ユニクロ吉祥寺店 飯島桂代さん
あらまし
- 令和3年4月、ユニクロ吉祥寺店で、開店前の時間帯に障害がある方が安心して買い物ができるイベントが行われました。企画を担当した飯島桂代さんにお話を伺いました。
今につながる子育ての経験
14年前に武蔵野エリアのスタッフとして入社し、今は「地域施策」としての企画や新人教育などを担当しています。開店前に障害がある方に向けた営業時間を設けるイベントを企画した背景には、私自身の子育て経験があります。
私には、重度の自閉スペクトラム症と知的障害がある息子がいます。22歳になりましたが、「超」がつくほどの多動なので、いまだに目が離せません。どこまでも歩いていってしまうので、行方不明になることも度々あります。家から居なくなり、必死に探しまわって、明け方に東京ドームの近くを歩いているのを発見したこともありました。
体は丈夫なので、体調不良で学校から連絡がくることはありませんでしたが、ほかの子に噛みついてしまい、毎日どこかに謝りの連絡をしていました。経験則と母親の勘でどんな行動をするか、だんだん予想がつくようになりましたが、やっぱり大変です。
ただ、私自身がポジティブな性格なので、暗くなることはありませんでした。たくさんの人に支えられて彼を育ててきたからこそ、人に感謝する心を忘れないことやコミュニケーション力が身についたと思っています。子育てが一段落した今だから言えることでもありますが…。
気楽に買い物を楽しめる機会をつくりたい
ユニクロ吉祥寺店は「超・密着型店舗」として、吉祥寺のまちを地域の皆さんと共に盛り上げていくことをめざしています。その担当として、何ができるか考えていた時に、手ごわい息子を育ててきた自分の経験を活かしたいと思いました。
多動などの特性がある方の家族は、落ち着いて買い物ができません。例えば、並ぶことが苦手なので、試着室や会計の列では、何とかなだめながら並んでいても奇声を発してしまい気まずい思いをしたり、列から離れてどこかへ行ってしまうため、もう一度並びなおさなければいけなかったりします。服を着ないまま試着室を飛び出して行ってしまい、冷や汗をかくこともあります。
奇声や多動などは、障害特性の一つで本人の問題ではありませんが、周りからの視線を感じ、周囲への気遣いをしなければならないことは、家族にとって負担になります。
そうした大変さを知っているからこそ、買い物がしづらくサポートが必要な方、特にその家族に向けて、気楽に買い物を楽しめる機会をつくりたいと考えました。
開催にあたっては、ユニクロのスタッフだけでなく、これまでの子育てでつながっている人脈や行政、社会福祉協議会からも協力を得て、広報を行いました。
当日はたまたま自閉スペクトラム症がある方のみの参加でしたが、障害特性があることが共通の前提だったので、少しでも気楽に買い物してもらえたかなと思っています。実際に、家族連れで楽しそうに買い物をする姿を見た時には企画して良かったと思いました。買い物という目的だけでなく、自立に向けた買い物の練習として利用した方もいました。レジでのやりとりやセルフレジの使い方もご自身のペースでできます。スタッフ側のサポートもお客さんの希望によって配慮することができるので、日頃混み合う店内では難しい希望にも、丁寧に対応できました。
サポートが必要な方へのサービスも大切にしたい
今後は、リクエストがあった高齢者施設での出張販売を予定しています。また、今回のように、サポートを必要としている方のための営業時間を設ける企画も継続したいと思っています。これからも必要な方に手厚くサポートできる企画を考えていきたいです。
ユニクロ吉祥寺店に来て、誰もが買い物の楽しさだけではない「来て良かった」という気持ちになってもらえるような店舗づくりを担っていきたいと思います。
https://www.uniqlo.com/jp/ja/