活気のある当事者に驚く

デイケアに通っていた27歳の頃、ロサンゼルス(米国)の当事者団体との交流プログラムに参加する機会がありました。統合失調症を発症して入退院を繰り返していた頃、家でラジオの英語講座をよく聞いていたので、英語力を試してみたくて主催団体に問い合わせたのがきっかけです。それまでは、デイケアや入院先の当事者しか知りませんでした。ロサンゼルスの当事者に会ってみて「なぜこんなに元気がいいのか」と、その活気に驚きました。自己紹介では、自分の診断名、飲んでいる薬とその副作用を全員が把握していたことにも驚かされました。

 

帰国後は、交流プログラムの日本での実行委員を務めたり、世界精神保健連盟主催のチリ大会に参加もしました。現在は当事者が主体となり活動する団体で共同代表を務めています。

 

学部長に連れられ病院へ

私が発症したのは、大学1年生だった19歳の夏です。突然、授業に全くついていけなくなり、試験がうまくいくか不安でいっぱいになりました。次の学期になると急に「死にたい」と思うようになりました。しかし、ある日突然、すごく幸せな気持ちになり、学校の授業は簡単に思え、勉強もしなくなりました。なんとか2年生に進学できましたが、また勉強が頭に入らず、死にたいと思うようになりました。結局、2年生を留年し3年生にはなれませんでした。浮き沈みの激しい生徒がいるという話を聞いた学部長から呼び出され、そのまま精神科に連れていかれました。その後、入院し、保護室で半年過ごしました。

 

「特別なことはしないから」

退院後は実家に戻りました。躁状態になると入院し、落ち着くと実家へというのを繰り返しました。両親は、見えないところで「あの育て方が悪かった」「あの時の対応が良くなかった」など言い合いをしていました。ところが、ある日突然、「もう特別なことはしないから」と宣言しました。何度も話し合い、考えた方法だったようです。共働きの両親でしたが、それまでは、外出に付き添い、具合が悪くなれば迎えにきてくれていました。その日を境に本当に特別なことはなくなりました。それからは、デイケアで具合が悪くなっても一人で帰り、横になり、お腹がすくと自分でご飯を作って食べました。最初は寂しかったですが、慣れてくると、逆に気を使わずゆっくりできると思うようになりました。今では両親が自分の人生を生きてくれているのが嬉しいです。その後、アルバイトを始め、彼女もでき、実家を出ました。彼女とは30歳の時に結婚しました。

 

目の前のできることから

仕事に就いて結婚できるとは思っていませんでした。できないと思っていたことができるようになったのは、色々な人に出会えたからだと思っています。以前の私は、元の状態に戻ることがリカバリーだと思っていました。今は、遠い将来の夢を持ち、目の前のできることからやっていき、どれだけ自分のものにしていくかだと思っています。例えば大学に行きたいという夢のために、まずは興味のある本から読んでみるなどです。支援者も、当事者の遠い夢を否定せず、できることから取組むことを支えて欲しいと思います。

 

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  • 特定非営利活動法人 地域精神保健福祉機構・コンボ
  • 平成19年2月設立。精神疾患をかかえる本人むけの会員誌「こころの元気+」を毎月発行するなど、精神障害をもつ人たちが主体的に生きていくことができる社会のしくみをつくる活動を行っている。
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特定非営利活動法人 地域精神保健福祉機構・コンボ 宇田川 健さん
概要
特定非営利活動法人 地域精神保健福祉機構・コンボ
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