(社福)原町成年寮 冨永 浩一さん
あらまし
- 震災後の熊本県に現地調査に行かれた、(社福)原町成年寮の冨永浩一さんにお話を伺いました。
私は知的障害のある方のグループホームで勤務しています。東日本大震災の際には東社協知的発達障害部会の東日本大震災復興支援特別委員会(以下、委員会)を通じて東北の支援活動に携わり、今回熊本県で地震が起きたときもすぐ現地に駆けつけたいと思っていました。そのような折、委員会を中心としたメンバーで熊本県内の障害者施設等の現地調査を行うことになり、私も調査員の一人として熊本県に行けることになりました。
この度訪問できたことを大変ありがたく思っています。家族や職場の方々の支えがあったから実現できたことで、皆さんで一緒に支援ができたのだと考えています。
アンバランスさが混在
現地に入ってまず感じたのは、東日本大震災との違いです。東日本大震災では津波による被害が大きく、辺り一面「何もない」状態でした。熊本県では、断層の上にある地域は建物が崩れるなどの大きな被害が出ていましたが、車で10分ほど離れた場所では普通の生活が送れていました。日常の光景と非日常の光景が混在するアンバランスさが印象に残っています。とは言え、被害を受けた地域の状況は壊滅的です。道路はひび割れ、瓦屋根の家が多く倒壊していました。一見支障がなさそうな家も、倒壊の危険を示す「赤紙」が貼られていました。街の所々にお供えの花が手向けられているのも見かけました。
地域の力を大切にした支援
調査では、現地の施設の職員などのお話を伺いました。疲れている方もいらっしゃいましたが、全体的に悲壮感はなく、力を合わせて乗り越えようという意欲を強く感じました。例えば情報開示のスピード。利用者の安否確認のため施設の職員が迅速に動き、役所も速やかに情報開示をしていました。雨が降るとすぐ避難情報が流れます。緊急時は優先順位のつけ方が難しいものですが、人命を第一にした判断が素早いので、スムーズに事が運んでいくように感じました。これは今までの災害の経験と教訓が積み重ねられている表れなのでしょう。また、地元の地域の力も感じました。被災地の周辺にある元気な法人が早い段階から被災した施設の利用者を受入れ、近隣の方は2日目からボランティアに入られていたそうです。現地に入る前は、支援するためにできることは何だろうと考えていましたが、既にある地域の力とネットワークを大切にし、こちらの気持ちを押しつけてはいけないと感じました。
常に危機意識を持つこと
東京に戻ってから、勤務先のグループホームの利用者と折に触れ震災の話をしています。食堂では「もし今地震が起きたら、ここにいる全員がテーブルの下に入りきるかな?」と聞いてみました。そうすると利用者が「難しいかも」「痩せなくちゃ入れない」など考えてくれます。もし東京で大震災が起きたら…。災害はいつ発生し、どのような状況になるか分かりません。職員が無事とも限らない中、利用者が自ら考え、皆で話し合う機会を持つことは大切だと思っています。グループホームで実施している防災訓練では、利用者と近くにある避難場所まで向かいます。職員が付き添えない状況になっても、利用者だけで避難できるように場所を覚えてもらいたいという思いがあります。また、日ごろから近隣の方とつながりを持つようにしています。もしものときを考え、常に危機意識を持つことで、どうしたらいいのかが見えてきます。
たくましく復興にむかう方々を見てほしい
できることなら一人でも多くの方に、自分の目で被災地を見ていただきたいと思います。力を合わせて、たくましく復興にむかっている方々を直接見て、自分なりの支援を考えてほしいと願っています。
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