東京都
障害者差別解消シンポジウム 「みんなで支え合う ともに生きる東京へ」
掲載日:2020年2月12日
2020年2月号 TOPICS

あらまし

  • 東京都は、共生社会の実現を目的として、平成30年10月に、「東京都障害者差別解消条例(以下、都条例)」を施行しました。今回、障害者差別解消について理解を促進し、取組みを一層推進していくため、令和元年12月20日(金)に障害者差別解消シンポジウム「みんなで支え合う ともに生きる東京へ」が開催されました。

 

障害者差別解消法と都条例

はじめに、都福祉保健局障害者施策推進部課長代理 松川邦夫さんより、障害者差別解消法と都条例についての解説がありました。平成28年4月に施行された障害者差別解消法には「不当な差別的取扱いの禁止」「合理的配慮の提供」の2つのポイントがあります。そのうち「合理的配慮の提供」は、障害のある方から社会的障壁の除去を必要としている旨の意思表明があった場合に、負担が重すぎない範囲で、必要かつ合理的な対応を行うことを行政機関等に義務づけ、事業者は努力義務としています。そして、都条例においては事業者による「合理的配慮の提供」を義務化していることが特徴です。負担が過重かどうかについては、場面ごとに総合的・客観的に判断し、申し出のあった方法では対応が難しい場合には、建設的な対話を通じて、代替手段の選択も含めて対応することが大切です。また、都条例では「相談体制の整備」や「紛争解決の仕組みの整備」が設けられていることや、ヘルプマークやヘルプカード、民間事業者向けの研修事業についての紹介がありました。

 

「合理的配慮に向けた様々な取り組み」

次に、日本電気株式会社(以下、NEC)コーポレートコミュニケーション部の池田俊一さんが登壇し「合理的配慮に向けた様々な取り組み」と題して講演しました。池田さんは「事業を通じて“インクルージョン&ダイバーシティ”を実現するためには、社員や社内の文化を変えていかなければならない。会社の制度や研修機会を通して社員各自の能力や経験値を上げ、相互に高め合い成長できる文化をつくることが重要」と話します。

 

具体的な取組みとして、障害者雇用を推進するために採用の専門窓口を設置し、選考時に必要な配慮に対応していることや、入社後に生じるさまざまな課題や合理的配慮についての相談窓口の設置があげられました。社内啓発については、障害者差別解消法や合理的配慮等についてのe-ラーニング研修、障害者スポーツのセミナーや体験会、ボランティア活動等を積極的に実施しています。また、社会的課題に取り組むNPOや社会起業家を支援する「NEC社会起業塾」を卒業した方々と社員が一緒に活動することにより、障害に対する意識を高める取組みもすすんでいます。

 

そのほか、駅のバリアフリー調査や、視覚障害のある方が使いやすいATMの評価・開発、空港のフライト情報の見やすさや分かりやすさの検証等の事例も紹介されました。

 

「私たちの考える合理的配慮」

続いて、NPO東京ユニバーサルデザイン・コミュニケーターズ(TUDC※)の皆さんにより「私たちの考える合理的配慮」をテーマとした、障害当事者の方の実体験に基づく三つの寸劇が披露されました。代表の諏訪正晃さんは「合理的配慮は、皆さんと障害当事者との間の建設的対話によって生まれる。双方が納得する解決策を求めて考え続けることが大事。寸劇がヒントになれば」と強調しました。

 

一つ目は、聴覚障害のある方が地域のお祭りに行った際、手話通訳が無く、がっかりしたという場面でした。演者の方は「聞こえない人の情報保障について理解が広がってほしい」と話しました。

 

次は、視覚障害のある方が電車で「席が空いていますよ」と遠くから声がかけられましたが、誰に向けてのものか分からず返事をしないでいると、急に手を引っ張られ転んでしまったという場面です。演者の方は「近くに来て私に話しかけていると分かるようにしてくれるとうれしい。腕や肩に軽く触れていただくのもいい」と話しました。さらに、視覚障害のある方が道路を横断する際、歩道と車道を区別するため、歩道に白杖で確認できる程度の段差が不可欠であることが説明されました。一方、車椅子を使う方からは「国交省のガイドラインでは歩道の段差は2cmが標準。2cm以下なら車椅子で上がれる。しっかり守ってほしい」と別の視点からの話もありました。

 

最後の寸劇は、車椅子を使う方が多目的トイレが空くのを待つ場面です。中から出てきた人の障害の有無は、一見分かりません。演者の方は「外見からは分からなくても配慮を必要としている方もいる。多目的トイレを利用するのは車椅子を使う人だけではなく、オストメイトの方、性的マイノリティの方など、さまざまな人が使う。しかし、使いたい時に使えなくてはたいへん困る」と話し、多目的トイレの数が足りていないことや、利用の必要がなければ使わないことも配慮の一つであることも示されました。

 

終わりに、合理的配慮の提供について「行政機関や事業者だけではなく皆さんにもできることがたくさんある」と締めくくられました。

 

TUDCの皆さんによる寸劇の様子

 

※TUDCは、車椅子を使う方、視覚、聴覚障害のある方などを含む、さまざまなメンバーで構成され、ユニバーサルデザインの普及啓発を行っている団体。

 

「素敵に輝く社会を目指して」

シンポジウムの最後は「素敵に輝く社会を目指して」と題し、シドニーパラリンピック男子車椅子バスケットボール日本代表のキャプテンをつとめた根木慎志さんが講演しました。パラリンピックの価値や歴史等について触れた後、根木さんが全国各地の学校で行っている活動について話しました。

 

当初、障害の困難さを話してほしいという依頼で講演をした際、子どもたちに「大変」「かわいそう」と捉えられてしまったと振り返ります。ある時、競技用車椅子で走り、シュートを決めると「すごい!かっこいい!」と子どもたちから歓声があがりました。「その時、一人の人間として輝いている瞬間を伝えたいと思った。それから講演の形を変え、車椅子バスケを実際に見たり、やったりすることを通じて、楽しさや難しさを伝えている」と言います。そして「楽しかった」「すごい人が来た」というだけでは終わらないよう、障害のこともしっかり話します。「困ることが障害とするならば、車椅子バスケをするときに私に障害は無い。でも、みんなの教室に行くとなればどうか、子どもたちに聞くと『階段が障害』と答える。ではそれをつくったのは、と問いかけていくと、社会が障害をつくっていることに気づいていく。具体的に、こんなことに困る、でもこうすると困ることがなくなるということをきちんと伝えている」と話します。

 

そして「障害の種類もさまざまであれば、困ることも、楽しみも違う。その違いを互いに理解し、助け合えば、一人ひとりが素敵に輝ける社会がつくれる」と結びました。

取材先
名称
東京都
概要
東京都
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2019/11/05/07.html

日本電気株式会社(NEC)
https://jpn.nec.com/

NPO東京ユニバーサルデザイン・コミュニケーターズ(TUDC)
http://genki365.net/gnkk22/mypage/index.php?gid=G0000197
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