(社福)二葉保育園 児童養護施設「二葉むさしが丘学園」栄養士 田中大介さん
あらまし
- 児童養護施設の栄養士として毎日の「食」を支える田中大介さんのおしごとの魅力をお伝えします。
高齢・保育分野を経て児童養護へ
両親が栄養士だったこともあり、高校に進学する頃には栄養士を一つの職種として意識していました。小さい頃からずっとサッカーをやっていたので、当時はスポーツ分野の栄養士になりたいと考えていました。
管理栄養士の資格を取得して最初に就職したのは、特養や老健が併設された高齢者複合施設です。学んだ知識を使って実際にマネジメントをしてみたいと思ったのです。栄養面から利用者のケアマネジメントを行うという意味で、専門職としての知識を生かせる職場でした。
その後、以前から子ども分野に関心があったので保育園に転職したのですが、結婚や子どもの誕生など自分自身の環境が大きく変わったため、再び転職を決意し、二葉むさしが丘学園に就職しました。実は応募段階では保育園での募集だと思っていたので児童養護施設のことは詳しく知らなかったのですが、子どもの成長段階に関わるという点では同じだと思い、飛び込んでみました。
栄養士の業務、その他の業務
栄養士としての仕事内容は、毎日の食事を安定的に提供できるよう、献立を考えて食材を発注することです。調理は基本的には4人の調理員が行いますが、自分で調理することもあります。規模は違いますが、保育園時代は発注から調理まですべて一人でやっていたので、そこは大きな違いです。他には子どもの話を聞いたり、ケアワーカーのフォローをしたりと、施設の中で必要ないろいろなことやっています。実は「その他」の業務の方が多いかもしれません(笑)。極端に言うと「その他」の業務が大事とも言えます。
また、食事は毎日のことなので、子どもたちからは「これは嫌い」「あれはいやだ」と不満を言われることの方が多いくらいです。それだけ子どもたちは、日々のさまざまな想いを食卓を通して表現していると思います。
栄養士として仕事を続けるうちに、より直接的に子どもたちと関わることができるケアワーカーへの異動を考えた時期もありました。しかし、栄養士としてできることがまだまだたくさんあると思い、続けています。
環境を整え、続けることの意義
食べることは大事なことですが、あまりにも日常的過ぎるので見過ごされてしまう部分があります。施設はさまざまな環境で育ってきた子どもや職員が集まって生活をする場です。食事をおいしく味わいながら食べられる環境づくりは、まだ課題があると感じます。栄養士は一人ひとりの状況を把握しながら、適切な環境を整えるような働きかけをする必要があります。
施設は子どもたちが社会に巣立っていった後、立ち返る場所です。施設での体験が、この先いろいろな経験をしていく中で実を結ぶことになるので、やはり日常的な場面で関わることがとても大事ですし、続けることの意義や取り扱うものの重みを感じます。
また東社協児童部会の給食研究会では、ここ数年、児童養護施設における栄養マネジメントについて研究しており、事例検討を重ねています。取組みの成果や自分たちの専門性をいかに子どもや施設の実践に還元し、さらにそれを社会に発信していけるかがこれからの課題です。
成長を見届けることがやりがい
私たちには子どもたちを社会に送り出していく責任や役割があります。目に見える成果がすぐに現れる仕事ではありませんが、子どもたちを育て、成長を見守っていくことに大きなやりがいを感じています。毎日ごはんをおいしく食べるという当たり前の日常の尊さを子どもたちに伝えて、将来、「あれ食べたな」「これ食べたいな」「あれどうやって作るんだっけ?」「味噌汁、やっぱいいわー」など思い出してもらえたらうれしいです。
プロフィール
- 田中 大介さん
社会福祉法人二葉保育園/児童養護施設 二葉むさしが丘学園栄養士
高齢者複合施設や保育園で栄養士として勤務した後、平成21年から現職。
東社協児童部会給食研究会会長。
http://www.futaba-yuka.or.jp/int_musashi/