左から、東村山市社協法人経営・まちづくり推進課長 武者吉和さん、(社福)白十字会理事の西岡修さん、
東村山市社協法人運営係 瀧澤純さん、内河あや子さん
あらまし
- 平成28年9月に設立した東京都地域公益活動推進協議会は、(1)各法人、(2)地域(区市町村域)の連携、(3)広域(東京都全域)の連携の三層の取組みにより、社会福祉法人の「地域における公益的な取組み(以下、地域公益活動)」を推進しています。
- 東京都地域公益活動推進協議会では、地域ネットワークの立ち上げのための事務費や、複数法人の連携事業開始時期の事業費の助成を行うとともに、地域ネットワーク関係者連絡会等を開催し、他の地域と情報交換できる機会をつくっています。
都内初の市内全法人参加の連絡会
東村山市では、国で社会福祉法人のあり方について議論されていた平成26年度から、社会福祉法人の地域ネットワーク化に取組んできました。27年2月には市内の法人が集まり連絡会発足に向けた準備会を開催。その後は東村山市社協を事務局として、3法人の代表による設立準備世話人会を毎月開催し、法人向けアンケートの実施や要綱・事業計画・予算等の作成をすすめました。
27年度には東社協社会貢献事業検討委員会のモデル指定を受け、同年7月に市内全27法人の参加を得て「東村山市内社会福祉法人連絡会」(以下、連絡会)を設立。社会貢献活動の推進を目的として、地域内に所在するもしくは事業を経営するすべての社会福祉法人が参加する連絡会の発足は、都内で初めてのことでした。
設立総会では代表幹事1名、副代表幹事2名、監査役2名が選出され、これらの役員で構成する幹事会を中心に各事業を企画・実施していく体制を整えました。
全法人が参加する「暮らしの相談ステーション」
暮らしの相談ステーションは、連絡会に加入する全法人が地域公益活動として実施している相談事業です。事業の開始にあたっては、各分野から選出した委員10名による相談事業検討委員会を設置し、法人単独ではなくネットワークを生かした連携事業としてのしくみを約1年かけて検討しました。そして29年10月、市内全27法人の33施設が、専任の担当者を配置した相談窓口を開設するに至りました。東京都地域公益活動推進協議会の助成金を活用して共通ののぼり旗を作成し、各法人が相談窓口を開設している時間帯に旗を立てています。
暮らしの相談ステーションは、福祉に限定せず、市民からのあらゆる相談を受けることとしています。相談を受けた施設は内容に応じて、情報提供したり、本人の同意を得て行政や関係機関につないだり、または自施設で対応をします。つなぎ先や対応方法がわからない場合は、事務局である社協に連絡をします。
29年度の暮らしの相談ステーションの開設から半年間(29年10月〜30年3月)の相談件数は、全体で30件。具体的には、老後の生き方や、障害のある方の将来、生活支援などがありました。
相談担当者からは、「本来業務と地域公益活動の線引きが難しく、件数としてカウントしにくい」「記録として残す必要があると判断したものだけカウントした」「いろいろな相談を受けて対応しているが、『暮らしの相談ステーション』としての意識はなく、記録を取らなかった」など、判別やカウント方法についての意見が多く上がりました。
連絡会代表幹事で(社福)村山苑理事長の品川卓正さんは、「相談件数はそれほど多くないが、新しい取組みを始めたからこそわかったこと。福祉に関係ない相談も積極的に受けていくよう法人からしかけていくことが必要。いろいろな関わりの中から福祉課題につながることもある」と指摘します。そして「民生児童委員や社協の福祉協力員の力も大きいので連携していきたい。またフードドライブなどを実施して、社会福祉法人の活動に関心をもってもらうきっかけにしたい」と、活性化への意気込みを話します。
共通ののぼり旗は、各法人が相談窓口を開設している時間帯に掲出されている。
地域との関係をつくり、社会福祉法人を知ってもらう
東村山市には13の町があり、それぞれの町ごとに社協が事務局を担う地域懇談会を組織しています。地域懇談会は自治会・町会や福祉協力員のほか、社会福祉法人や地域のさまざまな機関が参加しており、地域課題に応じた取組みを展開しています。
例えば諏訪町懇談会では、介護予防・見守り・防災を重点テーマとして、「諏訪町ふれあいカーニバル介護予防大作戦」の実施や地域情報をまとめた「すわごよみ」の発行、高齢者の見守りネットワーク「諏訪町ゆっと」などを行っています。連絡会の副代表幹事で(社福)白十字会理事の西岡修さんは「諏訪町は住民と施設の距離が近く、白十字ホームとして長年、密接な関わりをもってきた」と話します。西岡さん自身も地域懇談会の幹事として、中心的な役割を果たしています。
富士見町には分野を超えた25の福祉施設による「ふじみ町福祉施設連絡会」があります。ここでは「ふふふ(ふじみ・ふくし・ふれあい)カレンダー」を発行して、施設の情報を地域に発信してきましたが、より地域との交流を深めていくため、富士見町地域懇談会へ参加し始めています。
東村山市社協法人経営・まちづくり推進課長の武者吉和さんは「社会福祉法人は施設の若手職員にどんどん地域に出ていくように言っている。職員は地域にとってマンパワーになることはもちろん、いろいろなことを教えてくれる存在でもある」と言います。同課法人運営係の瀧澤純さんは「東村山の中にも地域特性がある。施設も領域や得意分野によってそれぞれ地域との関わりをもっている」と施設と地域の関係は多様であることを指摘します。
西岡さんは「施設と地域のつながりが広がっているのは、社協の関わりがあってこそ」とし、「『特養』ならまだしも、『社会福祉法人』と言われても住民にはよくわからないのが現状。法人や事業所による地域との交流を続けていきながら、暮らしの中で困ったり悩んだりしたときに頼れるところが社会福祉法人なんだと知ってもらえたらいい」と話します。
このような取組みは現在、連絡会事業として位置づけられてはいませんが、各地域における好事例を市内で共有し、これからの連絡会の取組みに活かしていきます。
諏訪町では市内13町で実施する介護予防大作戦実行委員会を地域懇談会のメンバーで組織している。
http://www.hm-shakyo.or.jp/