あらまし
- 学校と地域で生徒の学びを応援する「都立新宿山吹高校」をみ~つけた!
共生をめざすボランティア(略称:共ボラ)の体験活動で地域の防災訓練に参加した生徒たちは、最初は何をすればいいか戸惑っていた。しかし、高齢者や子どもたちとコミュニケーションをするなかで自ら動き始めた。生徒は地域とのかかわりを通して、自分のできることを知る機会を得ている」と、都立新宿山吹高校校長の梶山隆さんは、生徒たちの変化を話します。
「共ボラ」は、新宿山吹高校の教科「奉仕」の科目名です。地域の福祉施設やNPOとの協力を活かし、生徒の学びと気づきを支える科目として、8年目を迎えています。
「共ボラ」として
平成19年4月から都立高校全課程で科目「奉仕」が必修となりました。開始前年から新宿山吹高校では検討委員会を立ち上げ、協議を重ねてきました。当時、新宿山吹高校教員として検討委員会委員長を務めていた後藤務さん(現在はNPO法人VCAS所属)は、「高校生のボランティア活動に詳しい教員に相談したり、内部の教員向けのフリートーキングを開催して、新科目の共通認識づくりをした」と振り返ります。検討委員会のメンバーは、新宿区社協主催の教員向け地域学習講座にも参加しました。そこで新宿区社協との関係ができ、授業の計画やボランティア団体・福祉施設の紹介等の協力を得て、実施に向けて動き出します。
こうした検討の結果、科目名を「共生をめざすボランティア」とし、「ボランティアの意義を理解させ、地域社会の具体的ニーズに応じた活動・体験を通し、共生をめざす市民を育成する」という独自の目標を決定しました。
学校がつなぐ「場」
「共ボラ」のカリキュラムは、事前学習、体験活動、事後学習の3部構成です。事前学習ではボランティア概論を学びその後、講演会とワークショップに参加します。講演は新宿区社協の協力を得ながら、社協職員やブラインドサッカーのボランティアに携わる大学生、国際協力や人権分野の関係者等に依頼しています。そして、地域の福祉施設やボランティア団体が体育館に集まり、活動紹介をするワークショップを開催します。この事前学習を踏まえ、生徒は土日や夏休み等に、学校が紹介した体験活動や自分で探した体験活動をしています。
「新宿区社協提案の会合で、地域の施設・団体が各ブースで説明会を行うというワークショップの構想ができた。生徒の体験活動先の選択肢も広がり、団体同士も学校を拠点に連携ができたようだ」と後藤さんは話します。
生徒にとっていいものをつくる
そして年4回程度、学校・施設・団体連絡会を開催するようになりました。そこでは「共ボラ」の年間計画や体験活動の内容を話し合います。現在、6名の教員からなるボランティア委員会委員長を務める大野智久さんは「学校も地域の協力団体も、『共ボラ』は生徒にいいものにしたいと同じ方向をみている。互いにできることを明確にしながら、いいアイディアを出し合える場になっている」と説明します。
こうした連携のもと、生徒は知的障がい者が通う実習所での祭りの手伝いや、新宿区手話サークルでの手話体験など、興味を持った活動に参加し、地域で共に生きることを学びます。
生徒主体の「共ボラ」へ
大野さんは「参加した生徒は『やってみると楽しかった』と言う。今まで見えなかった自分のできることを、体験活動のつながりで気づきはじめる」と話します。漫画が得意な生徒は、「共ボラ」の案内冊子にイラストを描き、より親しみやすいものにしました。また、映像が得意な生徒はボランティアで福祉施設の映像資料制作の手伝いをする予定です。「『共ボラ』では、全てのおぜん立てはせず、一方で放置せずの距離感が大事。大人がきっかけを与えれば、生徒たちは様々な力を主体的に発揮する」と大野さんは考えます。
学校と地域で支えてきた「共ボラ」は、生徒自身がもっているもの、地域がもっているものなど、今ある力に注目して、さらなる充実を目指します。
都立新宿山吹高校
- 新宿山吹高校は単位制の昼夜間開校の定時制課程(普通科、情報科)と通信制課程(普通科)が併設されている。「共生をめざすボランティア」(略称:共ボラ)は、教科「奉仕」の新宿山吹高校定時制での科目名。1年次生を対象にしており、地域や施設等で、さまざまな体験活動をしている。毎年12月の文化祭では、一般の来場者向けに「共ボラ」の活動報告会を生徒とともに行っている。
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