(社福)慈愛会
目の前の問題は他人事ではない。女性福祉分野の活動を広く知らせたい
掲載日:2021年8月13日
2021年8月号 福祉のおしごと通信

社会福祉法人慈愛会 慈愛寮

支援員 堤 奈菜子さん

 

あらまし

  • 婦人保護施設で支援員として働く堤奈菜子さんに仕事の魅力についてお話しいただきました。

 

「母」を一人の女性として支援したい

福祉系の大学を卒業し、初めて就職したのは、母子生活支援施設でした。当時は新人だったこともあり、〝支援の形はこうあるべき〟といった固定観念が強く、利用者支援の難しさを感じていました。そんな中、利用者が自分の意思で退所を選択したケースがありました。支援者は、利用者の選択に寄り添いながら支援する役割があることに気づかされました。それからは、利用者の想いや選択を尊重した支援を心掛けるようになりました。

 

支援をしていく中で、乳児院や児童養護施設などの社会的養護を利用することになった時、子どもと離れて一人になった女性をどのように支えていけるのかということを考えるようになりました。次第に、支援対象である「母」を一人の女性としてとらえ、複眼的に支援をしてみたいと思うようになり、働いて4年目に、もともと関心のあった婦人保護施設への転職を決意しました。

 

短期間の中でも丁寧に、先を見据えた支援を展開していく

慈愛寮は周産期の支援に特化した施設です。支援員は、妊産婦に対し入所から退所後の生活が決まるまで、関係機関や内部の他職種との連絡調整を通して一貫して支援します。また、新生児の沐浴やミルクをあげるなどの育児フォローの手技も必要になります。支援を通して、前職での経験が活かされたと思うことが多々あります。前職では、慈愛寮からくる利用者を受け入れ、支援することもありましたが、今は母子生活支援施設に送り出すケースがあります。母子生活支援施設での生活のイメージができているからこそ、先を見据えた支援ができることが私の強みです。

 

一方で難しさも感じています。慈愛寮の平均的な利用期間は、産前1か月から産後2、3か月頃までの約3~4か月間です。「この短い期間の中で利用者さんと関係性が築けたのだろうか」と不安になることが多々ありますが、退所した後もお子さんの成長を経過報告してくださる方がいると、短期間しか利用していない慈愛寮のことを覚えてくださっていて嬉しく思うと同時に、この仕事のやりがいを感じます。

 

目の前の問題は他人事ではない

対人援助の仕事は、利用者のプラスな感情も、マイナスな感情もすべてを受け入れるので、自分のパワーが削られることもあります。家でも仕事のことを考えてしまっている時は、自分の中では〝黄色信号〟だと思っています。良い意味で、オンとオフを切り分けて、家では趣味に没頭したり、リラックスして過ごすことが、明日のより良い支援への原動力になると思っています。また、福祉の仕事は〝誰かのために〟と思いがちですが、私は〝自分のため〟に働いているという感覚を持っています。

 

特に女性福祉というと、女性の自己責任を問われる視線がまだまだ強いですが、実際には貧困や虐待、障害など社会の中で支え切れなかった問題が根底にあります。他人事ではなく、そういう問題を含む社会に私自身も生きているのだという意識を持って、利用者支援を通して社会の問題に向き合っていきたいと思っています。

 

女性福祉の活動を広く知らせたい

福祉の仕事というと、大変なイメージを持つ人が多いと思いますが、〝自分の生活とつながっていること〟だと考えると頑張ってみようと思えるのではないでしょうか。やってみたいと思う気持ちがあるのなら、気負わず、まずは挑戦してみてください。私自身は、今後も長くこの仕事を続けていきたいです。対人援助職は、自分の経験を活かすことができるとても魅力的な仕事だと思っています。より密度の濃い支援ができるよう、これからも経験を重ねていきたいです。

 

また、女性福祉分野の対象者は狭く見られがちです。女性支援の視点があれば適切な支援につながるケースも多々あるのではないかと思っています。一人でも多くの方が女性福祉の視点を持ち、この分野の活動が広がっていくよう、慈愛寮の実践から提起していきたいと思います。

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(社福)慈愛会
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