中高生が社会に直接触れる機会をつくりたい
中学生・高校生(以下、中高生)が進路を選択する上では、さまざまな出会いや学び、つながりが大きな意味を持ちます。しかし、日常的に接する将来像は限定的で、進路選択に際して十分に準備できない現状があります。NPO法人 アスデッサン(以下、アスデッサン)は、このような状況に対し、中高生に将来の可能性を拓く多様なプログラムを提供しています。
設立期のメンバーの一人で、現在共同代表理事の岡本達哉さんは、自身の経験から中高生世代の将来の可能性を広げる機会の必要性を感じていました。岡本さんは、高校3年生の夏に、受験する学科を決めました。しかし、結果的に、すべて不合格となり、浪人はできない家庭だったため、別学科の大学へすすみました。
「大学生になり、そのことを振り返った時、自分にも課題があると思った一方で『中高生時代、多様な将来の可能性を知る機会が少なかった』と思った。インターネットを介した情報流通は盛んになっているが、社会に直接触れる機会がなければ中高生は自身の将来に興味を持たないだろうと思い、そこに課題意識を持った」と言います。
そして、同じ考えを持った社会人、大学生計10人ほどが集まり、平成23年にアスデッサンは設立されました。
多様な選択肢を提供する
アスデッサンの活動は主に3つあります。
1つ目は学校訪問型授業「ミライトーク」です。社会人数名が学校を訪問、中高生3~4名に対し社会人1名のグループをつくり対話する対話型授業や、社会人の経験を聞く講演会を行います。これは東京都の委託事業にもなっており、授業の一環として実施されています。
2つ目に学校によらず全国どこからでも参加できる機会を提供する「ミライドア」があります。オンライン上での社会人と中高生の対話や、オンライン講演会、ワークショップなどを行っています。これらに参加することにより、中高生はさまざまな社会人の仕事や経験等を聞くことができます。
3つ目に仕事や社会人自身の学生時代のストーリーを掲載するサイト「ロルモ」があります。令和3年1月からは、ポッドキャストを利用した「ロルモRADIO」も開始しました。
「ミライトーク」の様子
中高生と社会人の声
これらの活動の目的は、中高生自身に自分らしい将来を選び取ってもらうことです。「これまでの活動から、一人ひとりの選択のスタイルや価値観は全く異なることが分かっている。そのため、将来を考えるための多くの機会を提示して、生徒が自分に合った機会を選び取れる環境をつくることを大切にしている」と岡本さんは言います。
中高生からは「さまざまな大人の話が聞けて、視野が広がった」、「大人が頑張っている姿勢に刺激を受けた」といった前向きな感想が多く聞かれています。
アスデッサンの活動に参加する社会人は「パートナー」と呼ばれ、200人以上います。年齢層も20代前半から60代まで幅広く、いろいろな職種・業種の社会人が参加しています。活動に参加したきっかけはさまざまであるものの「中高生の役に立ちたい」という共通の想いを持って活動しています。
オンラインで地域を超えたつながりを
新型コロナが感染拡大する前は、対面型の活動が中心でした。感染拡大の影響により、ほとんどの事業の実施方法がオンラインにならざるを得ませんでした。一方で、全国各地の中高生、社会人が「ミライドア」などへ参加できる環境になり、海外からの参加もありました。
今後の活動の展望について「中高生が参加しやすいように、今後も無料で開催を続けたい。また、単発ではなく、継続して中高生の進路選択を支援していけるプログラムづくりに取り組んでいきたい」と岡本さんは語ります。
「ミライドア」の様子
https://www.asdessin.org/