山田 舞さん
多様な価値観に寛容でありたい
掲載日:2017年11月29日
2017年1月号 くらし今ひと

 

あらまし

  • 大好きな本を通じて、さまざまな価値観に触れる経験をした山田舞さんにお話をうかがいました。

 

本の「楽しさ」を伝える

タンザニアでは、図書館や学校で子どもに本の読み聞かせをしたり、お話を通じた情操教育に関するワークショップを学校の先生に行う等、さまざまな活動をしてきました。

現地は個人で本を持っている人が少なく、辞書など学習に使う本はよく利用されていましたが、本を楽しみに図書館に来る子は少なかったです。

また、子ども向けの良書やきれいなカラーの印刷物があまりありませんでした。そこで、本の楽しさに触れてもらおうと、日本の絵本をスワヒリ語に訳して読み聞かせをしました。

「おおきなかぶ」では、せっかくなら日本語も伝えたくて、「うんとこしょ、どっこいしょ」の部分を日本語で紹介したら、言葉の響きが面白かったようで、子どもたちの間でちょっとしたブームになりました。

野菜を引っ張るときの掛け声という意味がきちんと伝わらなかったので、スワヒリ語で読み直したという反省点もありますが、楽しかった思い出の一つです。

 

初めて知る現地の風土

未知の場所だったタンザニアですが、出会った現地の方は皆気さくで、楽しく過ごすことができました。特に高齢者に優しくて、母が遊びに来たときは大歓迎してくれました。

価値観の違いにも触れました。先程の「おおきなかぶ」は、「もっと力のある動物を呼べばいいのに」と、子どもと一緒に読み聞かせ会に参加していた先生が言っていて、現実的な考え方をするなと感じました。

折り紙をまっすぐ折らない子を不思議に思いましたが、タンザニアは家の柱が斜めだったので、それなら折り紙も斜めかなと納得しました。

他にも、生活のさまざまな場面で、今まで「当たり前」だと思っていたことに、別の見方があると気づかされました。

 

世界が身近な存在に

帰国後、勤めていた図書館に戻りました。国外で大勢の子どもたちと本を通じたかかわりを持てたことから、「本が持つ力」を実感し、日本での仕事の自信につながっています。

また、タンザニアや他の国のニュースに目が向くようになり、世界が身近になったように感じます。こうした変化は、職場の人、友人や家族にとっても同様のようです。

タンザニアが「まったく知らない国」から「知り合いが行った国」になり、「仕事で会った人がタンザニアの人だった」など教えてくれます。周りの方にとっても、世界に関心を持つきっかけになったことを嬉しく思います。

 

他者の文化に寛容でいてほしい

現在、司書の仕事をしながら、小学生以下3人の子育てをしています。まだ小さいので、経験を伝える等のことは特にしていませんが、スワヒリ語の数字を教えたことがあります。

子どもは英語を覚えたと思っているようで、いつ気づくかなと見守っています。子どもには、相手の文化に寛容でいてほしいと思っています。広い世界に触れて、自分の考え方以外に多様な価値観があることを知ってくれればと願っています。

 

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