「伝える→伝わり合う広報プロジェクト」#5
発信力は受信力
掲載日:2023年3月3日

 

あらまし

 

 

こんにちは。「伝える→伝わり合う広報プロジェクト」の担当者イシイです。

東社協がある飯田橋駅近辺にはたくさんの飲食店があるので、ランチは楽しみの一つです。少し前に、カレーを食べようと行きつけのココイチに行くと、閉店してしまっていました。突然の閉店への衝撃とカレーを求めて鳴いているお腹を抱えて、少し歩くとまたカレー屋さんがあるではありませんか。食べ慣れた味とはひと味違うエスニックな香りのカレーを頬張りながら、都会の盛者必衰の様子に一抹の怖さも感じた昼休みでした。

 

さて、#4で伝えた「すべてが広報になる」こと。今回はそのことに関連して、広報は聴くことが大事と学んだときのことをお伝えします。

 

発信力は受信力

 

「えっ、なんで聴かないの?」

私が担当する東社協の広報誌「福祉広報」をどんな風につくっているか、と話していた時のことです。

 

吉田知津子さん「福祉広報を出すとどういう反応があるの?」

イシイ「特に反応はないです。2年に1回くらい配っているアンケートでは感想などをもらうんですが…」

吉田さん 「えっ、聴かないの?」

イシイ「送っているところに直接聞いたりしたことはないです。」

吉田さん「東社協の人には(聴く)?」

イシイ「特には…しないです…」

吉田さん「えっ、なんで聴かないの?」

 

すごくびっくりした顔の吉田さんにこちらも驚きながら、聴かれて初めて「そういえば、なんで聴かないんだろう」と考えたものの、これといった答えも出ず。

 

吉田さん「聴かずにはいられなくない?」「広告代理店にいた時は、みんな聴くのが当たり前だったよ。社長も新人の子に『ちょっと教えて』って聞いていたような環境だったから聴くって当たり前だと思ってたけど、そこから違うんだね!面白い!!」

 

たしかに広報誌以外をつくるときにも、基本的には一人である程度の形までつくり、決裁の前に先輩や上司に確認をするという流れが私にとっては当たり前でした。一緒に担当している職員と「こういう内容がいいよね」と相談することがあっても、違う部署の人、ましてや東社協以外の人に「感想を聴く」という発想がそもそもなかったのです。

 

 

「聴く」ことも発信

吉田さんは「聴くと、自分が何をしているか相手に伝えることもできる」と言います。

例えば、私が「今度、新卒向けの就職フェアをするんだけど、『200名限定』と『福祉の仕事』どこをアピールしたら目を惹くと思う?」と聞いてみるとします。すると、相手には「イシイは新卒向けの就職フェアを準備している」ということが伝わります。さらに「どうしたら伝わるかな?」と相手にも一緒に考えてもらえたら、共に創るひとりとして関わってもらえるのです。

それだけでなく、相手も伝え手のひとりとして「そういえば新卒の子知ってるよ」とイベントを伝えてくれたり、「こういうところに大学生くるみたい。チラシを置くといいかも」と情報をくれたりすることもあるかもしれません。ひとりで完結して創るよりも、いろんな人の知恵や経験、感覚を借りながら創ることで、より伝わる広報につながることができるのです。

 

創る側の聴いてみるという働きかけそのものが発信となると同時に、聴くことにより、その広報物はより発信力をもったもの(伝わるもの)になる。発信力は受信力でもあるのだそうです。

 

 

ひとりで行くと早く行ける。みんなで行くと遠くまで行ける。

 

「これからは聴くようにしよう」

と思ったものの、これまで聴くことをしても、されてもいなかった私はつくったものを「これ、どう思いますか?」と聴くくらいしか引き出しがありません。

 

批評家をつくらない聴き方をすることが大事だと吉田さんは言います。

「どう思う?」と聴くと、「ここがいいと思う」「このキャッチコピーはこうしたら?」など必然的に「ご意見番」のような答え方になってしまいます。それよりも「どっちがいいと思う?」と選んでもらうほうが共に創りやすいといいます。たしかに、答える側も気軽に答えられて聴くハードルも下がります。

 

吉田さんは「『気が付いたらこうなってた』っていうのが広報なんだよ」と話します。

もし「こういう結論にもっていこう」と思っていると、他の人のアイデアや声が受け入れられなくなってしまい、自分の頭の中だけで創っていくことになってしまいます。意見を聞いたり、話し合ったりすることは、時に時間もエネルギーも必要で「ちょっとな~」「自分でチャチャっとやったほうが早いな」と思うこともあります。仕事が立て込んでいるときはなおさらです。

 

そんな時、「早く行きたければ一人で進め。遠くまで行きたければみんなで進め。」という言葉を耳にしました。アフリカのことわざだそうです。この言葉を聴いたとき、広報にも通じるものがあるのかなと思いました。

 

「自分もその場にいた人も思いがけない形となって表れたものに『ちむどんどん』するんだよ」と笑う吉田さんをみて、自分の心に想定外を面白がる余白を持っておくことがせわしない日々の中で誰かと共に創る幸せを感じられるコツのように感じました。

取材先
名称
「伝える→伝わり合う広報プロジェクト」#5
概要
東京都社会福祉協議会 総務部 企画担当

ご意見、ご感想お待ちしております。
https://forms.gle/wmoWe1SytvQ22pRX6
タグ
関連特設ページ