(一社)社会的包摂サポートセンター/LOUD/NPO法人全国女性シェルターネット
「つながりから遠ざかる」人たちを支えるために
掲載日:2018年3月22日
2017年11月号 社会福祉NOW

 

あらまし

  • 生活上の困難を抱えながらも、地域社会や相談機関につながりにくい人がいます。
    なぜつながりから遠ざかってしまうのか、またそういった人たちを支えるうえで、地域に求められるものは何か。今号では、社会福祉施設や社会福祉協議会が、地域の中でどのように関わっていけるのかについて専門相談を行う団体の事例から考えます。

 

 

地域の支援力を上げて、当事者に寄り添う  (一社)社会的包摂サポートセンター

社会的包摂サポートセンターが運営する「よりそいホットライン」は、24時間365日、いつでも無料でかけられる電話相談です。何でも相談のほか、DV等の被害にあった女性、外国籍住民、セクシュアルマイノリティなど社会的マイノリティの専門ラインも設置しています。平成28年度は1年間で24万件を超える相談を受け、全国約1500団体と連携して、相談者を地域の社会資源につなぐ支援を行っています。

 

生活上の困難を抱えながらも地域につながりにくい人や地域から見えにくい人がいるのは、「地域社会に偏見や差別、スティグマがあり、当事者が地域から離れていくから」と事務局長の遠藤智子さんは言います。「当事者は地域以外の場で、自助グループのようなコミュニティをつくる。それが今はネット上にも広がっている」。

 

また、「セクシュアルマイノリティや在日外国人、性暴力被害者は、友達や知り合いの中にもいるはず。当事者が地域で課題を語ることができない状況を、支援者はどれだけ認識しているか。支援者の多くは当事者の生活上の困難に気づいていないか、実はたいしたことがないと思っている部分があるのではないか」と話します。

 

こうした状況をふまえ、よりそいホットラインでは、当事者が抱える深刻な課題を単純化せず、より正しく理解するため、専門ラインごとに必要な基礎知識を研修で伝えています。また、支援を必要とする人が身近な地域で適切なサポートを受けられるよう、支援者に対する支援にも力を入れており、専門性の高いサポートや対応を行うための情報提供や、課題別支援マニュアルの作成・頒布にも取組んでいます。

 

遠藤さんは、「何か支援をしたいと思ったら、そのことについて勉強する必要がある。支援者が必要な知識を身につけ、『相談していいんだよ』と当事者にシグナルを送れば、相談してくれる関係になる」と学びの意義を話します。

 

また、社協や福祉施設など地域の機関に対しては、当事者や当事者団体を支援する中間支援組織とつながることの必要性を指摘します。「当事者のコミュニティには近寄れないこともあるので、中間支援組織とつながって一緒に学んでいくことが大切。自分たちのよく知らない課題に取組んでいる人たちと恐れずにネットワークを組んだり、新たな資源を開発する視点をもってほしい」と話します。

 

社会的包摂サポートセンターが発行している課題別支援マニュアル

 

ちょっとした工夫で、当事者が安心できる場をつくる  LOUD/ラウド

1995年に中野区内に創設されたラウドは、セクシュアルマイノリティのためのコミュニティスペースです。当事者や、当事者を支援する人(Ally=アライ)が主体的に活用できる場所として、開設以来、延べ十数万人が利用してきました。「当事者が集まって居場所を始めてみたら、たくさんの相談が持ち込まれるようになった。スタッフは全員ボランティアで専門家ではなかったが、手探りで支援を始めるようになった」と代表の大江千束さんは話します。ラウドでは、本人の困りごとを聞き、解決に向けたプランを一緒に考え、窓口への同行支援や弁護士等の専門家へのつなぎを行ってきました。現在では、よりそいホットラインのセクシュアルマイノリティ専門ラインのコーディネーターとしても活動しています。

 

大江さんは「当事者が自分の情報を開示して、安心して相談することができない現状がある。役所など市民にとって身近な相談窓口でのやりとりが不調に終わると、相談に行かなくなってしまう」と言います。例えば、男性から女性へのトランスジェンダー当事者の生活困窮相談のケースでは、男性が大部屋で集団生活をする宿泊所の利用を相談窓口の担当者から薦められ、短期間だから我慢するよう言われたといいます。大江さんは「当事者にとっては耐えがたいこと。そういった無理解がつながりにくい原因の一つ。だからラウドのような居場所に相談が寄せられる」と説明します。

