一般社団法人東京TSネットのメンバーと、2022年1月のTSpaceに参加したスタッフの皆さん
TSpace(ティースペース)は、「罪」に問われた障害のある人と運営メンバーなど誰もが「支援する・される」という関係性を超えて、気軽に立ち寄ることのできる居場所です。2019年より活動を始め、2か月に1回程度、バーベキューや、鍋を囲みながら、集まった人同士で交流をするイベントを行っています。コロナ禍においては、ボードゲームなどを中心に開催しています。参加者は10人ほどで、多い時には20人以上が集まることもあります。
主催する一般社団法人東京TSネットは、2013年に発足した、主に触法障害者への支援を行う団体です。「罪」の背景をひもとき、障害のある人と地域をつなげ、誰もが共に生きることのできる社会の実現をめざし、活動しています。弁護士や社会福祉士が中心となり、司法と福祉の双方から、生きづらさを抱える触法障害者たちの地域での暮らしに寄り添い、支援しています。主な活動として、福祉的支援が必要だと思われる被疑者・被告人を支援する「更生支援コーディネーター」養成や、セミナーや研修の実施、コミュニティづくりなどを行っています。
TSpaceを始めたきっかけ
障害の特性から犯罪に巻き込まれやすい方や、社会での生きづらさから「罪」を犯してしまった方は、いずれ再びその生きづらい社会に戻ることとなります。メンバーの多くが、弁護士としての役割が終わると関わりが途絶えてしまうことが多く、どうにかつながることはできないかという課題意識を持っていました。
TSpaceメンバーの一人で弁護士の長谷川翼さんは「担当していた方に、土日は何をして過ごしているのか尋ねると、何も答えが返ってこなかったことがあった。そのような方が過ごせる場所があったら良いと感じた」と、自身の経験を話します。そこで、地域での再出発後も、社会の中でゆるやかにつながることができる場として、TSpaceを始めました。長谷川さんは「フラットに話しができる場所は、ありそうでなかった。TSpaceに来て、時間を共有することで、人との関係が広がるきっかけになったら嬉しい」と言います。
その人がその人らしくいられる場所
TSpaceでは、お互いを「さん」付けで呼び合います。弁護士や社会福祉士などの支援していた側と、支援されていた側の枠組みを外して、誰もが対等な関係で過ごすことを大切にしています。「同じ時間や空間を過ごす人がいることで、社会とのつながりを感じてもらうことに意味があるのでは」と、同メンバーで弁護士の山田恵太さんは話します。
長谷川さんは「もともと『弁護士と依頼者』という関係でしかなかったのが、TSpaceがあることで、その後もその方の生活を知ることができる。そして、この場所で楽しそうに話している姿を見て、人間関係が広がっていっているように感じられる」と、TSpaceの活動意義について話します。続けて「『人間関係を広げていく=社会に出て、地域で暮らしていく』ということではないか。それを体験できるのもTSpaceの魅力の一つだと思う」と言います。
試行錯誤しながら、誰もが気軽に参加できる場になるように
TSpace開催後には、運営メンバーで反省会をし、来てくれる方々にどうしたら楽しんでもらえるかを考えています。ボードゲームをするだけでなく、ほっと一息つけるようなレスパイト席を設けたり、話したい人が話せるような雰囲気をつくったりするなど、居心地の良い空間づくりを心がけています。
今後の活動について、長谷川さんは「TSpaceに来て時間を共有して家に帰るというように、ゆるくつながることができる場所としてあり続けたい」、山田さんは「規模を大きくすることを第一の目的にはしていないが、この活動に興味を持ってくれたさまざまな人が気軽に参加できるようになったら良い」と言います。
さらに、同メンバーで弁護士の中田雅久さんは「来たいと思った時に来てくれたら嬉しい」、社会福祉士の大嶋美千代さんも「学生に参加してもらえるのも嬉しい。ここでは枠を外してみんな対等に接することができる」と話します。
これからも、感染症対策に努めながら、定期的な開催を続けていく予定です。
https://tokyo-ts.net/
TSpaceは、奇数月の最終土曜日に開催している居場所。