NPO法人Adovo
日本で暮らす同世代として、〝ともに生き、ともに学び合う〟
掲載日:2024年3月18日
2024年3月号 TOPICS

あらまし

  • 技能実習生として日本へ来ている外国人は約36万人となり、ベトナムを中心に、アジア圏の若者がその大多数を占めています。そんな実習生の失踪や関連する事件が近年報じられ、その背景にある制度の問題点や劣悪な労働環境などが明らかになりました。日本を選んで来てくれた実習生が安心して働き続けるために何ができるのか。今回は、NPO法人Adovoの取組みから考えていきます。

 

〝自分でも何かできるんじゃないか〟、ただその思いから

高校生や大学生を中心に技能実習生の支援に取り組む「Adovo」は、コロナ禍の2020年に活動を始めています。代表の松岡柊吾さんが技能実習生の保護活動を知り、「高校生の自分でも何かできることがあるのでは」と思ったことがきっかけ。そこから試験的に日本語教室をオンラインで開き、仲間を募って活動方針を明確にしていったといいます。1人の学生から始まったAdovoは、3年の月日を経て、今では120名以上の学生が全国から参加しています。

 

自分たちの言語や文化を伝えるために、相手のことをまずは知る

オンラインや対面による日本語教室と交流会を活動のベースに、来日前の実習生に向けた講習会も行っています。交通ルールをはじめ、習慣や文化等の日本で暮らす上で大切な情報を伝えることで、実習生が地域で安心して暮らせることをめざしています。松岡さんは「勤務先と寮の往復で終わる実習生も多い。日本に来たのだから、日本語を話せるようになってほしいし、地域に触れてほしい。Adovoが地域に出るきっかけになっていたら嬉しい」と話します。

 

参加する学生は活動をする前に、外国人技能実習制度やその現状、それから実習生が来日する背景等を研修で学ぶことになっています。「価値観の違いといった、外国を相手にする難しさがある。私たちが必要だと考えていることが必ずしも彼らのニーズでないこともあるし、だからといってこちらが引きすぎてもまた違うと思う。だからこそニーズを擦り合わせていくために、相手の国の政治や文化を知る必要がある」と松岡さんは話します。こうした研修体制に加え、メンバーがベトナムへ足を運び、現地の様子を調査する取組みも実施されています。23年にもベトナム派遣があり、現地機関で技能実習生に向けて日本のことを伝えるほか、実習生を送り出す機関や行政の施設等も訪問しています。

 

 日本語教室の先生になるメンバーは最低1か月以上のトレーニングを受講。

教室が終われば一緒にご飯に行ったりして、同世代として過ごす

 

同世代の一人として、ともに生き、ともに学び合う

「教えるというスタンスではなく、自分たちも勉強させてもらっているという気持ちは持っていなければならない」と松岡さんが繰り返すように、Adovoは”ともに生き、ともに学び合う”ことを大切に活動してきました。先生と生徒ではなくて、あくまで同世代の友人のような関係性を築き、その過程で言語や文化を相手に伝えていく。そんな関係性だからこそ、実習生は言いにくいことも打ち明けることができるし、話も広がってコミュニケーションも活発になっていくといいます。自分たちに解決できないことは関係機関にお願いし、同世代だからできる取組みを大切にしています。

 

制度創設から30年が経過し、各地で技能実習生が暮らしています。日本の暮らしを楽しみながら働く実習生がいる一方で、失踪や、犯罪事件に巻き込まれる実習生が数多く存在します。そうした背景に“社会的な孤立”を松岡さんは挙げ、「彼らを排斥するのではなく、実習生を守っていく。社会から孤立しないように地域の人が支えていかなければならない」と地域全体で関わる必要性を強調します。

今後は技能実習生への妊娠トラブル防止に向けた啓発など、新たな取組みを構想しているAdovo。彼らだから生まれる気づきやアイデアを大切に、日本で暮らす同世代の一人としてAdovoは動き続けています。

 

地域のイベントに参加し、活動を伝えることにも取り組んでいる

取材先
名称
NPO法人Adovo
概要
NPO法人Adovo
https://adovo.or.jp/
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