 

一方で、セクシュアルマイノリティへの支援について研修を実施する自治体や相談機関、施設も増えているといいます。「窓口の担当者もどのように対応したらよいか困っている。事例検討やロールプレイで適切な対応を学ぶことができるので、ぜひ研修を取り入れてほしい」と話します。理解を深めた後は、相談窓口にレインボーフラッグを掲示したり、研修を実施していることを明示したりするほか、アライであることを表明するグッズをさりげなく身につけるなど、ちょっとした工夫で当事者が安心できる場にしていくことができるといいます。

 

大江さんは「セクシュアルマイノリティへの支援はこれから探っていくもの。対応がわからなかったら気軽に問合せてほしい。行政や社協、福祉施設が当事者を支援するNPOや相談機関とつながっていれば、お互いに知恵を出し合いながらチームで支援ができる」と、関係機関の連携がすすんでいくことを期待しています。

 

当事者が地域から遠ざけられることなく、誰もが排除されない社会を  NPO法人全国女性シェルターネット

全国女性シェルターネットは、DV被害当事者の支援を行っている民間団体のネットワークです。ネットワークに参加する全国65以上の団体が、当事者の声を受け止め、身の安全を確保しつつ、地域社会での生活再建に向けた伴走型の支援を続けてきました。理事の近藤恵子さんは「DV被害当事者は、加害者の支配、追跡、暴力から逃れるため、それまでの関係をすべて断ち切って、血縁や地縁のない新しい土地で一から関係性をつくらなくてはならない。地域から遠ざかるのではなく、暴力によって地域から遠ざけられている。つながりたいけれど、つながれない状況にある」と、当事者が追いやられる厳しい環境について説明します。

 

内閣府の調査※では、配偶者のいる成人女性のおよそ4人に1人がDV被害の経験があると回答しており、DVが私たちにとって身近な問題であることを示しています。近藤さんは「適切な支援に早くつながれば、それだけ心身のダメージが小さく、回復も早くなる」と早期発見・早期支援の重要性を指摘します。そのためには、地域住民がDVについて正しい知識をもち、当事者が「困った、助けて!」と声をあげたときにきちんと受け止め、支援機関につなぐことができるような地域づくりが求められます。

 

※「配偶者からの暴力に関するデータ」内閣府男女共同参画局

 

また、当事者が声を上げることで課題が明らかになり、そこに寄り添って一緒に考え、困難を解決していくプロセスが地域や社会を豊かにしていくといいます。困っている人が地域から遠ざけられず、誰もが排除されない地域をつくっていくために、支援者や住民など多領域の支援のコーディネート役を社協等が担うことができるのではないかと期待しています。

 

近藤さんは「シェルターを経て、地域で自立した生活を営むまでには、とても長い時間がかかる。その間、支援者や地域住民が当事者の困難を軽減していかないと回復できないし、人との関係性をつくっていくことこそが回復になる。人は、人とのつながりがあるからこそ生きていくことができる」と地域における継続的な関わりが必要であると話します。

 

各地域で「我が事・丸ごと」の地域づくりに向けたさまざまな取組みがすすめられています。「支援者一人ひとりが『我が事』の中に、地域で暮らす社会的マイノリティを入れているのか?」と遠藤さんは問いかけます。誰もが地域から遠ざけられることなく、安心して暮らせる社会をつくっていくため、社協や福祉施設は当事者を支援する多様な団体との連携をすすめ、地域につながりにくい課題に対する正しい理解や適切な対応を学び、さらにそれを地域全体に広げていく役割が期待されています。

 

 

取材先
名称
(一社)社会的包摂サポートセンター/LOUD/NPO法人全国女性シェルターネット
概要
一般社団法人 社会的包摂サポートセンター
https://www.since2011.net/

LOUD(ラウド)
http://space-loud.org/

NPO法人全国女性シェルターネット
http://nwsnet.or.jp/

※「配偶者からの暴力に関するデータ」内閣府男女共同参画局
http://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/data/pdf/dv_data.pdf
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