現代の日本では貧困の連鎖により教育の機会や将来の可能性が閉ざされてしまう子どもたちがいます。昨年、貧困により子どもたちの未来が閉ざされないよう社会全体で支援する「子供の未来応援国民運動」がはじまりました。その一環として平成28年3月12日(土)に内閣府主催「子供の貧困対策フォーラムin東京」が中央合同庁舎講堂にて開催されました。子どもの貧困対策に関わる行政・教育関係者や民間支援団体、民間企業、その他関心のある約160名が集まりました。
日本における貧困とは
基調講演は、立教大学コミュニティ福祉学部教授の湯澤直美さんから「日本における子供の貧困問題と私達にできること」をテーマに行われました。
はじめに、湯澤さんは近年の日本の相対的貧困率の高さについて「未就学期から、すでに経済的な理由で子どもの大学進学を諦めている家庭がある」と子どもを持つ世帯にとって教育費が重くのしかかっている実態を話しました。また、日本はひとり親世帯の貧困率が諸外国と比較して突出していることについて触れ、「これらの背景の一つには女性の深刻なワーキングプア問題がある。個人の努力だけで貧困から抜け出すことは難しい」と、雇用の改善、社会保障の充実、教育格差や地域格差を解消させる必要性を指摘しました。
夢を、貧困につぶさせない
パネルディスカッションでは3名が登壇しました。
NPO法人豊島子どもWAKUWAKUネットワーク事務局長の天野敬子さんは、同法人において地域住民が主体となり行われているプレーパーク、学習支援、子ども食堂などの活動を紹介し、さまざまな形の居場所をつくって関係を紡ぎ、孤立させず適切な支援につなぐ地域ネットワークの必要性を話しました。
足立区政策経営部子どもの貧困対策担当部長の秋生修一郎さんは、区が横断的、総合的に貧困対策に取組んでいる「未来へつなぐ あだちプロジェクト」の概要を説明し、子どもたちが自分の人生を切り拓き、社会で自立していくために「生き抜く力」を身につけていってほしいと話しました。
ライオンズクラブ国際協会FWT330複合地区コーディネーター・ロイヤル開発株式会社代表取締役小川晶子さんは学習支援や食事支援などの支援を継続するためには運営可能なシステムが必要であるとし、インターネットの広告収入を利用した資金収集の実践報告を行いました。
最後に湯澤さんは「貧困世帯の子どもが持つ社会的障壁の可視化と除去のためには、一人でも多くの子どもたちが重要な他者に出会うことと、そのためのツールがあるかが重要。若者が夢を持ち続けられ、分断されず包摂される社会をめざし、子どもの人権を保障する当たり前の社会づくりとして国民運動を行う意味がある」と締めくくりました。