左から
木下財団 事務局 東光篤子さん
レインボーハウス明石 施設長 小林哲さん
朝日新聞厚生文化事業団 事務局長 是永一好さん
中央区社会福祉協議会 管理部庶務課主事 石井佐由三さん
中央区社会福祉協議会 管理部庶務課主任 杉村美矢子さん
平成28年9月に設立した東京都地域公益活動推進協議会は、(1)各法人、(2)地域(区市町村域)の連携、(3)広域(東京都全域)の連携の三層の取組みにより、社会福祉法人の「地域における公益的な取組み(以下、地域公益活動)」を推進しています。東京都地域公益活動推進協議会では、地域ネットワークの立ち上げのための事務費や、複数法人の連携事業開始時期の事業費の助成を行うとともに、地域ネットワーク関係者連絡会等を開催し、他の地域と情報交換できる機会をつくっています。
あらまし
- 中央区では、平成28年9月に「中央区社会福祉法人連絡会」を立ち上げ、学習会やグループワークでの検討を経て、29年度から「ボッチャ体験&福祉相談会」「福祉体験合宿」の2つの活動を行っています。参加メンバーの「想い」をふまえ、アイデアを出し合って始めた活動は、やってみたことにより効果を実感し、続けていくことで新たなつながりを拡げていこうとしています。
<中央区の概況> (平成31年4月1日現在)
人口
(住民登録) |
163,752人 |
(男性) | 77,813人 |
(女性) | 85,939人 |
世帯 | 92,674世帯 |
高齢化率 | 15.0% |
社会福祉法人数 | 18法人
※区内に法人本部または事業所のある法人 |
地域づくりをすすめるコーディネーター | 地域福祉コーディネーター:3人
生活支援コーディネーター:2人 |
単位民協の数 | 3地区
民生委員定数:115人(内、主任児童委員6人) |
取組みたいことを形に
設立から4年目を迎える「中央区社会福祉法人連絡会」は、平成31年4月現在、区内の15法人が参加して活動しています。参加法人の中には、施設等経営法人のほか、全国の団体等を対象に助成事業等を実施する社会福祉法人もある中、中央区で何ができるのかを検討してきました。
全体で改正社会福祉法や中央区の地域ニーズ等に関する勉強会、既に行われている地域公益活動の見学会を経て、グループワークを行い、取組み内容について話し合いました。事前に各法人が回答したアンケートでは、住民と施設の交流の少なさ、ひとり暮らしの方への支援の必要性、福祉人材不足等の課題があげられました。これらをふまえた地域公益活動のイメージにより、世代間交流、イベント、日常生活支援、施設での子どもの受入れ等、取り組んでみたいことについてグループに分かれ、検討しました。
地域公益活動見学会では、子どもと高齢者が共に過ごす姿から、年齢や状況等、さまざまな人が一緒にできることがあるといいと具体的イメージを描いた法人もありました。
このような過程を経て、「ボッチャ体験&福祉相談会」「福祉体験合宿」の2つの活動実施が決まり、参加法人がグループに分かれ、具体的な実施に向けた準備を進めました。
「ボッチャ」を通してさまざまな人が交流
ボッチャ体験&福祉ちょこっと相談会の様子
パラリンピック正式種目である「ボッチャ」は、目標球に赤・青6球ずつのボールを投げて近さを競う種目です。参加法人である木下財団が一般社団法人日本ユニバーサルボッチャ連盟の支援を行っていることから、年齢や障害の有無を問わず、誰もが同じルールで対等にゲームに参加できるツールとして提案があり、地域の方に呼び掛けて「ボッチャ体験」を行うことになりました。
30年12月2日に11法人により、2回目となる「ボッチャ体験&福祉ちょこっと相談会(名称一部変更)」が開催されました。チラシやホームページ、区広報紙のほか、新聞紙面でもPRし、138人がボッチャを体験しました。近隣の高齢者、ボッチャに親しみのある障害者、参加法人施設の利用者、また、近くの公園に遊びに来ていて社協着ぐるみキャラクター「ニジノコ」の呼びかけで参加した親子など、さまざまな人が交流する機会となりました。
朝日新聞厚生文化事業団事務局長の是永一好さんは、「さまざまな人が同じルールで一緒に競い楽しむ経験や、日頃は福祉と関わりの少ない人も参加した意味は大きい」と言います。また、ボッチャを提案した木下財団事務局の東光篤子さんは「障害のある方が自分で車いすから降りてゲームを楽しむ姿をじっと見ていた小さな子どもの表情が忘れられない」と言います。参加者からは「誰とでもできたのがよかった」「楽しい気持ちでいっぱいになった」等の感想が寄せられました。
ボッチャ体験&福祉ちょこっと相談会スタッフ集合写真
子どもに体験の場を提供し福祉への理解を促す「福祉体験合宿」
グループワークの様子
「学生の頃に障害児と一緒に過ごすキャンプでリーダーの姿にすごいと感激したことが今の自分につながる」と語るのは、東京都手をつなぐ育成会が運営する中央区立知的障害者生活支援施設レインボーハウス明石の小林哲施設長。連絡会では、特養と障害者施設で小5~中2の子どもを受け入れ、一泊して施設で暮らす方や職員との交流を行う「福祉体験合宿」を企画し、前年度に続く2回目として、31年3月23日~24日に実施しました。事前オリエンテーションや合宿後の報告会には、保護者も参加しました。
受入れ先となった4法人の施設で合計10人が参加し、初めに職員から説明を受け、それぞれの心構えを決めてから合宿をスタート。利用者との会話や、折り紙などで交流するほか、施設で働く職員の姿を見ながら、食事の準備、洗濯物の片づけなどの手伝いを体験しました。
連絡会事務局である中央区社会福祉協議会の石井佐由三さんは、「歌や身振りなど、コミュニケーションに多様な方法があることに気づいたよう。一泊二日という時間を共に過ごすことで、高齢者や障害者への理解が深まり、子どもたちが成長したように感じる」と言います。「昨年度あまり利用者さんと話せなかったという思いがあり、今年はちゃんと話せるといいなと思って参加した。利用者さんが帰り際にさみしいから行かないでと泣いていて、それが嬉しくてまたやりたいと思った」と参加した子どもの声。また、保護者からも「同世代の子どもたちと感じ方の違いをシェアしながら体験できたことが魅力」「この年齢でないと感じられないこと、得るものがたくさんある」等、この取組みに感謝し、期待する声があげられました。
福祉体験合宿の様子
● ● ●
プログラムの参加者が自らの経験の中で感じとったことは、地域でともに暮らす社会をつくっていくための原動力となることでしょう。連絡会では、このような取組みを続けていくことにより、地域での新しい出会いやつながりを拡げていこうとしています。
https://www.shakyo-chuo-city.jp/