特定非営利活動法人 国際活動市民中心(CINGA)
外国人からの相談には 福祉分野を横断する課題がある ~特定非営利活動法人 国際活動市民中心(CINGA)の取組み~
掲載日:2019年7月16日
2019年7月号  TOPICS

外国人総合相談支援センターでの相談の様子

 

入管法の改正等、近年の動きを受けて日本に住む外国人は250万人を超え、今後も増加が予想されています。しかし、外国人が住民として日本で生活する上では行政手続きや教育等、さまざまな課題に直面することがあります。

 

このような背景から外国人を支援する団体や窓口が各地に増えています。その団体の一つが、特定非営利活動法人 国際活動市民中心(Citizen’s Network for Global Activities ※以下、「CINGA〔シンガ〕」)です。CINGAは、多文化共生社会の構築を目指し、各分野の専門家が集い、市民活動を行っています。メンバーは、弁護士、日本語教師、精神科医、社会福祉士等で、外国人支援を行っている専門家約50名が活動しています。相談事業、コミュニケーション支援事業、調査研究事業のほか、行政等との連携事業を行っています。

 

外国人住民を生活の場である地域へつなぐ

相談や各種連携事業を手掛けるCINGAのコーディネーターである新居みどりさんは「CINGAの活動は地域に多文化、多言語の分野に関連した課題があった時に解決のために必要な人たちが集まり、プロジェクトをつくり、動くことを基本としている」と話します。例えば行政職員や社協職員から「地域に外国人が増えたけれど、関連する活動が何もない」といった相談が入ると、社会資源等の有無を含め、どのような活動をしていくか、行政や社協、地域の関係団体を主体に、彼らとともに考え、プロジェクトをつくっていきます。

 

また、CINGAでは、定期的に外国人専門家相談会を開催し、法務省からの受託事業である外国人総合相談支援センター(※1)においては行政手続きや生活に関する相談をワンストップで受けるなど、さまざまな相談事業を行っています。そこには、自治体や国際交流協会、エスニックコミュニティ(※2)から紹介され、外国人本人から相談が入ることがあります。また、外国人から相談を受けた行政や国際交流協会からは、そこでは対応しきれない複雑な相談が寄せられることもあります。

 

相談を受ける中で、新居さんは「外国人の相談を受ける窓口と地域の福祉の相談窓口がつながりきれていないことがもったいない」と課題を語ります。その理由として、外国人相談窓口は外国人の相談対応を一元的に行いますが、そこで受ける相談の中には福祉分野に横断的に関わることも多く、地域の支援者が関わった方が良い相談もあるからです。

 

その例として、ある国際関係団体から受けた相談があります。精神疾患の疑いがある相談者から頻繁に母語の相談窓口に電話があるため、より専門的に対応してもらえないか、という相談でした。本人に聞き取りをしたところ「精神疾患があり、就職活動をしているがどのように仕事を探したらよいのか」と悩んでいました。新居さんは、相談者は既に医療機関にかかり専門職の支援を受けており、かつ日本語が堪能なことから、CINGAで行っている外国人専門家相談につなぐよりも、本人に身近な地域の支援者につないだ方が良いと考えました。本人と関係をつくる中で居住地域を聞き、その地域の社協に「地域で支援してほしい外国人がいる。自分も一緒に行くのでその人を受け止めてほしい」と連絡し、地域につないだケースがありました。

 

外国人住民を支えるためのポイント

既に地域の福祉関係機関の窓口にも外国人住民に関する相談が入ってきています。外国人の相談を受ける際に意識するポイントが3つあります。ひとつは、「やさしい日本語(※3)」で対応することです。日本に暮らす外国人の多くが「やさしい日本語」であればコミュニケーションが取りやすいため、まずは特別視せず、いち住民として話をすることです。その上で、個別の専門的な対応が必要な場合には、可能な限り母語による通訳をつけることが望ましいでしょう。「相談者は限られた日本語で相談しなければならず、そのことで判断能力がないように見えてしまう。表面的に出てくる言葉が本人のすべてではないということを念頭におくことが大切」と新居さんは話します。

 

CINGAでは、東京都の助成金をうけ、「やさしい日本語」の出前講座や、児童相談所や社協等の公的な機関へ通訳者を派遣する少数言語通訳派遣事業(※4)を行っています。

 

2つ目のポイントが「在留資格」です。在留資格の種類はさまざまあり、その種類によって就労や生活サービスに制限があります。その人にあった適切な対応をするには、在留資格を把握しつつ、外国人相談窓口のような専門的な機関で在留資格に関する情報を得るなど、分野をまたがった連携を意識することが大切です。

 

3つ目に外国人特有のストレスがあります。日本に住む中で受けた差別、偏見が潜在的なストレスになっていることがあることを心に留めながら、相談者の声に耳を傾けることが求められます。

 

外国人が地域で暮らすときに、これら3つの壁(「言葉の壁」「制度の壁」「心の壁」)が問題をより複雑・長期化させることがあり、地域の支援者はこれを認識しておくことが必要です。

 

「外国人住民に関する相談があった際は、外国人相談支援窓口を活用していただきたい。CINGAも福祉分野の方々と顔の見える関係をつくり、連携していきたい」と語る新居さん。分野を超えてともに外国人住民を支えるために、福祉分野と多文化共生分野の連携が期待されます。

 

(※1)月~金9時~4時多言語で電話・対面にて相談対応可能 03-3202-5535

(※2)国籍や民族等でつくるコミュニティ。コミュニティ内で情報共有したり、パーティを開いたりと規模や活動は多岐にわたる。

(※3)いわゆる普通の日本語よりも平素で、日常生活が日本語で行える外国人にも理解されやすい日本語のこと。

(※4)詳細 http://www.cinga.or.jp/

 

  • 〈リレー式外国人のための無料・多言語・専門家相談会〉
    都内の国際関係団体が主催を持ち回りし、リレー式でワンストップ型の専門家相談会を行っています。外国人向けの相談会ですが、関係者からの相談も受け付けています。
  • 日程や場所等、詳細につきましては東京都国際交流委員会ホームページをご参照ください。
  • https://www.tokyo-icc.jp/relay_soudan/

 

取材先
名称
特定非営利活動法人 国際活動市民中心(CINGA)
概要
特定非営利活動法人 国際活動市民中心(CINGA)
http://www.cinga.or.jp/
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