第58回関東ブロック児童養護施設研究協議会
第58回関東ブロック児童養護施設研究協議会 東京大会レポート
掲載日:2023年8月18日
2023年8月号 TOPICS

こども家庭庁行政報告の様子

 

あらまし

  • 2023年7月7日(金)、TKP市ヶ谷カンファレンスセンターにて、「第58回関東ブロック児童養護施設研究協議会 東京大会」が開催されました。今回は会場参加とオンライン参加のハイブリッド形式で行われ、合わせて約310名の児童養護施設関係者が集まりました。現在、児童養護施設では、多機能化・高機能化をふまえた施設運営や組織づくり、人材確保と育成等の重要な課題が山積しています。その中で質の高い養育を提供し続けるため、本大会では「新たな時代を迎える社会的養護~変容を求められる児童養護施設~」をテーマに、これからの社会において必要な児童養護施設の経営や運営について協議しました。

 

こども家庭庁行政報告

午前の部では開会式と総会に続き、23年4月に創設されたこども家庭庁から行政報告が行われ、こども家庭庁支援局家庭福祉課分析評価指導専門官の末武稔也氏が登壇しました。

 

行政報告ではまず末武氏より、こども家庭庁の必要性とめざすものについて「これまで縦割りであった施策をこども家庭庁で一括し、厚生労働省や文部科学省とも密接に連携しながらすすめていく」と説明がありました。また、末武氏はこども家庭庁の機能の特徴として、各省大臣に対する勧告権等を有する大臣を必置としたことを挙げ、「今後はこのような強い司令塔機能を活かしながら、国の子ども・家庭施策の推進をめざしていきたい」と述べました。

 

次に、社会的養護を必要とする児童の現状について、末武氏は「平成28年度改正児童福祉法」の概要にふれつつ、「里親養護をすすめるとともに、施設においても、より家庭に近い環境での養育の推進を図ることが必要」と強調しました。さらに、厚生労働省の「平成30年児童養護施設入所児童等調査結果」を用いて、障害等のある児童は里親家庭で24.9%、児童養護施設で36.7%と、全体的に増加している現状を伝えました。

 

続いて、「令和4年度改正児童福祉法」の概要や、改正法施行に向けたスケジュールについて話がありました。それに伴い、末武氏は全ての妊産婦・子育て世帯・子どもの包括的な相談支援等を行う「こども家庭センター」の設置を説明しました。

 

自立支援の充実については、18歳以上の退所者のアフターケアについて言及し「施設を出て1~2年で連絡が途絶えてしまうという声も聞かれる。SNSなどを活用した個人と施設がつながりやすいシステムづくりをしていけたら良い」と話しました。

 

4つのテーマを協議した分科会

午後の部は、会場を分けて4つのテーマで分科会が行われました。分科会では、発題者が自施設での取組みについて説明した後、参加者は5~6名のグループに分かれディスカッションをしました。分科会終了後は全体で共有の時間がとられ、各分科会の座長が発表を担当しました。

 

 

第1分科会は、新日本学園の鈴木寛理事長が座長を務めました。鈴木理事長は、参加者全員がテーマについて共通認識を持つことを目的に、グループディスカッションの後、シンポジウムを行ったことを説明しました。第1分科会テーマに関する取組みについては「各施設でさまざまな要素があり、発題者の2施設のようにさらに要素をのばしていきたいという声が聞かれた」と述べました。続けて「そのような状況の中でも先駆的な取組みをしている発題者2名に、取組みのコンセプトや人材育成のノウハウなどを聞くことができ、実りある分科会になったのではないか」と語りました。

 

第2分科会は権利擁護をテーマに行われ、座長は望みの門かずさの里の戸波宏幸施設長が務めました。戸波施設長は初めに、グループディスカッションは意図的に施設長と現場職員に分けてグループ編成をしたことを挙げ、それぞれの視点で使命や悩みを話し合っていたことを報告しました。また、戸波施設長は「すでに各施設で権利擁護の取組みをされてはいるが、形骸化してしまうかもしれない。日々の支援の中で子どもたちの権利を職員が意識していくこと、そして取組みが生きた実践になるよう常に見直すことが大切」と話しました。

 

第3分科会で座長を務めた聖母愛児園の髙野善晴施設長は、分科会テーマについて「成人年齢が18歳になったことで、進学や就職に向けた社会的養護の猶予期間が短くなったことを実感した。そのため、児童という括りにこだわらず、若者や青年に向けた視点の支援も必要になってくるのでは」と今後求められる支援について述べました。

 

第4分科会では、日照養徳園の大谷恭久施設長が座長を務めました。大谷施設長は「グループディスカッションでは特に人材確保安定に至るまでの工夫について活発に話し合われていた。『情報発信は都や県レベルでの取組みも必要』、『定着を大事にしていかなければ確保にもつながらない』などの意見が出ていた」と分科会の様子を伝えました。

 

閉会式では、次期開催を担当する静岡県を代表して静岡県児童養護施設協議会の石川順会長が挨拶し、今回の東京大会は終了しました。

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