あきる野市障がい者就労・生活支援センターあすく センター長 原 智彦さん
強みも弱みも理解し、「その人らしく」を支援する
掲載日:2018年12月7日
2018年12月号 くらし・今・ひと

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原 智彦さん

 

あらまし

  • 障害者雇用の働くまでの取組みから就職して働き続けるために基本となる生活も合わせて支援をしている「あきる野市障がい者就労・生活支援センターあすく」センター長の原智彦さんにお話をお伺いしました。

 

英語教員から特別支援学校教員へ

長野県の中学校で英語の教員をしていた私が特別支援学校の教員を志したのは、中学生だったときの担任の先生の影響です。その先生はもともと聾学校の教員で、当時は通常学級の担任をしていました。魅力的で好きでした。先生のすすめもあり、養護学校で一週間授業をしたことがきっかけです。また、私の曾祖母は聴覚障害がありましたが、家族は公にしておらず、子ども心に「変だな」と思っていたことも、根底にあるかもしれません。

 

特別支援学校の進路担当として20年間、多くの卒業生を送り出しました。退職後は、成人期となった卒業生を支援したいと思い、現在はあきる野市障がい者就労・生活支援センターあすく(以下、あすく)で相談支援をしています。あすくには、個別の相談室やフリースペースがあり開所時間は自由に利用できます。行事もあり、リフレッシュや登録者同士の情報交換の場にもなっています。トラブルがあったときに相談できる場ということだけではなく、日常の中で気軽に立ち寄れて、安心できる居場所をめざしています。

 

特徴や強みと仕事をマッチング

就労継続支援B型作業所に通っていた20代の人が、一般就労をめざして相談に来ました。その人は、職場内における暗黙の了解や慣習は理解しづらくても、マニュアルがあれば真面目に取組むことができるという強みがありました。仕事内容がわかる写真付きのシートを利用して、どんな仕事が合うか考えました。そしてルールが決まっている品出しの仕事が向いているのではと考え、実習を経て就職しました。会社側がマニュアルを整備してくれたこともあり、本人も自信をもって働き続けています。とても印象的なケースでした。

 

病気で体が不自由になった60代の人のケースも印象に残っています。接客や調理の仕事の経験がある人だったため、地域の飲食店で実習後、就職しました。その飲食店で若い店員が「●●さんですよね?以前アルバイトしていたお店でやさしく教えてくれましたよね。今度は私が教える番」と話しかけてきました。その店員は以前の勤務先でアルバイトをしていた学生だったのです。地域で働くということはまさにこういうことだと思いました。どこかで会っていたり互いに支えあっているのです。

 

また、仕事を辞めたいという相談を受けることもあります。もうひと踏ん張りすれば仕事を続けられそうな人には、継続できるよう支援をします。しかし、その仕事を続けると心身の健康を崩してしまいそうな人であれば、離職の調整や手続きの支援をします。続けられないのは本人が悪いのではなく、本人の特徴と仕事内容とのマッチングがうまくいかなかったのだと思います。

 

福祉制度やサービスが増え、社会の理解もすすみ、障害があっても働ける人が増えてきました。都では30年10月に「東京都障害者差別解消条例」が施行され、合理的配慮の提供が義務付けられました。しかし、漠然と「配慮してほしい」だけでは雇用する側は配慮の方法がわかりません。障害には個別性があります。本人が自己理解を深め、強みと弱みを伝えられれば、会社側も可能な範囲で対応できるのではないでしょうか。

 

ライフステージに合わせた支援

就労と生活の両面から支援をすることも課題です。出産・育児などのライフイベントや年齢で変化していく生活に合わせて支援も変えていかなくてはいけません。働きたいと思ったそのときに、支援や相談できる場が必要です。

 

本人も支援者も学びを継続する生涯学習の必要性も感じています。例えばスマートフォンやSNSは便利で多くの人が利用するようになりました。給与明細もWEBで見られるようになりました。時代は常に流れています。学校での学びがゴールではなく、新しい情報を知ることが大切です。地域で生涯学習できる環境があればと、あすくでは講座や勉強会などの取組みを始めています。

障害のある人たちが自分らしくあり、成長し続けられることを、これからも応援したいと思います。

 

プロフィール

  • 原 智彦さん
  • 長野県の公立中学校で英語の教員として9年間勤めた後、東京学芸大学で養護学校教諭の免許を取得。平成3年に東京学芸大学附属養護学校へ着任。都立あきる野学園養護学校、都立青峰学園で進路指導を担当し、29年より現職。

 

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取材先
名称
あきる野市障がい者就労・生活支援センターあすく センター長 原 智彦さん
概要
あきる野市障がい者就労・生活支援センターあすく
http://www.akigawa-net.org/asuku.html
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