「トミージー」こと富田浩生さん
あらまし
- 東京都心から南約1000kmの太平洋上に位置する自然豊かな小笠原村父島で、福祉車両を導入し、バリアフリーツアーを行う「TommyGWorld」の富田浩生さんにお話を伺いました。
憧れの地に移住、天職に出会った
北九州生まれの千葉県育ちで、自然は身近な存在でした。好きなことにはとことん没頭するタイプで、10代の頃に始めたサーフィンは、38年経った今でも続けています。22歳の頃、暖かい海でサーフィンがしたくて友達と初めて小笠原に行きました。美しい海や自然、穏やかな時間の流れに魅了され、約半年間過ごしました。その後、内地に戻って不動産業や防水工などの仕事を転々としていましたが、小笠原の景色が忘れられず、10年越しで移住を決断しました。今から約25年前、33歳の頃でした。
移住してからは、知り合いのツアー会社で20年働きました。人と話すことが好きな私にとって、まさに天職でした。趣味や仕事の経歴は私の会話の引き出しとなり、フレンドリーさが売りの「おもしろガイド:通称トミージー」として、旅行に来た方が楽しみながら小笠原の自然を感じられるツアーを心がけてきました。
福祉車両との出会い
平成29年、ツアー会社から独立し「TommyGWorld」を設立しました。私のツアーは6名までの少人数制としています。自然や、自由に暮らす生き物たちは環境の変化に敏感です。彼らを守りながら、旅行者に小笠原のありのままの姿を感じていただくには、少人数制が最適だと考えているからです。
20年以上のガイド歴を活かし「ほかのガイドがやっていないことをしたい」と模索していた時、車高の低い助手席リフトアップシート車を見つけました。その瞬間「これだ!」と思いました。平成23年に小笠原が世界自然遺産登録されて以降、高齢のお客様が増えてきたことや「身体が不自由だから小笠原旅行を諦めていた」という声を何度が耳にしたことがあったからです。私が大切にしている「多くの人に小笠原の魅力を感じてもらいたい」を叶えるには、福祉車両の導入は必須だと思いました。
ツアーで使用している福祉車両
ツアーを通して見えてきた福祉課題
福祉車両を導入して3年が経ちます。これまで、バリアフリーツアーをご案内したのは3組です。バリアフリーツアーは、丸一日、旅行者の希望を伺いながら観光地を案内します。旅行者からは「足腰が弱いが、リフトアップ車のおかげで、無理なく自然を感じることができた」「車椅子からの移乗や積み下ろしがスムーズに行える車両のため、介助者の負担も少ない」などの感想をもらっています。
ツアーを通して、小笠原のバリアフリーの現状が見えてきました。内地と島を結ぶ「おがさわら丸」は完全バリアフリーで、島内にも多目的トイレや駐車場が増えてきました。一方で、自然景勝地の多くは段差や階段が多く、バリアフリー対応の宿もまだ少ない状況があります。私ができることは、移動に困難を要する方が少しでも安心して旅行を楽しんでもらえるように、島内のバリアフリー化を行政などに働きかけるとともにブログ等で積極的に発信することだと思っています。
バリアフリーツアーの様子①
バリアフリーツアーの様子②
小笠原には心のバリアフリーがある
小笠原は小さい村ですから、誰とでも顔見知りになれます。不便も多いですが、島民のあたたかな心と豊かな自然に癒されることでしょう。困ったら助け合う精神がある小笠原には、心のバリアフリーが当たり前にあると思います。
この素晴らしい自然を守りながら、島の魅力の発信とバリアフリー化への取組みを自分なりにすすめていきたいと思っています。
http://tommygworld.com/