(社福)岩手県社会福祉協議会
東日本大震災をふまえ、災害派遣福祉チームを創設
掲載日:2017年12月12日
ブックレット番号:2 事例番号:16
岩手県盛岡市/平成25年3月現在

 災害派遣福祉チーム(DWAT)の創設

岩手県社協では、現在、県内の職能団体等が連携し、災害時に福祉関係の専門職がチームを組んで早期から支援を行っていく災害派遣福祉チームの検討を行っています。これは、今回の東日本大震災で災害時要援護者に対する支援の課題が大きな問題となったためです。

東日本大震災では、岩手県内に300か所以上の避難所が設置されましたが、障害のある人たちの中には避難所以外で避難せざるを得ない状況があったり、避難所で要援護者支援への適切な支援が得られなかったり、関係機関の中で福祉避難所の情報が共有されなかったりしました。

また、前出の災害ボランティアの関係でも、たとえば、障害者施設などでは、一般のボランティアが一生懸命活動しても、専門的知識等がないために逆に負担になってしまうことがありました。

そこで、平成24 年3月に「災害派遣福祉チームの組織化に向けた要望書」を岩手県に提出し、具体的な検討を始めています。要望を行うにあたっては、岩手県社会福祉士会、岩手県介護福祉士会、岩手県地域包括・在宅介護支援センター協議会、岩手県介護支援専門員協会、岩手県精神保健福祉士会、岩手県ホームヘルパー協議会、岩手県医療ソーシャルワーカー協会、岩手県介護老人保健施設協会、いわてリハビリテーションセンター、岩手県認知症高齢者グループホーム協会、岩手県社会福祉協議会の11 団体で県知事へ要望書を出しました。

具体的には、24年4月以降、災害派遣福祉チームの組織化に向けたワーキング会議を開催しており、避難所における課題やチーム組織化に向けての課題整理を行い、運営要綱、活動マニュアルを作成し、チーム員の訓練内容、活動費用について検討しています。また、災害発生から5日間を急性期と位置づけて、災害時の急性期から中長期への段階的支援のあり方を検討しています。こうした検討を経て、25年度中にチームを創設する予定になっています。

災害派遣福祉チームは県内の福祉専門職の中から、編成されて現地へ行き支援活動を行いますが、医療チーム、保健師チーム、社会福祉協議会ボランティアセンターなどの関係団体等との連携を行い、被災者支援にあたります。

災害派遣福祉チームの課題としては、個人情報の共有が大きな課題として挙げられています。東日本大震災では、行政側からの名簿情報の提供はほとんどなく、目視あるいは問診で避難所にいる要援護者のスクリーニングを行いました。平成24 年4月1日現在で、岩手県の場合、33市町村のうち12 市町村が災害時要援護者名簿策定しています。いわて障がい福祉復興支援センター所長の小田原照雄さんは「行政が持っている名簿を情報共有できると、避難所での要援護者のスクリーニングもより効率的にできる」と話します。

また、災害福祉派遣チームの受入れ先となる被災地の市町村行政との連携も課題となっています。事業を所管する福祉人材研修部長の畠山泰彦さんは「避難所など派遣先等での災害派遣福祉チームの認知位置づけが課題。突然チームが行っても何のチームなのか受け入れるほうも混乱をしてしまうので、県や市町村の地域防災計画の中に明確に位置づけられるようにしていくことが必要である」と話します。

なお、岩手県で進められている災害派遣福祉チームの構想を受け、厚生労働省においても災害福祉広域支援事業として全国を通じたネットワークの構想について検討が進められています。

 

【県に要望した災害派遣福祉チームのイメージ】

 

 

 

取材先
名称
(社福)岩手県社会福祉協議会
概要
(社福)岩手県社会福祉協議会
http://www.iwate-shakyo.or.jp/
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