彰栄保育福祉専門学校 副校長 加藤 啓さん
養成校生徒の入学から卒業まで―保育士養成校の立場より
掲載日:2017年11月29日
2017年1月号 連載

彰栄保育福祉専門学校 副校長 加藤 啓さん

あらまし

  • あらゆる種別で人材不足が喫緊の課題となる中で本号では、保育士養成校の立場より、養成校へ入学する生徒の入学から卒業までの状況について、彰栄保育福祉専門学校副校長の加藤啓さんよりご寄稿いただきました。

 

保育士養成施設(以下「養成校」)の多くは、全国保育士養成協議会(略称「保養協」)の会員となっています。平成28年6月現在、会員は全国で521校を数えます。東京都内の会員は60校、内訳は大学26、短大14、専門学校20となっています。都内では、この10年間で14校増えていますが、大学の増加が著しいことがわかります(表参照)。

 

当校は、保育士養成校であり、かつ文部科学省から幼稚園教員養成機関の指定を受けている修業年限2年、入学定員120人の専門学校です。大学、短大、専門学校という学校種それぞれに、教育の特徴や学生の状況などは異なると思いますが、以下当校の様子をお伝えすることを通して、養成校の理解を深めていただく手がかりの一つとしていただければ幸いです。

 

入学動機と学校選択

学生たちの入学動機は、大きく3つから成り立っています。一つ目は、自分が通っていた保育園や幼稚園の保育者にあこがれ、自分もそのようになりたいという気持ちを幼少の頃から抱き続けているというものです。二つ目は、自分の周りに小さな子がいて、その子たちの面倒を見るなどするうちに、子どもに興味を持ち保育者をめざすというものであり、三つ目は中学生時の職場体験等で保育園や幼稚園に行き、そこで保育に興味を抱いたというものです。

 

選択肢として大学や短大もある中で専門学校を選んだ理由ですが、「最短期間で資格を取得し、早く保育者として仕事がしたいから」、「職業に就くための教育という点では専門学校がいいと思ったから」といった声が多く聞かれます。かなり早い段階から保育への興味・関心を強く持ち、保育職に就くことへの意欲が高い学生が入学しているという状況です。

 

教育と学生指導

専門学校が行う教育の特色は、職業教育の一語に尽きます。厚労省の定める教科目を修めれば保育士資格は取得できるわけですが、それだけで保育にふさわしい人材養成ができるとは限りません。人として、社会人として、子どもの発達を支える専門職として身につけるべき事柄は、教科外の学校生活の中で培われる部分も多いと思います。当校では、学年を3クラスに分け、それぞれに担任教員を配置し、日頃の学生生活のことはもちろん、個人的な悩み事から家庭問題に至るまで、クラス担任が主に対応します。それらのやり取りを通じて、学生は人間性を高めていくヒントをつかんでくれているものと思います。

 

また、いくつかの学校行事は、企画から遂行までを学生主体で行っています。学生たちもこれに積極的に取組む姿勢を持ち、初対面の者同士でもすぐに馴染み合い、互いに協力し合って作業をすすめる態勢をつくっていきます。こういった経験をもとにして、学生は、責任感や使命感を持ち、協調・協力して事を運ぶことの大切さを学んでいきます。

学園祭教科発表の一場面

 

就職活動

養成校を卒業した者の就職先については、学校種による違いが見られます。大学では、4割強が保育所に就職するものの、保育・福祉分野以外に就職する者がおよそ25%となっています。短大、専門学校は、保育所に就職する者が半数を超え、保育・福祉分野以外への就職は、20%を切っています(図参照)。

 

当校では、就職希望者のほぼ全員が保育・福祉分野への就職を希望しており、おおよそ6割が保育所、2割が幼稚園、2割が施設等へ就職しています。このうち、学校と実習契約を結んでいる保育所・施設等に就職する学生は、全体の三分の一ほどを占めます。人材不足が言われ始めた平成22年頃から学校に寄せられる求人件数が増加し、昨年度は卒業予定者約100人に対して、延べ1千件以上の求人をいただく状況でした。極端な「売り手市場」となっており、中には見学におじゃました時点で内々定をいただいてくるような学生もおります。しかし、学校としては、保育所や施設の運営方針等を十分に理解した上で採用試験を受けるよう指導しています。それは、この点が十分に理解、納得できていない状態での就職は、早期退職・離職につながるおそれがあると経験上感じているからです。

 

就職活動については、「就職活動の手引き」の配付や全体オリエンテーションの実施、時宜に応じた講座等を開いて、必要な基礎知識やマナーを教えています。また、就職担当の教職員や担任による個別的なサポートも行いながら、学生の希望する方向での活動をサポートしています。学生たちが受験する際に注目しているポイントとしては、待遇面を気にしないわけではありませんが、むしろ「自分がめざそうとしている保育ができそうか」、「保育所の雰囲気が自分に合っているか」といった事柄、言ってみれば「働き心地」という、数値や目に見える形では表しにくいものを重視する傾向がうかがえます。就職してから後の昇格や組織内での地位などは、新卒者にとっては大きな関心事ではないのかもしれません。

 

就職した卒業生たちが、しばしば学校を訪ねてくるのですが、その際によく「仕事の大変さ」や「勤務条件・待遇面」が話題になります。どちらも学生時代の実習等で、ある程度は承知できていることではありますが、実際に現場に出てみたら自分の想像を超える経験があったということだと思います。些細な愚痴や悩みかもしれませんが、話に耳を傾けて対応することで、仕事に向けての志気が保たれていくように思えます。学生にとっての出身校は、仕事を続けていく際のエネルギー等を補給する「母港」に例えることができます。卒業生には、もっと「母港」を活用してもらいたいと思うと同時に、就職先との連携も含めて、それに応えられるフォローアップ体制をつくる必要性を強く感じています。

 

プロフィール

  • 加藤 啓さん
    公務員心理職として相談業務や児童福祉業務に携わる。退職後、特別養護老人ホーム施設長などを経て養成校教員となる。

取材先
名称
彰栄保育福祉専門学校 副校長 加藤 啓さん
概要
彰栄保育福祉専門学校
http://www.shoei.ac.jp/
タグ
関連特設ページ