斎藤 寿子さん
あらまし
- さまざまなスポーツの魅力を発信する、ライターの斎藤寿子さんにお話を伺いました。
片足でアルペンスキーができるなんて!
私は小さいころからスポーツと文章を書くことが大好きで、小学生のころから周りに「スポーツライターになる!」と宣言していました。大学卒業後、スポーツとは関係のない業界紙や編集の仕事を経て、スポーツ専門サイトでのライターなったのが10年前。昨年からは、スポーツ全般を扱うフリーライターとして活動しています。
障害者スポーツに強く興味を持ったのは、社会人になって数年後のことです。交通事故で左脚を切断した中学生の男の子がアルペンスキーをしている映像を見て、「すごい!どうやって片足でバランスを取っているんだろう」と疑問に思ったことが始まりでした。その男の子というのが、今やパラリンピックに3回も出場している三澤拓選手。数年後、彼を取材した時は感慨深いものがありました。
その後、スポーツサイトを運営する会社に勤めていた折、障害者スポーツ専門のサイトを立ち上たNPO法人から会社に依頼があり、障害者スポーツの担当を務めることになりました。「いつかやりたい」と機会をうかがっていた私にとっては、願ってもないことでした。
しかし、私は知識や情報だけで書くことが苦手で、現場に行って、あるいは人に会って、何かを感じて初めて言葉が浮かんできます。そのため、最初は障害者スポーツを見て何も感じなかったらどうしよう、と不安でした。でも、実際に見てみたら、健常者のスポーツと同じように、熱中している自分がいたんです。そして、「何でこんなことができるんだろう」、「どんなふうに鍛えているんだろう」と、頭の中は取材したいことでいっぱいになっていました。
選手ひとり一人に向きあってスポーツの感動を伝えたい
ただ、いざ取材をするとなると、「車椅子の選手には、同じ目線になるように膝をついて話をしないと失礼になるのかな」と考えたり、文章を書く際にも、「障害のことって、どこまで書けばいいんだろう」と悩んだこともありました。でも、いろいろな選手と会って取材をして、「必要だと思えばやればいいし、書けばいい」と思うようになったんです。それからは、変に身構えたりしなくなりました。 |
私は「運」と「縁」だけは誰にも負けない自信があるんです。障害者スポーツと出会うことができたのも、念願のスポーツライターとして活動しているのも、「運」と「縁」でつながった、たくさんの人たちの応援や支えがあるからです。夢をあきらめかけたこともあったけれど、やっぱり私はスポーツが大好きで、スポーツライター以外の仕事なんて考えられないのです。だから健常者、障害者に関係なく、選手ひとり一人に向き合い、スポーツのすばらしさを精一杯伝えることが、支えてくれる人たちへの恩返しであり、私の役目だと思っています。
スポーツファンなら一度は生で観戦してほしい
2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まってから、障害者スポーツに関する報道は急増しています。ただ、残念なのは、実際に会場に足を運んで観戦する人の数が以前とほとんど変わっていない気がすることです。ぜひこの機会に、生で障害者スポーツを見てほしいと思っています。特に自分が経験したことのある競技を見ると、難しさがわかる分、選手のすごさに気づきやすいかもしれません。おもしろいかおもしろくないかを判断するのは、一度自分の目で見てからでも遅くはないはずです。 |
2020年は、多くの人が障害者スポーツに実際にふれるきっかけの年になってほしいと思っています。そのためにもあと4年、ライターである私に何ができるかを考えながら、日々スポーツの魅力を発信していきたいと思っています。