株式会社鷗来堂
代表取締役社長 栁下 恭平さん
あらまし
- かもめブックスは、校閲を専門とする株式会社鷗来堂(以下、鷗来堂)が平成26年に開いた本屋です。令和2年10月から(有)ビッグイシュー日本の「夜のパン屋さん」プロジェクトに協力し、販売拠点として軒先を貸しています。鷗来堂の代表 栁下恭平さんにお話を伺いました。
神楽坂の本屋がなくなることにびっくりした
私はこれまで出版業界で働いており、平成18年に校閲を専門とする鷗来堂を立ち上げました。鷗来堂も、かもめブックスも、神楽坂駅を出てすぐのところにあります。
現在「かもめブックス」がある場所には、「文鳥堂」という本屋がありました。平成26年のある日、出勤する時に文鳥堂の前を通ったらシャッターがおりていました。「いつもなら開いている時間なのに」と思い、見てみると、閉店のお知らせがありました。全国で本屋が閉店しているという話は常に耳にしていましたが、出版社や本屋の多い神楽坂の文鳥堂がなくなった、ということにとても驚きました。
特に文鳥堂のあった場所は60年以上本屋があり、神楽坂のランドマークのようなところでした。そのため、今度は私がその場所で本屋を始めることにしたのです。
お土産代わりに本を買ってもらえる本屋に
出版業界だけではありませんが、少子化など業界を取り巻く環境は厳しいものがあります。その中で「普段本を読まない人に本を買ってもらうにはどうすれば良いだろう」と考えました。
そこで、大手書店や通販と違った小さな街の本屋として、「知らない本を見つけるためのツール」「気軽に出入りしてお土産代わりに本を買ってもらうこと」をコンセプトとしました。
店舗が南向きのため本が日焼けしてしまうので、通りに面したところをカフェにすることにしました。カフェを併設することで、本屋もカフェのように毎日使ってもらいやすいと思ったのも理由の一つです。店内の奥にはギャラリーを設置し、展示が変わるたびに店内の雰囲気が変わります。
かもめブックス 外観
かもめブックス 店内の様子
校閲は誤解なく伝えることが仕事
新型コロナ等で、世の中に鬱積がたまっているのを感じます。鷗来堂では、本屋も運営していますが、本業は校閲です。校閲は、誤記の修正だけでなく、差別語、不快表現を使わずに、情報を誤解なく、正確に伝えるようにすることが仕事です。校閲という技術で世界からミスリードをなくしたいと思っています。
本屋の軒先でパン屋さん
令和2年10月から、かもめブックスの軒先で週3日夜の時間帯にビッグイシュー日本が行う「夜のパン屋さん」が開店しています。
それまでビッグイシュー日本とはお付き合いはありませんでしたが、ビッグイシュー編集部が飯田橋にあるため、お互いの存在は何となく知っていました。「夜のパン屋さん」プロジェクトを中心に担っている枝元なほみさんを知人から紹介され、「軒先くらいどうぞ」ということでお貸ししています。(※今号7頁「み~つけた」参照)
満腹になるということは誰にとっても変わらない
私は、昔から本や仕事を通して、SDGsや公共のことに関心がありました。
最近、ご飯を食べていたある時、ふと「お金は概念だけど、満腹になるということは誰にとっても変わらないのではないか」と思いました。「皆がお腹一杯食べられるようになれば、本を読むようになるかもしれない」、そう思ったのです。
また、今日のように不景気になると富裕層と貧困層の格差が広がっていく、現実問題として満足に食べられない人たちが増えてくるのではないか、と懸念しています。
これらのことから、フードロスをなくすことは大事だと思ったこともあり、「夜のパン屋さん」に協力しています。これからもできることを少しずつやっていきたいです。
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