有限会社ビッグイシュー日本、NPO法人ビッグイシュー基金、夜のパン屋さん
神楽坂で毎週木・金・土の夜に 三日間だけ営業している【夜のパン屋さん】〜有限会社ビッグイシュー日本の取組み〜
掲載日:2021年1月19日
2021年1月号 み~つけた

左:NPO法人ビッグイシュー基金 
共同代表 枝元なほみさん
右:有限会社ビッグイシュー日本 
佐野未来さん

 

東京メトロ東西線の神楽坂駅を出てすぐにある書店「かもめブックス」の軒先で、木金土の週3日だけ19時半になると「夜のパン屋さん」が開店します。夕方になると、このパン屋さんを主宰している有限会社ビッグイシュー日本(以下、ビッグイシュー日本)のスタッフと販売員の方たちが販売用のテーブルを組み立て、そこにおしゃれなテーブルクロスを敷いて籠を置き、たくさんのパンを並べ始めます。やがて、店の脇には、ここのパンを楽しみにしている方たちの行列ができはじめ、開店時間を待っていました。

 

「夜のパン屋さん」開店前の準備の様子

 

雑誌販売以外の仕事をつくろう

ビッグイシュー日本は、ホームレスや生活困窮の方たちに、雑誌「ビッグイシュー」の路上販売という仕事を通して社会参加と収入を得られるようにする、自立のための支援活動を続けています。今年、ビッグイシュー日本に篤志家の方から、「持続可能な循環型事業のために」と寄附の申し出がありました。具体的にどのような事業を展開すれば良いか、料理研究家でNPO法人ビッグイシュー基金の共同代表を務めている枝元なほみさんと共に検討が始まりました。枝元さんは雑誌「ビッグイシュー」に料理記事を連載していることが縁で、自身も雑誌の路上販売をするなどビッグイシュー日本の活動に深く関わっています。

 

新たな事業の検討にあたってはいくつものキーワードが浮かび上がってきました。「つながりをつくり直すための事業」「元気をつくるための事業」「すぐにできる仕事」「食品ロスをなくす取組み」・・・、これらのことを総合して、北海道のあるパン屋さんの食品ロスをなくす取組みを参考に事業を組み立てることになりました。都内のこだわりのパン屋さんからその日の余剰分のパンを夕方までに仕入れて、日替わりでいろいろなお店のパンを楽しむことができる「夜のパン屋さん」プロジェクトが動き出しました。

 

当初はキッチンカーによる移動販売を考えていましたが、「継続的な運営のためには販売拠点が必要」、と協力者を探すアンテナを張りめぐらせていました。そのような中、枝元さんと共通の知人を通して協力依頼を受けた(株)鷗来堂の代表、栁下恭平さんが、自社が経営している神楽坂の書店「かもめブックス」の軒先を「使ってください」と申し出てくれました。これでビッグイシュー日本の事務局(新宿区)の近くに販売拠点を確保することができました。

 

【夜のパン屋さん】オープン

令和2年10月、「夜のパン屋さん」がオープンしました。

 

週3日夜2時間だけの販売にしたことで、販売員は、日中は雑誌、夜はパン屋さんの販売、と仕事を両立できるようにしました。コロナ禍のもと、衛生管理にも注意を払っています。評判は上々で、毎回あっという間に完売です。

 

枝元さんは、「食品ロス削減のために処分前のパンを売っているつもりもない。それぞれのパン屋さんが丹精込めてつくったパンを適正な価格で仕入れて、ここに来てくれているお客様に届けるのが私たちの仕事」と話します。さらに、「短時間の販売なので販売員の方たちにとって大きな収入にはならないが、仕入先のパン屋さんや関係者とのつながりも出てきている。これだけ多くの方が楽しみにして並んでくれているのを見るとやりがいを感じられる。事業検討時のキーワードを活かしたこのやり方を大切に続けていきたい」と話します。

 

都内のパン屋さんから仕入れたたくさんのパン

 

生活支援のための接点にしたい

枝元さんは、「ここを本店にして夜のパン屋さん事業を拡げていけたらいいと思っている。そして、住むところがないとか生活困窮・貧困でつらい思いをしていてどこに相談すればいいのかわからなくなっている人たちと、このパン屋さんが接点の場になれるようにしていきたい」と、今後の事業展開を見据えていました。

取材先
名称
有限会社ビッグイシュー日本、NPO法人ビッグイシュー基金、夜のパン屋さん
概要
夜のパン屋さん
開店時間:毎週木・金・土曜日
19:30~売り切れ次第終了
アクセス:東京メトロ東西線「神楽坂駅」
矢来口より徒歩0.5分
東京都新宿区矢来町123 第一矢来ビル1階
「かもめブックス」の軒先
Facebook:https://www.facebook.com/yorupan2020
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