(社福)東京都社会福祉協議会知的発達障害部会、東京都発達障害支援協会
「平成28年熊本地震」障害者施設の被害状況
掲載日:2017年12月21日
2016年6月号 TOPICS

平成28年5月11日に視察した社会福祉法人リデルライトホームにて

 

あらまし

  • 平成28年4月14日および16日に発生した「平成28年熊本地震」では、熊本県、大分県等を中心に、大きな被害がもたらされています。謹んでお見舞い申し上げます。

 

熊本地震合同対策会議

東社協知的発達障害部会は、東京都発達障害支援協会と協働して熊本地震合同対策本部を立ち上げ、部会から3名の職員を平成28年5月9日から12日の期間で熊本に派遣し、現地の状況把握と情報収集を行いました。5月13日にはその報告会として熊本地震合同対策会議が開催され、派遣された職員による現地の障害者施設・事業所の現状報告が行われました。

 

現地の施設・利用者・職員の状況

現地に派遣された、社会福祉法人正夢の会の岩田雅利さん、社会福祉法人滝乃川学園の高瀬祐二さん、社会福祉法人原町成年寮の冨永浩一さんの3名から、以下の通り、現地の5法人6施設の状況が報告されました。

 

社会福祉法人三気の会の入所、居宅、グループホーム等の事業を行う障がい者支援施設「三気の里」は、16日の本震で震度6強を観測した菊池郡大津町に位置し、利用者は全員避難していて無事だったものの、グループホーム3か所が被災しました。利用者が1名、橋の崩落によって通所できず、両親が自宅で終日対応している状況です。職員も1名が避難所で生活し、1名が車中生活を強いられていました。被災初期に他の法人から人的支援を受けたものの、現在では職員のローテーション勤務に戻しています。同じく大津町にある三気の会の相談支援事業所「わっふる」では、職員1名が被災し、事務所も一部破損しましたが、相談支援等の業務を継続しており、県内の障害者手帳を所持している利用者の状況把握にあたっています。

 

社会福祉法人菊愛会は、震度6強を観測した菊池市に本部があり、入所、在宅、就労支援等の施設を運営していました。そのうち入所施設の被害が特に大きかったものの修復が完了し、利用者は現在施設に戻っています。しかし、職員が2週間休みなく勤務するなど厳しい状況が続き、一部の施設では、一時人的支援を受入れました。

 

社会福祉法人慶信会の「城南学園」は震度6強を観測した熊本市に施設があり、建物が大きく破損し、事業用地の移転も検討されています。九州若手福祉従事者ネットワーク、熊本県社協、熊本県セルプセンターと連携して、利用者への支援を継続しています。

 

NPO法人の運営する障害者就労支援施設「にしはらたんぽぽハウス」は、断層の真上に位置し、震度7を観測した西原村にあったため、建物の基盤が大きく損傷し、倒壊の危険があるなか、職員や利用者が寝泊りをしています。他団体と連携して授産品の生産を一部再開しているものの、建物の修復等の対応は追いついていません。

 

社会福祉法人熊本市社会福祉事業団の「熊本市発達障がい者支援センターみなわ」では、行政や支援団体の活動の情報が集約されており、熊本市が障害福祉サービス受給者証の情報を開示し、各相談事業所も任意で登録情報の開示をしていました。

 

障害の特性にあわせた支援のあり方

岩田さんは、「阪神大震災、東日本大震災等の経験をもとに、サービス受給者の情報を行政等が早期に開示し、支援団体も発災初期から動くことができていたのが印象的だった。ただ、障害者手帳を持っている人の把握はすすんでいるが、手帳を持っていない人、被災を機に手帳を取得したいという人への支援が難しいと現地で伺った。東京での大規模災害を想定して、このような人たちへの対応をあらかじめ考えておく必要がある」と、行政と連携した初期対応の重要性を強調しました。

 

高瀬さんは、「『災害弱者』とひとくくりに言われるが、小さい子どもや高齢者、身体障害者のニーズと、発達障害者のニーズでは大きく異なる部分がある。広いスペースがあり、大きな声を出しても問題ないような、発達障害者専用の避難施設を設ける等、障害の特性に応じた支援が必要だと感じた」と、現地で受けた印象をもとに報告しました。

 

冨永さんは、「被害は局所的で、地元の法人同士でネットワークをつくり、助け合っている。東京の法人は主体的に支援をするのではなく、継続してやりとりをするなかで信頼関係を築き、地域で対応する中でもこぼれてしまったニーズについて、支援をするのが適切なのではないか」と話しました。

 

利用者支援のため職員派遣を決定

これらの報告と現地の支援機関との調整をもとに、東社協知的発達障害部会と東京都発達障害支援協会は、三気の里の利用者送迎支援のため、5月22日から部会の施設職員を派遣しています。期間は1か月程度を予定しており、継続して1名の職員が支援を行うとともに、複数の職員が入れ替わりで同行し、支援に従事する予定です。

 

→関連記事「地域の力が感じられた支援」 (社福)原町成年寮 冨永 浩一さん

取材先
名称
(社福)東京都社会福祉協議会知的発達障害部会、東京都発達障害支援協会
概要
(社福)東京都社会福祉協議会・知的発達障害部会
URL:https://www.tcsw.tvac.or.jp/bukai/chitekisyogai.html

東京都発達障害支援協会
URL:http://t-shien.jp/
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